【227.接触】
続きを読んでいただき、ありがとうございます。励みになります。
移動前に、宇宙船に対して、念を送った。
できるだけ丁寧でわかりやすく、説明した。
この惑星が、監獄であり、居住するのは終身刑を受けた者とその子孫だけであること。
そのため、惑星は封鎖処置がとられたこと。
封鎖は、機械が判断していて、出ていこうとする者を容赦なく撃ち落すこと。
宇宙船を攻撃する意図ではなかったこと。
このことは、電波で警告メッセージが送られていたが、うまくいっていなかったこと。
それから輸送船から射出されたふたつの脱出カプセルは、こちらで回収し、乗組員については安全を確保するとともに、今後の状況報告を宇宙船に向けて発信すること。
こちらの使節団が星系内に到着し、こちらに向かっていることも伝えた。
最後に、伝わったことを知りたいので、と合図をお願いした。
「宇宙船に変化」とゾフィー。
スクリーン上の宇宙船の腹部の船首――鈎爪の方がそうだとして――から船尾にかけて、光が流れた。
それは、深海に住む生物が発するのと同じ光だ。
その光が、3度、流れた。
こちらがお願いした合図だ。
宇宙船に念を送る。
ありがとう、と。
「少なくとも理解を示してくれたな」
城の自室に戻り、陛下からの呼び出しを待つ。
緊急時と判断したのだろう、人を寄こさずに、フェイスで連絡してきた。
相手は、議長だった。
「すぐ行きます」
会議室は、緊張した空気が充満している。
そこで簡単に説明を受け、現場への出向を依頼された。
もちろん、受諾し、準備をして、すぐさま大広間に続くバルコニーへと向かう。
そこには、すでにジェット機が待機していた。
パイロットは、乗ったままだ。
ヘルメットにプリントされたマークを見て、ケビンとわかる。
プリントされているのは、〈スベルト王国〉の猛獣“ビッグキャット”。
ケビンが腕を振って、急げ、と言ってきた。
オレは、迷わずに乗り込んで、シートベルトを装着し、ケビンに向かって、親指を立ててみせた。
ケビンは、すぐにキャノピーを閉じ、エンジンを点火。
機体が上昇をはじめた。
水平飛行に移ると、ケビンが話しはじめた。
「宇宙船が来てるんだって?」
「そうらしい」
「落下物があるんだとか聞いたが」
「輸送船が撃墜されたんだ、封鎖ブイに」
ジェット機がふらついた。
ケビンが動揺したためだ。
すぐに立て直す。
「本当なのか? それ」
「本当だ。その輸送船から脱出カプセルが射出されたんだ。それが落下物の正体だ」
「ふぇぇ、マジか。ってことは、ここが封鎖されているのを知らずに?」
「警告はされていたんだよ。だが、相手が受信してなかったんだ」
「まさか。宇宙船だぞ? 外部との通信をしてないなんてあるか」
「それがな、通信手段が違っているらしいんだ。電波を使ってない」
「はぁ? それこそ、おかしいじゃないか」
「だが、事実なんだよ。ステーションからの誰何も警告も、宇宙船には聞こえてなかったんだ」
ケビンは黙った。
操縦に専念する、という感じではない。
それでも戸惑いながら口を開いた。
「訊いてもいいか?」
「なんだ?」
「その宇宙船、もしかして――」
「連合に属していない種族だよ、おそらくね」
「あぁ、やっぱり。エイリアンか。侵略しに来たんだよな」
オレはバカらしさに首を振った。
「ケビン、何を馬鹿なことを言ってるんだ? そんな侵略者が最初から輸送船一隻だけを降ろすと思うか? 惑星上陸作戦だぞ? 侵略するのに無数の戦闘艇を出すはずじゃないか」
ケビンがこちらを向いた。
それから前を向く。
「それもそうだ」
「それに私からのテレパシーに、船のライトを点滅させてきたんだぞ」
「テレパシー? ああ、忘れてた。パオロには、そういう力があったんだっけ。じゃぁ、少なくてもこちらに攻撃意図があったわけではない、って知っているんだな?」
「ああ、そう説明した。わかってくれたと思う。攻撃態勢はとってないみたいだからな」
「それを聞いて、安心した」
“少しは”という程度の安心だろう。
軍隊と一緒に現場に向かった。
上から指示されたポイントには、すでに白い煙を上げて、脱出カプセルが着地している。
オレは、指揮官に半径500mの封鎖を命じた。
指揮官の指示で、すぐさま行動に移る兵士たち。
それから防護服姿の兵士が、ガイガーカウンターをカプセルに向けて、徒歩で近づいていく。
その兵士のおかげで、カプセルの大きさがわかった。
とても大きい。
兵士の身長を基準にすると、高さは倍、長さは4倍という感じだ。
ハッチの大きさから考えると、ソラ人よりも大きいが、2mを多少越すくらいだと思われる。
兵士は、カプセルの10mほど手前で、身体の向きを変え、こちらへと走って帰ってきた。
オレの目の前で、フードを外し、その顔を見せ、報告する。
「放射能は、出ていません。ただし、熱を持っているため、あれ以上は近づけませんでした」
「わかった。ありがとう」
その兵士は、自分の所属する部隊へと戻っていく。
指揮官に、もう一ヵ所のポイントの無線での確認結果を聞く。
そちらも、こちら同様の結果だという。
(パオロ)とアルの念。(上空に到着しました)
(了解。準備をはじめてくれ)
(はい)
しばらく待っていると、目の前の空気が揺らいだ。
(あなたの前に立ちました)とアル。
彼は光学迷彩のマントで、オレの前に立っているのだ。
(OK。装置の方は?)
(準備できてます)
(では、はじめよう)
一拍おいて、オレは念を発した。
(聞こえますか?)
それに対して、動揺する念が、複数返ってきた。
アルが、思念波の送受信可能な装置を作ってくれたのだ。
(私は、この惑星の住人で、パオロと言います)
動揺している中、ひとりが一所懸命に気持ちを落ち着かせた感じで(私は)と中性的な念が送られてきた。(シェロアと言います。あなたは警告してくれた人ですね?)
(そうです、シェロア。警告が間に合わず、申し訳ありませんでした。あなたがたに起こったことは、すでに母船に連絡しました。あなたがたの無事も報告する予定です。おケガなどはされていませんか?)
(軽症ですんでいます。パイロットたちもいたのですが、無事でしょうか?)
あの3体のことは、言わずにおこう、今はまだ。
(まだ確認はしていませんが、すでに着陸しているとの報告を受けていますので、あなたがたと同様かと思われます)
ホッとしている。
(そのカプセル内では、どのくらいの期間を過ごせますか?)
(この惑星の自転周期で)おお、ちゃんとこちらのことを考えてくれている。(10回くらいまでなら大丈夫かと)
10日か。
(なるほど。この惑星の空気は、呼吸可能ですか?)
(このカプセルのセンサーは、呼吸可能だと示しています。病原菌が心配ですが)
(そうですね。まぁ、外部に出る前に救助が来るでしょう)
(ですが、また攻撃されるのでは?)
(今、こちらの使節団の船が向かってきています。封鎖解除の手続きをしてくれるはずです。そうなれば、救助の船も安心して、惑星を離れられるでしょう)
(よかった)
(それまでは、窮屈かもしれませんが、待っていてください。逐一、報告をしますので)
(ありがとうございます)
(では)
念をアルに向ける。
(アル、こっちはOKだ)
(では、もうひとつの方ですね。先に移動します)
(うん)
このやり取りの最中にも、指揮官はテントの設営を指示していた。
テントのひとつが会議室に割り当てられたため、そこをしばらく借りることにした。
そこから跳んだのは、もちろん調査船の中だ。
そこで、ふたりに念話の内容を話しておく。
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