【223.宇宙船・2】
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(パオロ、変化がありました)
(すぐ行く)
仕事中だったので、王室図書館のトイレの個室に入り、調査船に跳んだ。
壁に投影されたゾフィーが出迎えてくれる。
「アルは?」
「コントロールルームです。さまざまな情報が入り乱れているので、それをまとめているんです」
コントロールルームに行く。
アルは、コンソールに座って眠っていた。
実際には、その脳内で忙しくしているのだろう。
正面スクリーンには、問題の宇宙船と各種情報が映し出されている。
宇宙船の大きさも示されていた。
巨大だ。
通常の大型客船が3隻、つながったとしても、それよりもまだ長い。
ソラ人が乗り込んだとしても――ほかの連合人でもいいが――3万人は入るだろう。
ステーションよりも大きいはずだ。
宇宙船のコースは、明らかに〈スータン〉を目指している。
「彼らからの返信はまだありません」というアルの声で、我に返った。彼は、こちらを見ている。「ステーションからの誰何にもまだ。警告も送られているんですが」
「そうか。目的地は〈スータン〉とみて、間違いなさそうだね」
「はい。目的はわかりませんが」
「うん。宇宙船の外見から何かわかったかね?」
「大気圏を通してしかわからないので、詳細はなんとも。今のところ、武器の類いは見つかっていません。前方の鈎爪が武器かもしれませんが」
「武器だとしたら恐ろしくローテクな代物だね。あれで敵艦を捕まえるとしか思えんが」
「かも知れません。放出されているエネルギーや物質はいくつかありますが、戦艦にしては多過ぎます。あれでは、敵に見つけてくれ、と言っているようなものです」
「では、戦闘艦ではなく、調査船の可能性もあるわけだ」
「可能性は。そうすると今度は、調査するためのセンサー類が少ないように思います」
「あの黒い部分は? クモの目を思わせるんだが」
「ええ。おそらく、あの部分がセンサーなんでしょう。船尾にもいくつか発見しています」
それが示された。
「船尾、というが、どっちが船尾かね? 鈎爪を前にして進んできたからといって、あれが前とも限るまい」
「なるほど、そうですね。あの鈎爪付近からのエネルギー放射は微量ながらありますが、アイドリング状態のエンジンだと考えれば、そうとも考えられますね」
「それでステーションの方の騒ぎは?」
「ロボットのいる区画では、ソラ人は戦々恐々としています。攻撃されたらひとたまりもないだろう、と」
「だろうね。詳細は、わからないんだろう?」
「ええ。ステーションのコントロールルームあたりには、ロボットはいませんから」
「ほかの部署にはいないのかね?」
「ロボットですか? ええ。ソラ人的言い方をすれば、下っ端仕事に従事する者ばかりです。残念ながらロボットの地位は低いと言わざるを得ません。管理業務なんかはロボットの方が得意なんですがね」
「そういう知識が少ないんだろう。あるいは、ロボットを嫌悪しているとか」
アルは、大きくため息をついた。
思い当たることでもあるのだろうか?
それはともかく、宇宙船の問題に話を戻そう。
「彼らは、こちらの人工物を認識しているはずだよね?」
「当然、そう思ってもいいはずです。ステーションも封鎖ブイも、低レベルでも光学センサーがあれば検知できるものですし、その軌道も天然の衛星のそれとは違いますからね」
「なのに、誰何になんの反応も見せていないということは、電波の内容が解析できないか、電波自体を受信できないか、としか考えられないね」
「そんなことがあるでしょうか? 解析できないようなレベルの知性体が宇宙船を造り上げた? 考えられません。電波を受信できない、というのも考えられません。一般的な通信手段だというのに」
「それは、こちらが勝手に思っていることであって、彼らには当てはまらないんじゃないかね? 電波はわかっても、それが通信に使われているとは思っていないとか」
「まさか……では、ほかの通信方法を使っていると? ですが、光学的反応も見られませんし、そのほかのエネルギー放射も見受けられません」
「こちらが考えていない方法なんだろうな。向こうもこちらが返信してこないのが、不思議なんじゃないかね」
「だとしたら、こちらのステーションなどをどう見ているんでしょうか?」
「それなりのエネルギー放射があることから見て、無人ではあっても、生きている、と考えてはいるだろうね」
「機械がプログラムどおりに動いている、と?」
「うん」
「それならば、彼らはなんらかの調査をするのでは?」
「現在は、それを検討している最中、ということかもしれんね」
「なるほど。まぁ、まだ〈スータン〉の周回軌道にも到達していませんからね。行なうとしても到達してから、でしょうか」
「おそらくね。あとどのくらいで、周回軌道に?」
「現在のままなら、2時間ほどかと」
「ならいったん、戻るよ」
「わかりました」
王室図書館のトイレの個室に跳び、仕事場へと戻る。
「長かったですね」と司書のひとり。「体調でも?」
「少しね。もしかすると早退するかもしれない」
「結構ですよ。こちらのことは、お気になさらずに。先生のおかげで、修正も順調ですから」
「ありがとう」
1時間ほどして、オレは早退した。
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