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落とされ人  作者: カーブミラー


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220/234

【220.水脈】

続きを読んでいただき、ありがとうございます。励みになります。

 アルから、ダウジング・ロッドを受け取った。

 木の枝などではなく、途中でほぼ直角に曲がった金属の棒2本で作られている。

 2本の棒は、固定具により、真ん中でつながれていて、離れたりしないようになっている。

「上の世界で、市販されているものを作ってみました」

「市販されてる?」

「ええ。こういうものを中心に扱っているお店で、ですがね」

「ああ、なるほど。魔法関係のお店、ってところか」

「というより、眉唾物(まゆつばもの)のお店、と言ったところですね」と笑みを浮かべる。

「あはは。だが、木の枝なんかよりも、よさげだ。キャンパスで木の枝を持って、歩いていて、学生たちにジロジロ見られていたのは、ちょっと恥ずかしかったんだ」

 そのダウジング・ロッドを持つ。

 調査船の中だから、何かに反応するわけではないが。

 金属の棒の太さは、5mmもない。

 だから、つかんでも、反応の邪魔になりそうにはない。

 固定具のところで、手が留まるので、握る力も必要ない。

「よさそうだ」

「実験してみますか?」

「適当な場所があるかね?」

「ええ」


 到着したのは、昼間の陽射しがまぶしい砂漠だった。

 どちらを向いても、砂の山か、谷しか見えない。

「おいおい、こんなところで――」

「ちゃんと水脈がありますよ、パオロ」

「本当に?」

「ええ」

 彼の笑みを見ても、こんな砂漠のどまんなかに、水脈があるなんて、信じられなかった。

 外に降りる前に、彼がオレを止めた。

「あれを」と手で指し示したところの床がせりあがってきた。

 床板は、2mほどの高さまで持ち上がって、止まった。

 その床板の下には、メタリックブルーの宇宙服があった。

 少なくても、そうとれるスーツだ。

 金色の薄膜で覆われたバイザーのフルフェイスタイプヘルメットもある。

「あなたが、宇宙に出ていかれることはないかと思いますが、念のために用意しておきました。あらゆる環境下での作業が可能なように作ってあります」

「酸素は?」

「このスーツだけなら一日。生命維持装置をつければ、1週間はもちます」

「それだけの時間の飲食は?」

「水に関しては多少は入っていますし、汗や尿からも抽出できます。食物に関しては凝縮食料が入れてあるので、ちゃんと活動できますよ」

 とにかく、その宇宙服を着込んだ。

 スーツ自体は、活動の妨げになりそうな引っ掛かりなどはなく、ふつうの服を着ているのと変わりがない。

 グローブの指が太くて、細かい作業はできそうもないが。

 念のため、ダウジング・ロッドを持ってみた。

 すでにアルによって、固定具が調整されていて、グローブに覆われた手でも持つことができた。

「問題は、こんな状態で、ダウジング・ロッドが反応するかどうか、だな」

「ええ。ですが、得られた情報からすると、素手で持つ必要はあまりないようです」

「ふむ。まぁ、やってみれば、わかるか」

 ヘルメットをかぶる。

 首まわりに圧迫感。

 だが、すぐに弛緩した。

「今の圧迫は、なんだね?」と声がくぐもって聞こえる。

「スーツとヘルメットが接続したんですよ」

 アルの声は、耳ではなく、頭蓋骨を通しているように聞こえている。

 骨伝導スピーカーらしい。

 ヘルメットのフェイスプレートには、各種の情報が表示されている。

 視線を追跡しているらしく、フェイスプレートのまわりのアイコンが反応した。

 ひとつを選んで、まばたきを一度。

 すぐに適した情報が映し出される。

 インターフェースは、標準的なようだ。

 念のためにメニューを確かめておく。


 調査船から砂漠へと降りる。

 熱波は感じないが、フェイスプレートの温度計は、かなりの数値を示している。

 厚手のブーツが、砂を踏む。

 すぐに足がめり込んでいく。

 ダウジング・ロッドを持って、歩み出した。

 フェイスプレートに歩いてきた軌跡が映し出されている。

 アルのことだ、すぐに水脈が見つかるようなところには、降ろすまい。

 ダウジング・ロッドが反応するまでは、当てずっぽうだ。

 しばらく歩いていくと、ダウジング・ロッドが反応した。

 平行にまっすぐ前を向いていた金属棒が、逆ハの字に開きだしたのだ。

 地図にマークして、少し歩くと、平行になった。マーク。

 さっきの位置に戻ると、また逆ハの字に開く。

 そこで右を向き、歩く。

 さきほどよりも歩いたが、平行に戻った。マーク。

 そこで右を向き、また歩く。

 少し歩いただけで反応。マーク。

 そこから最初マークした地点へと歩く。

 すぐに開き、そこからは開いたままだ。

 最初のマークを通り過ぎたが、ダウジング・ロッドは開いたまま。

 そのまま進む。

 閉じたところで、右へと歩く。

 しばらく、歩いたが、反応がない。

 そこで最後に閉じたマークへと戻ると、すぐに開き、そのまま歩き進めた。


 そうして、単純な作業を続けていると、アルの声が聞こえてきた。

「そろそろいいんじゃないですか?」

「ん?」とフェイスプレートの経過時間をチェックした。

 すでに2時間が経過していた。

「おやおや、時間が経つのは早いね。これから戻るよ」

 調査船に戻り、ヘルメットを脱ぐ。

 正面スクリーンには、軌跡で作られた地図が表示されていた。

「これにこちらで得られた水脈の地図を重ねます」

 スーツを脱ぎながら、スクリーンを見ていた。

「おお」

 オレの軌跡が、見事に水脈と重なっていた。

「こんなにうまくいくとは」

「私も思っていませんでした」

「このまま続けていけば、それなりの水脈地図が出来上がりそうだね」

「ええ」

「だが、ここで地図を作ったところで、利用されそうもないがね」

「でも使えることは実証できましたね」

「確かに」

 ふたりして、正面スクリーンに見いった。


読んでいただき、ありがとうございます。面白ければ、ブックマーク、評価、リアクションをお願いします。励みになりますので(汗)

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