【220.水脈】
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アルから、ダウジング・ロッドを受け取った。
木の枝などではなく、途中でほぼ直角に曲がった金属の棒2本で作られている。
2本の棒は、固定具により、真ん中でつながれていて、離れたりしないようになっている。
「上の世界で、市販されているものを作ってみました」
「市販されてる?」
「ええ。こういうものを中心に扱っているお店で、ですがね」
「ああ、なるほど。魔法関係のお店、ってところか」
「というより、眉唾物のお店、と言ったところですね」と笑みを浮かべる。
「あはは。だが、木の枝なんかよりも、よさげだ。キャンパスで木の枝を持って、歩いていて、学生たちにジロジロ見られていたのは、ちょっと恥ずかしかったんだ」
そのダウジング・ロッドを持つ。
調査船の中だから、何かに反応するわけではないが。
金属の棒の太さは、5mmもない。
だから、つかんでも、反応の邪魔になりそうにはない。
固定具のところで、手が留まるので、握る力も必要ない。
「よさそうだ」
「実験してみますか?」
「適当な場所があるかね?」
「ええ」
到着したのは、昼間の陽射しがまぶしい砂漠だった。
どちらを向いても、砂の山か、谷しか見えない。
「おいおい、こんなところで――」
「ちゃんと水脈がありますよ、パオロ」
「本当に?」
「ええ」
彼の笑みを見ても、こんな砂漠のどまんなかに、水脈があるなんて、信じられなかった。
外に降りる前に、彼がオレを止めた。
「あれを」と手で指し示したところの床がせりあがってきた。
床板は、2mほどの高さまで持ち上がって、止まった。
その床板の下には、メタリックブルーの宇宙服があった。
少なくても、そうとれるスーツだ。
金色の薄膜で覆われたバイザーのフルフェイスタイプヘルメットもある。
「あなたが、宇宙に出ていかれることはないかと思いますが、念のために用意しておきました。あらゆる環境下での作業が可能なように作ってあります」
「酸素は?」
「このスーツだけなら一日。生命維持装置をつければ、1週間はもちます」
「それだけの時間の飲食は?」
「水に関しては多少は入っていますし、汗や尿からも抽出できます。食物に関しては凝縮食料が入れてあるので、ちゃんと活動できますよ」
とにかく、その宇宙服を着込んだ。
スーツ自体は、活動の妨げになりそうな引っ掛かりなどはなく、ふつうの服を着ているのと変わりがない。
グローブの指が太くて、細かい作業はできそうもないが。
念のため、ダウジング・ロッドを持ってみた。
すでにアルによって、固定具が調整されていて、グローブに覆われた手でも持つことができた。
「問題は、こんな状態で、ダウジング・ロッドが反応するかどうか、だな」
「ええ。ですが、得られた情報からすると、素手で持つ必要はあまりないようです」
「ふむ。まぁ、やってみれば、わかるか」
ヘルメットをかぶる。
首まわりに圧迫感。
だが、すぐに弛緩した。
「今の圧迫は、なんだね?」と声がくぐもって聞こえる。
「スーツとヘルメットが接続したんですよ」
アルの声は、耳ではなく、頭蓋骨を通しているように聞こえている。
骨伝導スピーカーらしい。
ヘルメットのフェイスプレートには、各種の情報が表示されている。
視線を追跡しているらしく、フェイスプレートのまわりのアイコンが反応した。
ひとつを選んで、まばたきを一度。
すぐに適した情報が映し出される。
インターフェースは、標準的なようだ。
念のためにメニューを確かめておく。
調査船から砂漠へと降りる。
熱波は感じないが、フェイスプレートの温度計は、かなりの数値を示している。
厚手のブーツが、砂を踏む。
すぐに足がめり込んでいく。
ダウジング・ロッドを持って、歩み出した。
フェイスプレートに歩いてきた軌跡が映し出されている。
アルのことだ、すぐに水脈が見つかるようなところには、降ろすまい。
ダウジング・ロッドが反応するまでは、当てずっぽうだ。
しばらく歩いていくと、ダウジング・ロッドが反応した。
平行にまっすぐ前を向いていた金属棒が、逆ハの字に開きだしたのだ。
地図にマークして、少し歩くと、平行になった。マーク。
さっきの位置に戻ると、また逆ハの字に開く。
そこで右を向き、歩く。
さきほどよりも歩いたが、平行に戻った。マーク。
そこで右を向き、また歩く。
少し歩いただけで反応。マーク。
そこから最初マークした地点へと歩く。
すぐに開き、そこからは開いたままだ。
最初のマークを通り過ぎたが、ダウジング・ロッドは開いたまま。
そのまま進む。
閉じたところで、右へと歩く。
しばらく、歩いたが、反応がない。
そこで最後に閉じたマークへと戻ると、すぐに開き、そのまま歩き進めた。
そうして、単純な作業を続けていると、アルの声が聞こえてきた。
「そろそろいいんじゃないですか?」
「ん?」とフェイスプレートの経過時間をチェックした。
すでに2時間が経過していた。
「おやおや、時間が経つのは早いね。これから戻るよ」
調査船に戻り、ヘルメットを脱ぐ。
正面スクリーンには、軌跡で作られた地図が表示されていた。
「これにこちらで得られた水脈の地図を重ねます」
スーツを脱ぎながら、スクリーンを見ていた。
「おお」
オレの軌跡が、見事に水脈と重なっていた。
「こんなにうまくいくとは」
「私も思っていませんでした」
「このまま続けていけば、それなりの水脈地図が出来上がりそうだね」
「ええ」
「だが、ここで地図を作ったところで、利用されそうもないがね」
「でも使えることは実証できましたね」
「確かに」
ふたりして、正面スクリーンに見いった。
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