【219.魔法の道具】
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王室図書館で、〈ラクロア〉の文献を調べていると、変わった記述が見つかった。
そこには井戸を掘るための方法が書かれているのだが、その地下水を見つけるのに、不思議な道具を使っていたのだ。
その説明書きをどう想像してみても、どこにも科学的な仕掛けがない。
どうして見つけられるのかの説明もない。
それでいて、ほぼ確実に見つけることができる、と書かれている。
まるで魔法か超能力だ。
自分の書庫の中には、どの文献にも載っていない。
もちろん、〈マニ教〉の文献にも、だ。
その道具の名前は、“ダウジング・ロッド”。
道具といってもたいしたことはない。
二股に分かれた木の枝、ただそれだけなのである。
その枝のそれぞれを、左右の手で軽く持つ。
見つけたい水源の上に近づくと、その枝が微妙に動くのだそうだ。
そこを掘ると、水源が見つかる、というわけである。
眉唾物でしかありえない。
だが、その文献は、どこにもふざけた記述はなく、真面目なものだ。
しかも水源を見つけ出すためのほかの方法が書かれていない。
ううむ、信じられん。が、それを言ったら超能力やモーガン・ピラミッドだって、どうしてそうなるのか説明できないが、使えている以上は信じるしかない。
休憩時間に、大学キャンパスで、適当な二股になっている枝を見つけて、拾い上げる。
文献に書かれたとおりに持ち、反応を見る。
もちろん、すぐに反応があるとは思ってはいない。
広場を歩いてみる。
まわりに井戸はないし、川もない。
水道もない。
つまり、これといって、わかる水源はない。
しばらく行くと、枝が反応した。
前方にちょっとだけ持ち上がったのだ。
その場を外れると、枝が下がる。
戻ると、持ち上がる。
オレ自身は、ここのことを知らないから、この反応はなんとも言えない。
(アル)と念を送る。
(はい、パオロ)
(忙しいかね?)
(いいえ。暇です)と笑いの念。
(ちょっと手伝って欲しいんだがね。ここまで来れるかね? ドローンだけでも探査できると思うが)
(探査? 確か、王室図書館においでと――)
(今、休憩中でね。そばの王室大学の広場にいるんだ。そこで水源調査を頼みたい)
(水源、ですか。その程度でしたら、すでに探査済みのデータが使えますが)
(ああ、それならそれでかまわない。私の位置がわかるかね?)
(ちょっと待ってください……追跡装置を見つけました。それで?)
(この位置に水源はあるかね?)
(ええ、あります)
驚いた。
おやおや、本当に見つかったのか。
オレは、話半分でいたのだ。
(これから移動するから、合図をしたら、水源の上にいるのかを教えてくれ)
(逆に水源を教えた方が……)
(そうなんだがね。ちょっとした実験をしているんだよ)
彼の考え込むような念が届く。
(わかりました。やってみてください)
それで適当に歩きまわり、ダウジング・ロッドが反応を示した位置で、アルに合図をして、チェックしてもらう。
10ヵ所ほどを示した。
なんと、すべてが水源の上だった。
(これほどとは)
(どんな実験をしているんです? パオロの移動を見ていると、これといって法則はありませんが)
(そのとおり。ランダムに動いていたんだ)
(ですが、すべてのポイントで、水源を当てています。どんな実験を?)
(“ダウジング・ロッド”というものを知っているかね?)
しばらく、間が空いた。
それから彼が答えた。
(魔法の道具、ですね)
オレは笑った。
(そのようだ。どういう仕組みか、わかるかね?)
(残念ながら。SXEでも解明できていないんですよ。ただ、ソラ人が文明を持つ以前から使われていた、という道具だそうです)
(そんな昔から)
(はい。しかも探せるのは、水源だけではなく、あらゆるものに対応できるのだとか)
(あらゆるものに?)
(ええ。人や動物、金属。なくし物なんかも含まれます)
(なんと。まさしく魔法の道具だね)
(ええ。その道具の形は、いくつかあります。針金を使ったり、木の枝を使ったり)
(私が使っているのは、木の枝だよ。そうか、針金でも反応するのか)
(そう言われています。なんでも90%以上の確率で発揮するようです)
(そんなにかね。なるほど、そりゃ、真面目に取り上げるしかないな)
(ですが、詳細なデータは取れませんから、水脈の地図を作るだけでもひと苦労かと)
(まぁな。だが、使い方次第では、本当に魔法の道具となるだろう)
(その点については、異論がありませんね)とほくそえむアル。
それでも、しばらくは、その使い方を思いつきもしなかったのだが。
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