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落とされ人  作者: カーブミラー


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215/217

【215.結婚式】

続きを読んでいただき、ありがとうございます。励みになります。

 軍艦スピードウェイから、〈ラクロア王国〉に到着した、と通信が入った。

 気温が低いらしく、通信の声が震えていた。

 〈スベルト〉からの荷を降ろし、〈ラクロア〉からの荷を積む。

 そのあいだ、乗組員は、交代で陸地を楽しむ。

 だが、冷夏であまり楽しめないようだ。


 ***


 マリーンからメールが来た。

 最近は、週に一度は送ってくれる。

 それまでは、慣れない図書館の日常業務に忙殺されて、寮に帰ってくると、疲れて眠ってしまっていたそうだ。

 それもようやく慣れてきました、と書いてきていた。

 友だちもできた、とも。


 ***


 〈シンティア〉で問題を起こしていた盗賊たちのようすをチェックしてみた。

 彼らは、その数を減らしてはいたが、冬を乗り越えていた。

 そして、銃を使わず、弓矢や槍に持ち替えて、狩りをしていた。

 火薬はまだ残ってはいるが、使うのを躊躇(ちゅうちょ)しているらしい。

 弾丸の製造もやめてしまっている。

 だが、その製造技術は生きていた。

 鉱物から金属を取り出し、それで必要な道具を作り出していたのだ。

 いいことだ。


 ***


 以前、落とされた男性を殺していた島の女性たちは、陛下の計らいで、王室所有の土地へと引越した。

 その町は、〈ジルズ・タウン〉と名付けられ、彼女たち自身の手によって運営されていた。

 〈スベルト〉各地から虐げられていた女性が集まるにつれて、町も拡張されている。

 いつのまにか商店街もできていた。

 町の外が怖い、という声もあるのだそうだ。

 そういう人には、ネットショップもあるのだが。

 やはり自分の目で見て、手で触れて、商品を確かめたいのだろう。

 残念なことに、一部の女性たちは、この町を去っていた。

 どうやら男に依存しなければ、どうにもならないらしい。

 外の街で、それなりの男を見つけ、出ていったのだ。

 それもまた、その人の人生、というわけか。


 ***


 グランが結婚した。

 彼は、〈ペダフ〉で生まれ育ち、なんらかの罪を犯して、ここに落とされた。

 知り合ったのは、彼がソラ語を知らず、オレがペダフ語で話すのを名乗り出たときだった。

 その後、彼は持ち前の前向きさで、仕事をこなし、ソラ語を覚え、〈スベルト〉に馴染んだ。

 その彼が、結婚した。

 オレとテオは、その結婚式に呼ばれて参加した。

 天気はいいが、連日の猛暑の中では、涼しい方だ。

「あの“カレー”を作ってくれた女性です」とグランが、花嫁を紹介してくれた。

 褐色の肌に、長い黒髪、大きな黒い瞳が、こちらの目を引く。

 美人ではないが、小柄で、ふくよかで、可愛らしい。

 笑顔も素適だ。

「グラン、おめでとう。きれいな花嫁さんだ」

 花婿も花嫁も、満面の笑みで、おたがいを見つめる。

 結婚式は、小さな教会で行なわれた。

 客は、花婿と花嫁が働いている職場の知り合いが、ほとんどらしい。

 中に入り切らないくらいだ。

 着ている服もバラバラだが、みな、ふたりの門出を祝っている。

 披露宴は、近くの公園を借りて、テントが張られ、盛大に行なわれた。

 声が上がった。

 そちらに振り向くと、新たな一歩を踏み出した夫婦が現れた。

 ふたりとも私服に着替え、みんなの輪の中に入ってくる。

 みな、ふたりに声をかけ、肩を叩く。

 ふたりは、通りがかった人にも祝ってもらい、そのお礼に蒸しまんじゅうが配られた。

 その蒸しまんじゅうをひとついただく。

 ふっくらした皮の中身には、肉団子が入っていた。

 どうやらいくつか種類があったらしい。

 あちこちで中身を言っているのが聞こえる。

 テオももらって、その中身を確かめた。

「私のは、豆ですね。それを何かで丸めてあるようです」それを口にするテオ。「あっ、甘くておいしいですよ」

 まわりを見てみると、魚の煮凝り(にこごり)や肉の角煮などが見えた。

 なんだか、わからないものもある。

 時間が経つと、少しずつ人数が減っていき、自然と解散していった。

 ほとんどが、ほかへ飲みに行くらしい。

 残ったのは、新郎新婦と設営スタッフだけだ。

 我々ふたりも、新郎新婦に挨拶をして、その場を離れた。

「いい結婚式でしたね」

「うん。しかし、グランがこんなに早く結婚するとは思わなかったよ」

「確かに。去年の冬が来る前でしたっけ、彼が落ちてきたのは」

「そうだったね。それから半年ちょっとか。もう言葉も不自由していないし、仲間もできて、奥さんもできた。もうここの住人として、この土地に根が生えたな」

「すぐに子どもも、できるんでしょうね」

「きっとそうなるだろう。ふたりともまだ若いからね」

「いいなぁ」とテオが空を見上げながら言った。

 オレは不思議に思って、彼を見た。

「なんだね? 君だって、まだ若いんだから――」

 テオが笑う。

「相手が見つかったら、ですよ、先生」

「今のところは?」

「聞くだけ――」

「野暮か」

 ふたりで笑った。

 城に戻る前に、地下に潜り、カフェに立ち寄って涼んだ。


読んでいただき、ありがとうございます。面白ければ、ブックマーク、評価、リアクションをお願いします。励みになりますので(汗)

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