【214.熱波と冷夏】
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外は熱波に襲われていた。
そのおかげで、王室図書館での仕事は、お休み状態だ。
そこで、テオとともに、王室文化院の事務室で、本来の仕事に専念する。
室長も出てきている。
彼女は、城内で暮らしていた。
訊くと「外に住む必要を感じないの」と言う。
この惑星で、結婚して子どもでも生まれれば、そうするのだろう。
だが、彼女は、落とされる前の家族を、今でも愛してるのだ。
ほかのスタッフで、城の外に住んでいる人間は、ほとんど出てきていない。
出るに出れないのだ。
この熱波は、例年よりも酷いらしい。
これも16年周期の太陽黒点によるものだろう。
それに加えて、小惑星衝突時の影響も手伝っているのかもしれない。
とすれば、今後は和らいでいくはずだ。
城下の商店や市場は、冬場と同じように、地下での営業を行なっていた。
それでも外出する人は少ない。
おそらく開店休業状態だろう。
「死傷者が出ているそうよ」と室長。
室長は、今まで評議会の会議に参加していた。
帰ってきて、最初のひと言が、それだった。
「どのくらいが?」と誰かが問う。
「わかっているだけで、死亡者3人、重軽傷者は100人越えてるわ」
「何か対策を?」
「それを考えて欲しいそうよ。ほかの部署も、同じように意見を求められているわ」
そこから全員での会議がはじまった。
死傷者の大半は、日射病と熱中症によるものだという。
日射病は、長い時間、陽射しを受けた状態でなる。
熱中症は、高気温での運動や労働で起こる。
簡単に言えば、陽射しを避け、涼しい室内に留まるのが、一番だ。
だが、仕事でどうしても外に出なければならない人や、冷房の効かない部屋で働かねばならない人もいる。
そうした人たちに差し伸べる手が必要なのだ。
思いつく限りの対処方法が出され、室長によって、評議会に提出された。
その後、重軽傷者はあるものの、死亡者はいなくなった。
対処方法が功を奏したのだ。
〈ラクロア王国〉では逆に冷夏だった。
そのため、冷害で作物が育たず、食料が不足する可能性が出てきた。
今はまだいいが、冬場には食料がなくなるかもしれない。
〈スベルト王国〉からの援助は難しい。
こちらも熱波の影響で、厳しい状況なのだ。
それに援助物資を運ぼうにも、〈スベルト王国〉唯一の外洋軍艦スピードウェイは、〈ラクロア王国〉への航海途中で、到着間近まで行っている。
すぐに〈ラクロア王国〉を出たとしても、冬場に到着することになる。
冬場は、海も荒れる。
艦が乗り切れないかもしれない。
それは避けたい。
となれば、各自でなんとかやっていくしかない。
「食料ですか」
アルに相談していた。
「もちろん君に、作ってくれ、と言ってるわけじゃない」
彼は苦笑した。
「さすがに言われても困りますが」
「何かいい案はないかね?」
考え込むアル。
「野菜工場でも」とゾフィー。「エネルギーを大量に使うでしょう。そうなると充分なエネルギーが確保できないと――」
「うん、収穫は限られることになる」
「地上での生産は」とアル。「希望が持てませんね。でも地下なら」
「地下?」
「ええ。地下であれば、環境は一定なので、エネルギーの消費も抑えられるでしょう」
「ふむ。何を育てればいいかな?」
「手を出しやすいのは、キノコでしょう。昆虫も育てられますね」
「なるほど。問題は、場所か」
「城下でも場所はすでにあります。山岳地帯なら洞窟もありますから、充分な食糧生産ができるのではないかと」
評議会ですぐに決定され、各地で開始。
〈ラクロア王国〉にも、そのアイディアと実践方法が伝えられた。
キノコや昆虫だけではなく、家畜もそこで育てられることになった。
家畜の被害も、多かったのである。
一部では、果樹なども直射日光をさえぎる処置がとられた。
夜は毎晩が熱帯夜で、眠りが浅い。
城の冷房は、最低温度が抑えられていた。
基地ならば、山の中なので涼める。
だが、自分だけが涼みに行くわけにもいかない。
そこで外に出てみた。
庭園の芝生に、誰かが横たわっていた。
ドアの音で、その人物がこちらを見た。
「ああ、先生」とテオの声。「先生も寝つけないんですか?」
「そういう君も?」
「ええ。芝生の上は、気持ちいいですよ」
「そうかね。では、失礼して」
オレも彼のとなりに横たわった。
背中から熱が奪われていく。
芝生の下の土が奪ってくれるのだ。
気持ちいい。
「いいねぇ」
「でしょ」
空には、星々が瞬いている。
「星を見るのが、久しぶりに思える」
「そうですね。小惑星騒ぎのときは、誰もが見上げてたのに」
「そうだったね」
ふたりとも黙って、星空を見ていた。
いつのまにか、そのまま、寝入ってしまった。
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