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落とされ人  作者: カーブミラー


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213/217

【213.疑問】

続きを読んでいただき、ありがとうございます。励みになります。

 ある夜。

 いつものように、ミチカの部屋に跳んだ。

 性欲発散のためだ。

 だが、部屋に今までにないものがあり、それを見た。

 キッチンの方だ。

「あれは?」

「冷蔵庫です。ふつうの」

「ふつうの?」

 開けて、中身を見た。

 食材自体はなく、下拵えしたものがほとんどだ。

「なぜ?」とミチカに問う。

「アルにお願いして用意してもらいました。料理によっては、冷蔵庫の中で味を染み込ませたり、馴染ませる必要があったので。それにデザートなどは、冷やさないと固まらないものもありますから」

「ああ、そういうことか。なるほど。ん?」

 冷蔵庫の中に見慣れたものがあった。

 ボードの上に、いくつもの突起物。

「モーガン・ピラミッドじゃないか」

 その上には、白い液体の入った器。

「そちらもアルに用意してもらいました。どうやら購入したようですね」

「購入しなくても、作れるだろうに」

「ええ。でもたぶん、あなたに気を遣ったんだと思います」

 アルの考えそうなことだ。

「そうかもしれないな」

「お腹は空いてませんよね? この時間ですし」

「うん。だが、君は食べたいな」

 ミチカは笑みを浮かべ、オレの手を取ると、ベッドへと導いた。


 次の休みに、彼女の手料理を食べることにした。

 彼女の手際はよく、まるでテオが女性になって、そこにいるように見えた。

 何を馬鹿な、とオレは首を振った。

 だが、出てきた料理を見て、驚いた。

「この料理のレシピ、どこから得たんだ?」

 目の前の料理は、先日、テオが自分で考えて作ったものだった。

 まだどこにも公開していないはずだ。

 ミチカが知っているわけがない。

 彼女は困惑気に「ある人から教えてもらいました」と答えた。

「まさか、テオから?」

 オレを見ながら、首を振った。

「いいえ。でもその人は、テオさんから教えてもらった、と言っていました」

「ということは、テオの知り合いだね」

「はい」

「その人とは、どこで会ったんだね? 君はここから出ていないはずだ」

 うなずくミチカ。

「その人は、ロボットです。〈落とされ人〉のひとりです」

 そういうことか。

 だとしたら辻褄は合う。

 テオがその人物にレシピを教え、SXEのロボット・ネットワークを通じて、ミチカに伝えられたのだろう。

 だが、それらしい人物がテオの近くにいただろうか?

 しばらくそれらのことを考えた。

「何か問題でも?」と言うミチカの声で、我に返った。

 気にするほどのことでもないか。

「いいや」

「でしたら冷めないうちに食べてください」

「そうだな」

 料理の味も、テオのものとほとんど同じだった。

 味付けはレシピがあっても、微妙に異なる。

 たとえ計量したとしても、だ。

 食材自体から出る成分もあるからだ。

 これは偶然だろうか?

 その疑惑は小さく、心のどこかにしまいこまれ、気がつかないうちに忘れ去っていた。


読んでいただき、ありがとうございます。面白ければ、ブックマーク、評価、リアクションをお願いします。励みになりますので(汗)

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