【213.疑問】
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ある夜。
いつものように、ミチカの部屋に跳んだ。
性欲発散のためだ。
だが、部屋に今までにないものがあり、それを見た。
キッチンの方だ。
「あれは?」
「冷蔵庫です。ふつうの」
「ふつうの?」
開けて、中身を見た。
食材自体はなく、下拵えしたものがほとんどだ。
「なぜ?」とミチカに問う。
「アルにお願いして用意してもらいました。料理によっては、冷蔵庫の中で味を染み込ませたり、馴染ませる必要があったので。それにデザートなどは、冷やさないと固まらないものもありますから」
「ああ、そういうことか。なるほど。ん?」
冷蔵庫の中に見慣れたものがあった。
ボードの上に、いくつもの突起物。
「モーガン・ピラミッドじゃないか」
その上には、白い液体の入った器。
「そちらもアルに用意してもらいました。どうやら購入したようですね」
「購入しなくても、作れるだろうに」
「ええ。でもたぶん、あなたに気を遣ったんだと思います」
アルの考えそうなことだ。
「そうかもしれないな」
「お腹は空いてませんよね? この時間ですし」
「うん。だが、君は食べたいな」
ミチカは笑みを浮かべ、オレの手を取ると、ベッドへと導いた。
次の休みに、彼女の手料理を食べることにした。
彼女の手際はよく、まるでテオが女性になって、そこにいるように見えた。
何を馬鹿な、とオレは首を振った。
だが、出てきた料理を見て、驚いた。
「この料理のレシピ、どこから得たんだ?」
目の前の料理は、先日、テオが自分で考えて作ったものだった。
まだどこにも公開していないはずだ。
ミチカが知っているわけがない。
彼女は困惑気に「ある人から教えてもらいました」と答えた。
「まさか、テオから?」
オレを見ながら、首を振った。
「いいえ。でもその人は、テオさんから教えてもらった、と言っていました」
「ということは、テオの知り合いだね」
「はい」
「その人とは、どこで会ったんだね? 君はここから出ていないはずだ」
うなずくミチカ。
「その人は、ロボットです。〈落とされ人〉のひとりです」
そういうことか。
だとしたら辻褄は合う。
テオがその人物にレシピを教え、SXEのロボット・ネットワークを通じて、ミチカに伝えられたのだろう。
だが、それらしい人物がテオの近くにいただろうか?
しばらくそれらのことを考えた。
「何か問題でも?」と言うミチカの声で、我に返った。
気にするほどのことでもないか。
「いいや」
「でしたら冷めないうちに食べてください」
「そうだな」
料理の味も、テオのものとほとんど同じだった。
味付けはレシピがあっても、微妙に異なる。
たとえ計量したとしても、だ。
食材自体から出る成分もあるからだ。
これは偶然だろうか?
その疑惑は小さく、心のどこかにしまいこまれ、気がつかないうちに忘れ去っていた。
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