【207.配属】
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マリーンは、メールだけを寄こした。
彼女の“毎日”の日課として。
こんなことをしました、あんなことをしました、これを買いました、あれを買いました。
“無事に施術が終わるのかと不安です”とも書かれることもあった。
オレは毎日、基地に跳んで、マリーンと話した。
1週間後。
無事にメンテナンスが済み、修復ドックからマリーンが出され、洗浄が行なわれ、患者用の薄い寝巻きを着せられたあと、ベッドに寝かされた。
脳髄の接続が、次々と行なわれ、彼女が目覚めた。
オレは、ベッドの横に座って、彼女を覗き込んだ。
「おはよう、マリーン」
「おはようございます、先生」肘をつきながら上体を起こすマリーン。「ここって現実の世界ですよね」
「ああ。身体の異常もなかったし、無事に施術も終わった。どうだね?」
「別にどこも。違和感どころか全然。本当に施術したんですか?」
オレは、手鏡を彼女に渡した。
手鏡を見ながら、不思議そうに彼女は首を傾けた。
「変わった、んですか?」
「もちろん。子どもっぽさは、もうどこにもない。大人の女性になってるよ」
ホオや体全体が、ほっそりとしている。
「そう言われると……そうかも」
手鏡を固定して、顔を左右に振る彼女。
「それから施術期間についてなんだが」彼女がオレを見る。「ひと月と言ったが、実際には1週間しか経ってないんだ」
驚いて、顔をこちらに向ける。
「えっ? 1週間? でもバーチャルスペースではひと月過ごしてましたよ?」
「うん」
そこでどのようにしたのかを説明する。
「そんなことができるんですか。信じられません」
「そうだろうね。証拠とは言えないが」と彼女のフェイスを渡す。
彼女が自分のフェイスを操作すると、顔を上げた。
「確かに1週間しか経っていませんね」
「こちらでそういう風にも操作はできるんだがね。でも本当に1週間しか経っていないんだよ」
「まだ信じられない気持ちです。でも先生がそうおっしゃるなら」
それから彼女は、新しい職場へと配属された。
場所は、〈スベルト王国〉西方の〈カナン〉という領地。
〈カナン〉は、比較的発展した土地だ。
隣接する国々からも離れているので、危険はない。
〈スベルト〉城下との、物資のやり取りも頻繁だ。
文化レベルも高い。
図書館があるのだが、まだ新設されて間もない。
マリーンの新しい職場は、その図書館だ。
ここで彼女は半年間の勤務となる。
すでに王室文化院のみんなとは、施術前に送迎会でお別れを言ってある。
そのとき、マリーンは大泣きしていたが、最後には笑顔で挨拶した。
必ず戻ってきます、と。
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