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落とされ人  作者: カーブミラー


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207/212

【207.配属】

続きを読んでいただき、ありがとうございます。励みになります。

 マリーンは、メールだけを寄こした。

 彼女の“毎日”の日課として。

 こんなことをしました、あんなことをしました、これを買いました、あれを買いました。

 “無事に施術が終わるのかと不安です”とも書かれることもあった。

 オレは毎日、基地に跳んで、マリーンと話した。


 1週間後。

 無事にメンテナンスが済み、修復ドックからマリーンが出され、洗浄が行なわれ、患者用の薄い寝巻きを着せられたあと、ベッドに寝かされた。

 脳髄の接続が、次々と行なわれ、彼女が目覚めた。

 オレは、ベッドの横に座って、彼女を覗き込んだ。

「おはよう、マリーン」

「おはようございます、先生」肘をつきながら上体を起こすマリーン。「ここって現実の世界ですよね」

「ああ。身体の異常もなかったし、無事に施術も終わった。どうだね?」

「別にどこも。違和感どころか全然。本当に施術したんですか?」

 オレは、手鏡を彼女に渡した。

 手鏡を見ながら、不思議そうに彼女は首を傾けた。

「変わった、んですか?」

「もちろん。子どもっぽさは、もうどこにもない。大人の女性になってるよ」

 ホオや体全体が、ほっそりとしている。

「そう言われると……そうかも」

 手鏡を固定して、顔を左右に振る彼女。

「それから施術期間についてなんだが」彼女がオレを見る。「ひと月と言ったが、実際には1週間しか経ってないんだ」

 驚いて、顔をこちらに向ける。

「えっ? 1週間? でもバーチャルスペースではひと月過ごしてましたよ?」

「うん」

 そこでどのようにしたのかを説明する。

「そんなことができるんですか。信じられません」

「そうだろうね。証拠とは言えないが」と彼女のフェイスを渡す。

 彼女が自分のフェイスを操作すると、顔を上げた。

「確かに1週間しか経っていませんね」

「こちらでそういう風にも操作はできるんだがね。でも本当に1週間しか経っていないんだよ」

「まだ信じられない気持ちです。でも先生がそうおっしゃるなら」


 それから彼女は、新しい職場へと配属された。

 場所は、〈スベルト王国〉西方の〈カナン〉という領地。

 〈カナン〉は、比較的発展した土地だ。

 隣接する国々からも離れているので、危険はない。

 〈スベルト〉城下との、物資のやり取りも頻繁だ。

 文化レベルも高い。

 図書館があるのだが、まだ新設されて間もない。

 マリーンの新しい職場は、その図書館だ。

 ここで彼女は半年間の勤務となる。

 すでに王室文化院のみんなとは、施術前に送迎会でお別れを言ってある。

 そのとき、マリーンは大泣きしていたが、最後には笑顔で挨拶した。

 必ず戻ってきます、と。


読んでいただき、ありがとうございます。面白ければ、ブックマーク、評価、リアクションをお願いします。励みになりますので(汗)

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