【204.室長の気持ち】
続きを読んでいただき、ありがとうございます。励みになります。
私用で慌てていて、更新を忘れていました。
申し訳ありません。ということで、二話連続更新します。
いつのまにか、夏になっていた。
陽射しが強く、空気が暑い。
監獄ステーションからのポッド投下は、あいかわらず行なわれている。
そうした〈落とされ人〉の回収も続けられている。
領土が広がったおかげで、回収される人数も増えた。
手間はかかるが、その分だけ、知識が増える。
科学者や技術者も集まる。
だが、財政が逼迫している。
国が支援するには、限度がある。
代わりに企業がある程度の支援をしてくれていた。
それでも企業もそれほど余裕がない。
やはり、小惑星の落下や大雪による影響が尾を引いている。
南大陸の〈ラクロア王国〉でも同様らしい。
***
仕事終わり。
帰ろうとすると、室長に声をかけられた。
テオたちを先に帰らせる。
ほかのみんなも帰った。
「どうしました?」
「あの船のことなんだけど」
「あの船?」
彼女は、人差し指を天井に向けた。
上空にいる調査船のことを言っているのだ、とわかった。
「あの船がどうかしましたか?」
「ずっと考えていたんだけど……彼らの知識をもらえないかしら?」
オレは首を振った。
「ダメですよ、室長。お気持ちはわかりますがね。でもあれはここにあるはずがないものなんです」
「それはわかるけど――」
「ダメです。諦めてください」と口調を強くして言った。
室長はそんなオレを見てから下を向き、ため息をついた。
「彼らはいつからいるの?」
「この惑星が、監獄惑星になってからです」
「そんな昔から? それなら小惑星が落ちる以前に、なんとかできたはずでしょうに」
「なんとかしたんですよ。ほら、途中で、小惑星が分離したでしょ。あれのおかげで被害は小さくなった」
「ええ……まさか、あれは、彼らの仕業?」
うなずいてみせる。
実際には、彼らが小惑星を落下させたのだが、そんなことを言えるわけもない。
「そう……そうだったの」
室長は、イスの背もたれに、力なく背中を預けた。
「分離していなかったら、どうなったか」
「かなりの被害だったでしょうね」
「ええ。衝突の際の衝撃が〈スータン〉全土を駆けめぐり、巻き上げられた粉塵が〈スータン〉上空を包み込んでしまう。そうなったら太陽からのエネルギーをさえぎり、気温が下がり、一気に冬となっていたでしょう」
「準備もできずに、冬になったら、被害は拡大してたわね」
「その冬は、春の訪れも遅らせたはずです。長い冬をどれだけの人が生き延びたか」
室長はそれを想像したのだろう、自分で自分を抱いて、震えた。
「そうなっていなくて……ありがたい限りだわ」
「ええ」
「でももっと前に対処できたんじゃ? 軌道をそらすとか」
首を振った。
「彼らは〈スータン〉の人間を観察するのが仕事です。小惑星を見つけたのは、人間の方が先なんですよ。それから小惑星の軌道をそらせようとすると、上の看守たちに気付かれてしまう。それにあの船は宇宙船ではありませんし、この星系にいる仲間たちはほんの少し。できる作業も限られてしまうんです」
「そう。あの船を見たら、なんでもできるように思えてしまって」
「わかります。どこの星に行っても、あれほどの技術はないでしょうからね。ほとんど魔法ですよ」
「ええ。……でも残念だわ」
「〈スータン〉の知識に組み込んだら、おそらく大変なことになるでしょうね。小惑星の衝突どころじゃなくなりますよ、きっと」
室長は意味がわからないようすだ。
「どうなると?」
「誰もがあの船同様の技術を持つわけですから、戦争に発展してもおかしくない」
「〈スベルト〉独占でも?」
「各国の諜報員が街中にいるんですよ? 〈スベルト〉では問題ない技術でも、他国に持ち込んだら、どんな使い方をされるかわかりません」
「どんな道具も人次第、というわけ?」
「そうです。戦争にならずとも、人々を恐怖で支配することも可能でしょう」
「ああ、なるほど。独裁者ね。危険だわ。やはり、あの船の技術を組み込むのは危険ね」
納得してくれた。
だが、意識の中には(残念ね)という思いはあったが。
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