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落とされ人  作者: カーブミラー


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203/211

【203.新しい部屋】

続きを読んでいただき、ありがとうございます。励みになります。

 その日の仕事は順調だった。

 多少の妄想はあったが。


 夜。

 ミチカとともに、調査船にジャンプした。

 アルから(部屋が用意できました)と念が送られてきたからだ。

 調査船はすでに基地に移動していた。

 調査船を降り、格納庫からバギーで移動する。

 いくつかのエリアを抜けて、居住区へと入った。

 居住区は、〈落とされ人〉となったロボットのためのエリアだ。

 彼らは、補修の順番や、補修が終わって戻されるのを待っている。

 人間同様の暮らしをしてきたロボットたちだ。

 それなりの設備を必要とするのだろう。

 その中のひと部屋に案内された。

 充分な広さと設備がある。

 トイレ、バス、キッチン。

 ベッドもダブルベッドだ。

 家具や調理器具。

 冷蔵庫には食料も入っている。

 このまま、すぐにでも生活がはじめられる状態だ。

「ありがたいね。もっと小さな部屋でもよかったのに」

「おふたりがゆっくり過ごすには、このくらいの方がいいと思いまして」とアル。「それともワンルームタイプにしましょうか?」

 それは彼の冗談だとわかった。

 オレは首を振る。

「ご好意に甘えさせていただくよ、アル」

「よかった。必要なものがあったら言ってください。できるだけ用意します」

「ありがとう」

「それと」彼はテーブルから手のひら大の物体を取り上げて、手渡してきた。「これを」

 受け取って、両手のあいだでひっくり返してみた。

「なんだね?」

「一種の警報機だと思ってください。ドアのノックや声かけを、思念波通信であなたに知らせてくれます。こっちにいるときに城内の寝室に、誰かが訪れるかもしれませんから。普段はスイッチを切っておいて、こちらに跳ぶ前にスイッチを入れればいいでしょう」

「ああ、なるほど。確かにテオか誰かが、寝室に来てもおかしくないな。私がこっちにいたら、返事がなくてドアを開けるかもしれない。ありがたい」

「知らせが入れば、あなたが跳ぶだけですみますからね」

「うん」

「今後は、案内は不要ですよね」

「もちろんだとも」

 アルは、笑顔で部屋を出ていった。

 部屋を再度見回す。

 部屋の一面は、床から天井まで、カーテンがかけられていた。

 それを左右に開いて、驚いた。

 全面ガラス張り。

 しかも外が見える。

 夜の〈スベルト〉の城下だ。

 まるでホテル〈リッチモンド〉の最上階からの眺めのようだ。

 しかし、絶対にそんなはずはない。

 ここは城からずっと離れているし、地下のはずだ。

 ということは、単なる画像か。

 見上げると星がきらめいている。

 静止画像ではなく、映像のようだ。

 何気なく、ガラスに左手を当てた。

 するとそこにメニューが現れた。

 設定時刻が表示されている。

 それを昼に調整すると、まぶしい陽射しが飛び込んできて、思わずマブタを閉じた。

 明るさに慣れるのを待って、そっとマブタを開く。

 そこには昼間の城下があった。

 陽射しは暖かい。

 メニューには、場所の指定もできるようになっている。

 海に設定すると、ガラスの向こうに、青い空と海、砂浜が映し出された。

 なんと潮風まで吹いてくる。

 気が利いている、というか、“ここまでやるか?”と言いたくなる。

 設定を戻して、夜の城下にした。

 潮の香りがまだ残っているが、どんどんと薄らいでいく。

 オレはカーテンを閉じた。

 振り返ると、ミチカが小首を傾げた。

「まずはお風呂に入ろうか」

「はい」

 手に持っていた警報機のスイッチを入れ、物送りの術で自分の寝室へと送った。

 それから彼女をともなって、バスルームに入った。


読んでいただき、ありがとうございます。面白ければ、ブックマーク、評価、リアクションをお願いします。励みになりますので(汗)

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