【203.新しい部屋】
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その日の仕事は順調だった。
多少の妄想はあったが。
夜。
ミチカとともに、調査船にジャンプした。
アルから(部屋が用意できました)と念が送られてきたからだ。
調査船はすでに基地に移動していた。
調査船を降り、格納庫からバギーで移動する。
いくつかのエリアを抜けて、居住区へと入った。
居住区は、〈落とされ人〉となったロボットのためのエリアだ。
彼らは、補修の順番や、補修が終わって戻されるのを待っている。
人間同様の暮らしをしてきたロボットたちだ。
それなりの設備を必要とするのだろう。
その中のひと部屋に案内された。
充分な広さと設備がある。
トイレ、バス、キッチン。
ベッドもダブルベッドだ。
家具や調理器具。
冷蔵庫には食料も入っている。
このまま、すぐにでも生活がはじめられる状態だ。
「ありがたいね。もっと小さな部屋でもよかったのに」
「おふたりがゆっくり過ごすには、このくらいの方がいいと思いまして」とアル。「それともワンルームタイプにしましょうか?」
それは彼の冗談だとわかった。
オレは首を振る。
「ご好意に甘えさせていただくよ、アル」
「よかった。必要なものがあったら言ってください。できるだけ用意します」
「ありがとう」
「それと」彼はテーブルから手のひら大の物体を取り上げて、手渡してきた。「これを」
受け取って、両手のあいだでひっくり返してみた。
「なんだね?」
「一種の警報機だと思ってください。ドアのノックや声かけを、思念波通信であなたに知らせてくれます。こっちにいるときに城内の寝室に、誰かが訪れるかもしれませんから。普段はスイッチを切っておいて、こちらに跳ぶ前にスイッチを入れればいいでしょう」
「ああ、なるほど。確かにテオか誰かが、寝室に来てもおかしくないな。私がこっちにいたら、返事がなくてドアを開けるかもしれない。ありがたい」
「知らせが入れば、あなたが跳ぶだけですみますからね」
「うん」
「今後は、案内は不要ですよね」
「もちろんだとも」
アルは、笑顔で部屋を出ていった。
部屋を再度見回す。
部屋の一面は、床から天井まで、カーテンがかけられていた。
それを左右に開いて、驚いた。
全面ガラス張り。
しかも外が見える。
夜の〈スベルト〉の城下だ。
まるでホテル〈リッチモンド〉の最上階からの眺めのようだ。
しかし、絶対にそんなはずはない。
ここは城からずっと離れているし、地下のはずだ。
ということは、単なる画像か。
見上げると星がきらめいている。
静止画像ではなく、映像のようだ。
何気なく、ガラスに左手を当てた。
するとそこにメニューが現れた。
設定時刻が表示されている。
それを昼に調整すると、まぶしい陽射しが飛び込んできて、思わずマブタを閉じた。
明るさに慣れるのを待って、そっとマブタを開く。
そこには昼間の城下があった。
陽射しは暖かい。
メニューには、場所の指定もできるようになっている。
海に設定すると、ガラスの向こうに、青い空と海、砂浜が映し出された。
なんと潮風まで吹いてくる。
気が利いている、というか、“ここまでやるか?”と言いたくなる。
設定を戻して、夜の城下にした。
潮の香りがまだ残っているが、どんどんと薄らいでいく。
オレはカーテンを閉じた。
振り返ると、ミチカが小首を傾げた。
「まずはお風呂に入ろうか」
「はい」
手に持っていた警報機のスイッチを入れ、物送りの術で自分の寝室へと送った。
それから彼女をともなって、バスルームに入った。
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