【200.若返り】
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身体が若くなるというのは、頭ではうれしくあった。
だが、実際にその経験をして、初めてそのデメリットを感じた。
確かに身体の反応が以前より早くなり、活動的だ。
頭の回転も速くなっている。
これらはメリットだ。
おかげで、若者に混じっていても、体力的にも頭脳的にも引けをとらない。
ところが、思わぬところまで若くなってしまって、それで困った。
性欲だ。
以前は、身近な女性にさえも欲情せずに済んでいた。
イヤ、正直に言えば、お相手してみたいという相手はいた。
だが、ところかまわず勃起することはなかった。
今では、女性が発する性フェロモンを感じると――それどころか、ちょっとした無防備な姿を見ただけでも――反応してしまうのだ。
頭の中でも困ったことになってしまっている。
仕事中だというのに、性的妄想をしてしまうのだ。
そんな状態は夜にもおよぶ。
眠れずに自慰行為をする日々が続く。
まるで性に目覚めた少年のようだ。
それだけならいいのだが、解放されるまでが長い。
若いときは短時間で逝けた。
今のオレは、それなりのセックス経験を積んだ大人だ。
相手と一緒に逝く、それが身体に染み込んでいるのだ。
逝きそうで逝けない時間が長くなる。
解放されたときには、もうクタクタだ。
ほとんどそのまま眠ってしまうことも多い。
安心して眠っていると、今度は夢を見る。
女性を追いかけ、捕まえて引き倒し、衣服を乱暴に引き裂く。
そして、無理矢理に犯すのだ。
その凶暴性に恐怖して、目が覚める。
気がついてみると、身体中が汗だくだ。
シャワーを浴びて、新しいパジャマを着る。
シーツを交換してから横になる。
でも眠れない。
そうして、朝が来るのを待つのだ。
「なんとかならないかね」とアルに文句を言った。
だが、彼は「申し訳ありませんが」と首を振る。
「若くなるのはうれしいが、性欲に時間をとられてしまうのでは、意味がないよ」
「睡眠薬を処方してみましょうか」
「根本的に解決しないと、意味がないよ」
「しかし、下手な治療を行なうと、あまりよくない影響が出てくると思われますが」
「どんな影響だね?」
「性欲を抑えるわけですから、鬱になりやすくなります。その結果、脳の老化に拍車がかかることになります」
「つまり、身体は若くても、脳だけが老人、というわけか」
「ええ。それよりも、今の状態に慣れてもらう方がいいのですが」
「確かに脳を刺激して、若く保つ役には立つが……」
オレは、頭を抱えた。
どうすればいいのだろうか?
ひとり、部屋にこもっても妄想ばかりになるだろうし。
かといって、身体を酷使して、疲れて眠る毎日など、考えられない。
仕事に邁進したくても、そうした集中ができてはいないし。
そんなオレにアルが声をかけた。
「パオロ」
顔を上げて、彼を見る。
「なんだね?」
「怒らないでくださいね」
おや、アルがそんなことを言うなんて、初めてだ。
「話次第だね。それで?」
「セクサロイドを持たれてみては?」
「セクサロイドを? 確かに性欲のはけ口にはなるが」
「自慰行為と性行為は、別物です。性交渉の相手がいるだけでも、満足度は高いはずですが」
「そのとおりだ。だが、それで昼間の性欲が抑制されるとは思えんのだが」
「性欲が高まったら彼女のもとに行けばいいでしょう。あなたにはジャンプする能力もありますし」
彼はニヤリと笑って見せた。
「楽しもうとしてないか?」
首を振ったが、ニヤリ笑いは消えない。
「だが、肝心のセクサロイドは? 〈落とされ人〉の中にいるのかね?」
「ご心配なく。基地で誕生させます。そのくらいの能力はありますから」
そのくらいって……まぁ、確かにレディー・ホワイト――今は軍艦スピードウェイだ――を造り上げたのだから、できて当然か。
「わかった。それでどのくらいで出来上がるかね?」
「1週間ください。そんなにはかからないはずですがね」
「そのくらいなら我慢しよう」
「ご要望は?」
「特にはない」と言ったが、すぐに思い直して「知り合いに似せるのだけは勘弁してくれないか」
アルが大声で笑った。
「わかりました。そうしましょう」
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