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落とされ人  作者: カーブミラー


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200/214

【200.若返り】

続きを読んでいただき、ありがとうございます。励みになります。

 身体が若くなるというのは、頭ではうれしくあった。

 だが、実際にその経験をして、初めてそのデメリットを感じた。

 確かに身体の反応が以前より早くなり、活動的だ。

 頭の回転も速くなっている。

 これらはメリットだ。

 おかげで、若者に混じっていても、体力的にも頭脳的にも引けをとらない。

 ところが、思わぬところまで若くなってしまって、それで困った。

 性欲だ。

 以前は、身近な女性にさえも欲情せずに済んでいた。

 イヤ、正直に言えば、お相手してみたいという相手はいた。

 だが、ところかまわず勃起することはなかった。

 今では、女性が発する性フェロモンを感じると――それどころか、ちょっとした無防備な姿を見ただけでも――反応してしまうのだ。

 頭の中でも困ったことになってしまっている。

 仕事中だというのに、性的妄想をしてしまうのだ。

 そんな状態は夜にもおよぶ。

 眠れずに自慰行為をする日々が続く。

 まるで性に目覚めた少年のようだ。

 それだけならいいのだが、解放されるまでが長い。

 若いときは短時間で逝けた。

 今のオレは、それなりのセックス経験を積んだ大人だ。

 相手と一緒に逝く、それが身体に染み込んでいるのだ。

 逝きそうで逝けない時間が長くなる。

 解放されたときには、もうクタクタだ。

 ほとんどそのまま眠ってしまうことも多い。

 安心して眠っていると、今度は夢を見る。

 女性を追いかけ、捕まえて引き倒し、衣服を乱暴に引き裂く。

 そして、無理矢理に犯すのだ。

 その凶暴性に恐怖して、目が覚める。

 気がついてみると、身体中が汗だくだ。

 シャワーを浴びて、新しいパジャマを着る。

 シーツを交換してから横になる。

 でも眠れない。

 そうして、朝が来るのを待つのだ。


「なんとかならないかね」とアルに文句を言った。

 だが、彼は「申し訳ありませんが」と首を振る。

「若くなるのはうれしいが、性欲に時間をとられてしまうのでは、意味がないよ」

「睡眠薬を処方してみましょうか」

「根本的に解決しないと、意味がないよ」

「しかし、下手な治療を行なうと、あまりよくない影響が出てくると思われますが」

「どんな影響だね?」

「性欲を抑えるわけですから、鬱になりやすくなります。その結果、脳の老化に拍車がかかることになります」

「つまり、身体は若くても、脳だけが老人、というわけか」

「ええ。それよりも、今の状態に慣れてもらう方がいいのですが」

「確かに脳を刺激して、若く保つ役には立つが……」

 オレは、頭を抱えた。

 どうすればいいのだろうか?

 ひとり、部屋にこもっても妄想ばかりになるだろうし。

 かといって、身体を酷使して、疲れて眠る毎日など、考えられない。

 仕事に邁進したくても、そうした集中ができてはいないし。

 そんなオレにアルが声をかけた。

「パオロ」

 顔を上げて、彼を見る。

「なんだね?」

「怒らないでくださいね」

 おや、アルがそんなことを言うなんて、初めてだ。

「話次第だね。それで?」

「セクサロイドを持たれてみては?」

「セクサロイドを? 確かに性欲のはけ口にはなるが」

「自慰行為と性行為は、別物です。性交渉の相手がいるだけでも、満足度は高いはずですが」

「そのとおりだ。だが、それで昼間の性欲が抑制されるとは思えんのだが」

「性欲が高まったら彼女のもとに行けばいいでしょう。あなたにはジャンプする能力もありますし」

 彼はニヤリと笑って見せた。

「楽しもうとしてないか?」

 首を振ったが、ニヤリ笑いは消えない。

「だが、肝心のセクサロイドは? 〈落とされ人〉の中にいるのかね?」

「ご心配なく。基地で誕生させます。そのくらいの能力はありますから」

 そのくらいって……まぁ、確かにレディー・ホワイト――今は軍艦スピードウェイだ――を造り上げたのだから、できて当然か。

「わかった。それでどのくらいで出来上がるかね?」

「1週間ください。そんなにはかからないはずですがね」

「そのくらいなら我慢しよう」

「ご要望は?」

「特にはない」と言ったが、すぐに思い直して「知り合いに似せるのだけは勘弁してくれないか」

 アルが大声で笑った。

「わかりました。そうしましょう」


読んでいただき、ありがとうございます。面白ければ、ブックマーク、評価、リアクションをお願いします。励みになりますので(汗)

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