【199.退院】
続きを読んでいただき、ありがとうございます。励みになります。
昨日は私用で更新ができませんでした。
申し訳ありませんでしたm(_ _)m
二話連続更新します。
立ちくらみ。
それが医療ドックを出た最初の現象だった。
数秒間、ドックの縁につかまっていた。
だが、それほど酷い症状ではない。
「大丈夫ですか?」とアルが心配してくれる。
「大丈夫だ。ずっと横になったままだったからね」
それでも心臓がバクバクしている。
ようやく3週間が過ぎ、医療ドックから出ることが許された。
ドックを覆うフードが開く。
微風が入ってきて、肌をなでていくと、一瞬、寒く感じた。
だが、すぐに室温が暖かいのを感じることができた。
医療ドック内は、新陳代謝を高めるために、少し暖められていたのだ。
そのために室内の空気に触れて寒く感じたのだろう。
ドックの上から滑り降りたときには、脚の筋肉はしっかりしていた。
ところが、立ちくらみを起こした。
急に血液が下半身へと流れ、血圧が低下したため、脳に行く酸素が一時的に不足したのだ。
そこで心臓ががんばって、血液を送り、脳に酸素を供給した。
そういうわけだ。
立ちくらみが治まると、オレは室内を歩きまわった。
いくらドックが筋肉を刺激していたからといっても、曲げ伸ばしができるようにはできていない。
ちゃんと動かして、ふつうの状態に戻さねば。
だが、すぐに疲れてしまう。
イスに座ると、アルが丸いドリンクポットを渡してくれた。「栄養ドリンクです」
「ありがとう」
それを飲むと、多少は元気になれた。
「あまり無理をしない方がいいですよ」
「そうだね」
その日は、用意されたベッドで眠った。
動きまわったせいで疲れ、夢も見なかった。
二日を調査船内で過ごし、翌日には王室文化院の事務室に顔を出す。
そこにいた面々が、笑顔で迎えてくれた。
それから評議会会議室にも挨拶しに行った。
「モーガン卿、もういいのですか?」と議長。
「ええ。昨日、退院してきました。寝てばかりいたので、身体がなまっていますが」
「あまり無理はなさらない方が、いいですよ」と評議員のひとり。
オレは笑って応えた。
陛下も「おまえが戻ってきたことは、喜ばしい」と笑みを向けてくれた。
違和感は、体力回復のためにはじめたジョギングで現れた。
身体が軽いのだ。
そのこと自体は喜ぶべきことなのだが。
靴も服装も以前のままなのだから、原因は身体にある。
そこでスタッフに頼んで、体力測定を受けてみた。
「モーガン卿」とスタッフが首を振る。「何をしたんですか?」
「何もしてないよ。病気で入院してただけだ」
「別人があなたに変装している、と聞いても私は驚きませんよ」
「というと結果は?」
「30代前半の体力だと」
「30代前半? そんなに若く?」
「計測ミスはありませんよ、モーガン卿」
そのことをアルに話してみた。
「なんの不思議もありません」と彼は平然と答えた。
「なぜだね?」
「あなたの身体の内部を、ナノマシンが修復したからですよ。心臓も肺も新しくなっていますから、運動能力が上がっているのは当然です」
「つまり、若返ったようなものかね?」
彼は少し考えてから答えた。
「そうとも言えますね。臓器も修復されていますから、体内にたまった老廃物も体外に排出されやすくなります。より健康になるでしょう」
「そういうことか」
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