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落とされ人  作者: カーブミラー


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198/223

【198.見舞い客】

続きを読んでいただき、ありがとうございます。励みになります。

「〈ヘベルカ〉の指揮官は更迭して、評議会の決議を待っている」

 陛下は医療ドックのそばに座って、そう切り出した。

 オレが目覚めたことを知り、城から上がってきたのだ。

「彼の部下たちは?」

 〈スベルト王国〉に侵攻しようとしていた〈ヘベルカ〉の兵士たちのことだ。

「武装解除させたあと、〈ヘベルカ〉の状況を聞きだした。食べられるものがわからず、飢えていたようだな。〈スベルト〉軍とともに〈ヘベルカ〉の国民のところへ戻した。各種資料を渡して、食料を集めさせ、炊き出しを行なったそうだ」

「喜んだでしょうね」

 陛下はうなずいた。

「報告では、最初、それらが本当に食べられるのか、と怪訝な表情だったそうだが、炊き出しを受け取って食べると、誰もが驚きとともに安堵した顔をしたそうだ。こちらからの支援は財政難で最低限になってしまうが、食料が豊富にあるのだから充分だろう」

「そうですね。それで今後は〈スベルト王国〉に併合を?」

「すでにな。今は領主を選出させているところだ」

 安堵した。

「〈アーガイル〉には進軍されたが、斥候隊が進んでいた経路だったので、これといった被害もなかった。今は平常に戻っている」

「それはよろしかったですね」

「うむ。あとは、おまえが戻ってくれれば、丸く収まる」

「その点につきましては」とアル。「まだまだ時間がかかります」

「仕方がないな」

「御迷惑をおかけいたします」

「いいさ。元気になってくれればそれでいい」


 医療ドックの中に閉じ込められているのは、実に暇だった。

 ときどき、全身にピリピリと微電流が流れ、筋肉の収縮が繰り返される。

 全身の筋力が衰えないようにしているのだが、それ以外には刺激がない。

 いろんなことを考えるのだが、どうしても空回りばかり。

 自分の書庫の本を読んでもみるが、ひまつぶしには程遠い。

 アルに単純なゲームを用意してもらって遊んでみるが、すぐに飽きてしまう。

 陛下やテオたちが毎日、見舞いに来てくれるのは、うれしかった。

 室長もときどき顔を見せた。

「陛下から聞いたの」という。「ほかの人たちには、病気で入院していることにしてある。隔離が必要な病気だと、ね」

「具体的には?」

「聞かされていない、と言っておいたわ」と笑みを浮かべて、肩をすくめた。それから部屋の中を見回す。「しかし、変わった病院だわね」

 オレは笑った。

「確かに」

「このベッドも。しかも城の上空に浮かんでいるなんて、信じられないわ」彼女の目がオレに戻ってきた。「いったいどういう知り合いなの?」

「SXEが持ち込んだものです。この惑星に住む人間を観察するためだとか」

「観察?」

「ええ。ロボットには、“人間のことを守りたい”という本能が組み込まれていますからね。そういう意味では、この惑星の人間たちが心配なんでしょう」

「でも、ロボットの姿はないわね」

「SXEのロボットを間近に見られたことはありませんか?」

「使っている人はいたわ。外見は人間ぽかったけど、見分けはすぐについた」

「なるほど。私はセクサロイドを使っていました」

「セクサロイドを? あなたならなんの問題もなく、本物の女も抱けるでしょう?」

「抱けます。実際に抱いてきました。ですが」首を振った。医療ドックの中なので大きくは動かせないが。「所詮は金で買った女たちです。あるいは、金目当てのね。そんな女に満足はできませんよ」

「だからセクサロイドに?」

「購入したときは期待もしていなかったんですが……いつのまにか」肩をすくめようとしたが、その肩も医療ドックの中だ。「まぁ、そういうことです」

「ふむ。それでセクサロイドはロボットくささはない、と?」

「それなりの部分は持っていました。でも見た目だけなら遜色はありませんね」

「だとしたら――」とアルを見た。「彼が?」

「ええ。アルはロボットです。グレードは最高級でしょう。そうだよね、アル」

 アルは問いかけに、微笑みを浮かべて、うなずいて応えた。

 そのうなずきを見ても、室長は信じられない、という顔をしている。

 まぁ、わからなくもない。

「証拠を見せろ、と言われても見せようがないでしょうがね」

「つまり、それだけ人間そっくりなわけ?」

「ええ。飲食もできますから、人間の中にいてもわからないでしょうね」

「飲食まで? それでは専門家でなければわからないわね」

「アル、専門家なら君がロボットだとわかるのかね?」

「わかるでしょう。ロボットには固有の癖がありますから」

「固有の癖?」

「ええ。ふつうの人にはわからない程度のものです。ですが、専門家はその癖を理解しています、どうしてその癖が出るのかをね」

 室長は首を振るばかりだった。


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