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落とされ人  作者: カーブミラー


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196/230

【196.食肉植物】

続きを読んでいただき、ありがとうございます。励みになります。

 目を覚ますと、目の前には透明なフードとその向こうに明るい光を出すパネルがあった。

 仰向けになっているので、天井を見上げているのだとわかる。

 その透明なフードの向こうに顔が現れた。

 アルだ。

 オレを見て、ニコリと笑う。

「目覚めましたね、パオロ」

「ここは?」

「調査船の医療ドックの中です。危険な状態にありましたが、もう脱しています」

「何が起こったんだ?」

「覚えていないんですか?」

「何か夢を見た気はするんだが。思い出せない」

 本当のことだ。

「あなたは、致死性の毒を受け、ここへジャンプしてきました。すぐに医療ドックに入れたのですが、毒のまわりが早く、治療に時間がかかってしまいました」

「致死性の毒?」それで思い出した。「そうだ、〈ヘベルカ〉軍指揮官に毒の草で傷つけられたんだ。すぐに死ぬ、と指揮官が言った。そこでここにジャンプしたんだった」

「そのようですね。あなた自身が物送りの術を使えてよかったですよ。〈マニ教〉の師父に依頼していたら……いや、依頼する時間もなかったでしょうね」

「そうか。個人用バリアがあっても、あれでは身体を守れなかったな」

「ええ。バリアは武器の類いは検知しますが、草はね。ちなみにその毒の草は、一種の食肉植物で、通りかかった動物を毒で殺し、“腐肉食い”に分解させ、その養分を吸い取ります」

「そんな植物があったのかね。怖いね」

「ええ」

「そうだ、私が抱いていたアーガイル・フォックスは?」

「陛下のそばで休んでいます」

「陛下は御無事なのか?」

「ええ。今は、眠っておられます。一度、城に戻り、自国軍に〈ヘベルカ〉軍の鎮圧を命じられ、その状況を見ておられたのです」

「それで?」

「〈ヘベルカ〉軍は取り囲まれ、降伏したそうです。陛下は、テオドア・スプリングス、マリーン・ブルックス、スエツグ・マツダとともにこちらへと戻り、あなたの看病を」

「だが、陛下はどうやって、こちらに戻ってきたんだね? 〈アーガイル〉に行ったことは誰にも内緒だったのに」

「あなたが抱いていたアーガイル・フォックスですよ。彼が何かを伝えたがって、私に手を伸ばしてきたのですが、その手に触れても何もわからず」

 さすがにロボットの肌に接触しても何も伝わらない。

「ああ、そうだろうねぇ。それで?」

「とにかく、経緯がわかりませんでしたので、〈アーガイル〉をドローンに調べさせたのです。そこで陛下を見つけました」

「ああ、そういうことだったのか」

「ええ。ドローンを陛下に接触させて、経緯がわかったわけです」

 時間を惜しんでいた陛下は、ドローンで城へと移動した。

 ドローンに客室などない。

 その触手で陛下を包み込み、空を飛んだのだ。

 陛下にとっては、恐怖の体験だっただろう。

 そんなドローンでの旅は、もちろん、途中までだ。

 途中で、陛下を迎えに来ていた調査船と合流し、城へと帰還した。

 到着すると、陛下はすぐさま軍に命令を発し、〈ヘベルカ〉軍を包囲し降伏させた。

 それからオレの部下たちを呼び出し、オレのことを告げた。

 テオがスエツグと連絡を取り、大師父3人がジャンプしてきた。

 あとは、オレを呼び続けたわけだ。

 峠を越えた、とアルが宣言し、大師父3人も太鼓判を押したので、陛下もほかのみんなも疲れから、調査船のあちこちで安心して眠りについた。

 今はアルだけが、医療ドックのそばにいるだけだ。

 いや、ゾフィーも、だな。

 ここは彼女の腹の中なのだから。


読んでいただき、ありがとうございます。面白ければ、ブックマーク、評価、リアクションをお願いします。励みになりますので(汗)

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