【196.食肉植物】
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目を覚ますと、目の前には透明なフードとその向こうに明るい光を出すパネルがあった。
仰向けになっているので、天井を見上げているのだとわかる。
その透明なフードの向こうに顔が現れた。
アルだ。
オレを見て、ニコリと笑う。
「目覚めましたね、パオロ」
「ここは?」
「調査船の医療ドックの中です。危険な状態にありましたが、もう脱しています」
「何が起こったんだ?」
「覚えていないんですか?」
「何か夢を見た気はするんだが。思い出せない」
本当のことだ。
「あなたは、致死性の毒を受け、ここへジャンプしてきました。すぐに医療ドックに入れたのですが、毒のまわりが早く、治療に時間がかかってしまいました」
「致死性の毒?」それで思い出した。「そうだ、〈ヘベルカ〉軍指揮官に毒の草で傷つけられたんだ。すぐに死ぬ、と指揮官が言った。そこでここにジャンプしたんだった」
「そのようですね。あなた自身が物送りの術を使えてよかったですよ。〈マニ教〉の師父に依頼していたら……いや、依頼する時間もなかったでしょうね」
「そうか。個人用バリアがあっても、あれでは身体を守れなかったな」
「ええ。バリアは武器の類いは検知しますが、草はね。ちなみにその毒の草は、一種の食肉植物で、通りかかった動物を毒で殺し、“腐肉食い”に分解させ、その養分を吸い取ります」
「そんな植物があったのかね。怖いね」
「ええ」
「そうだ、私が抱いていたアーガイル・フォックスは?」
「陛下のそばで休んでいます」
「陛下は御無事なのか?」
「ええ。今は、眠っておられます。一度、城に戻り、自国軍に〈ヘベルカ〉軍の鎮圧を命じられ、その状況を見ておられたのです」
「それで?」
「〈ヘベルカ〉軍は取り囲まれ、降伏したそうです。陛下は、テオドア・スプリングス、マリーン・ブルックス、スエツグ・マツダとともにこちらへと戻り、あなたの看病を」
「だが、陛下はどうやって、こちらに戻ってきたんだね? 〈アーガイル〉に行ったことは誰にも内緒だったのに」
「あなたが抱いていたアーガイル・フォックスですよ。彼が何かを伝えたがって、私に手を伸ばしてきたのですが、その手に触れても何もわからず」
さすがにロボットの肌に接触しても何も伝わらない。
「ああ、そうだろうねぇ。それで?」
「とにかく、経緯がわかりませんでしたので、〈アーガイル〉をドローンに調べさせたのです。そこで陛下を見つけました」
「ああ、そういうことだったのか」
「ええ。ドローンを陛下に接触させて、経緯がわかったわけです」
時間を惜しんでいた陛下は、ドローンで城へと移動した。
ドローンに客室などない。
その触手で陛下を包み込み、空を飛んだのだ。
陛下にとっては、恐怖の体験だっただろう。
そんなドローンでの旅は、もちろん、途中までだ。
途中で、陛下を迎えに来ていた調査船と合流し、城へと帰還した。
到着すると、陛下はすぐさま軍に命令を発し、〈ヘベルカ〉軍を包囲し降伏させた。
それからオレの部下たちを呼び出し、オレのことを告げた。
テオがスエツグと連絡を取り、大師父3人がジャンプしてきた。
あとは、オレを呼び続けたわけだ。
峠を越えた、とアルが宣言し、大師父3人も太鼓判を押したので、陛下もほかのみんなも疲れから、調査船のあちこちで安心して眠りについた。
今はアルだけが、医療ドックのそばにいるだけだ。
いや、ゾフィーも、だな。
ここは彼女の腹の中なのだから。
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