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落とされ人  作者: カーブミラー


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190/248

【190.スピードウェイ・2】

続きを読んでいただき、ありがとうございます。励みになります。

 ひと月後、外洋漁船エレファントは、積荷を満載して、帰路に着く。

 そこには、ツグリ船長と船員20名が一緒に乗り込む。

 すでに軍艦スピードウェイは、海軍の水兵によって、操られる船になっていた。

 数日後には、〈ラクロア王国〉に向けて、走り出すことになっている。


 エレファント号は、途中、ひとつの孤島に立ち寄った。

「本当にこんな無人島でいいのか?」とパディントン船長。

 そこは、〈スベルト王国〉発行の地図にも無人島であることが示されているし、またポッドが落ちてくるポイントでもなかった。

「ええ」と答えるツグリ船長。「我々は、誰にも見られずに、この船を離れる必要がありますので。それに迎えの船もちゃんと来てくれますから」

「なるほど。わかった」

 ツグリ船長と船員20名は、その孤島に降り立ち、エレファント号を見送る。

 それから上陸地点を奥に入り、そこで待っていた調査船に回収された。

「お疲れ様」

「パオロ、来てたんですか」

 オレは調査船に同乗していた。

「もちろんだとも。おや」アルの顔を見て、オレは首を傾げた。「あんまりうれしそうじゃないね」

 彼は肩をすくめた。

「ええ」

「アルは」ゾフィーが答える。「楽しみがなくなって、つまらないんですよ」と言って、クスクス笑っている。

「ああ、なるほど」

 オレも笑った。

「笑わないでください。確かにそのとおりですけどね」

 船員たちも苦々しく笑った。

 どうやらアルと同意見のようだ。

 アルは、操船を楽しんでいた。

 まるで人間の船乗りのように。

「君本来の仕事をほっぽりだしていた罰だよ、アル」

 しょんぼりと肩を落とすアル。

 その姿を笑った。

「私がいなくても、仕事はゾフィーがやってくれてましたし、状況も把握してました」と彼は抗議した。

 そのとおりだ。

 今までこの惑星に落とされてきたロボットたち――SXEから派遣されて、だ――は、調査船によって、基地に連れてこられ、そこで経年劣化したその身体を補修してきた。

 まだまだそうしたロボットは待機待ちの状態でいる。

 そうしたロボットたちを置いて、アルは自分の楽しみを優先していたのだ。

「まぁ、楽しみました。しばらくは仕事に精を出すことにします」

「その方がいいだろう」

 彼は大きなため息をついた。

 それから背筋を伸ばした。

 アゴ下に両手を持っていくと、ベリベリと顔をはがしはじめた。

 ツグリ船長の変装をといたのだ。

 船員たちも同じように顔をはがすかと思ったが、そうはしない。

 どうやら彼らは変装する必要がなかったようだ。

 彼らは作業用ロボットではあったが、全員がアルと同じヒューマノイド・ボディーだった。

 そうでなければ、操船訓練での水兵との共同生活で、ロボットとバレてしまう。

 水兵たちと一緒の生活をするのだから、飲食はできなければならない。

 身長や体重、身体のスタイルなどは同じでいいとしても、同じ顔はありえないし、飲食もしないのもありえない。

 人間ならば、飲食もすれば、排泄もするだろう。

 汗をかき、髪やツメも伸びる。

 ケガをすれば血も出るだろう。

 もちろん、精密検査で透過装置にかかれば、人間でないことはすぐわかる。

 それに人工脳髄は、アルほどのものではない。

「君たちもご苦労様だったね」

「いいえ」とひとりが笑みを浮かべながら言った。「我々も楽しんでいましたので、船長の落ち込みようは理解できます」

 オレは笑った。

「なるほど。仲間がいてよかったね、アル」

 彼は肩をすくめたが、その表情は明るい。

 基地に戻ると、船員たちは本来の仕事に、アルも着替えて仕事に戻った。


読んでいただき、ありがとうございます。面白ければ、ブックマーク、評価、リアクションをお願いします。励みになりますので(汗)

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