【190.スピードウェイ・2】
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ひと月後、外洋漁船エレファントは、積荷を満載して、帰路に着く。
そこには、ツグリ船長と船員20名が一緒に乗り込む。
すでに軍艦スピードウェイは、海軍の水兵によって、操られる船になっていた。
数日後には、〈ラクロア王国〉に向けて、走り出すことになっている。
エレファント号は、途中、ひとつの孤島に立ち寄った。
「本当にこんな無人島でいいのか?」とパディントン船長。
そこは、〈スベルト王国〉発行の地図にも無人島であることが示されているし、またポッドが落ちてくるポイントでもなかった。
「ええ」と答えるツグリ船長。「我々は、誰にも見られずに、この船を離れる必要がありますので。それに迎えの船もちゃんと来てくれますから」
「なるほど。わかった」
ツグリ船長と船員20名は、その孤島に降り立ち、エレファント号を見送る。
それから上陸地点を奥に入り、そこで待っていた調査船に回収された。
「お疲れ様」
「パオロ、来てたんですか」
オレは調査船に同乗していた。
「もちろんだとも。おや」アルの顔を見て、オレは首を傾げた。「あんまりうれしそうじゃないね」
彼は肩をすくめた。
「ええ」
「アルは」ゾフィーが答える。「楽しみがなくなって、つまらないんですよ」と言って、クスクス笑っている。
「ああ、なるほど」
オレも笑った。
「笑わないでください。確かにそのとおりですけどね」
船員たちも苦々しく笑った。
どうやらアルと同意見のようだ。
アルは、操船を楽しんでいた。
まるで人間の船乗りのように。
「君本来の仕事をほっぽりだしていた罰だよ、アル」
しょんぼりと肩を落とすアル。
その姿を笑った。
「私がいなくても、仕事はゾフィーがやってくれてましたし、状況も把握してました」と彼は抗議した。
そのとおりだ。
今までこの惑星に落とされてきたロボットたち――SXEから派遣されて、だ――は、調査船によって、基地に連れてこられ、そこで経年劣化したその身体を補修してきた。
まだまだそうしたロボットは待機待ちの状態でいる。
そうしたロボットたちを置いて、アルは自分の楽しみを優先していたのだ。
「まぁ、楽しみました。しばらくは仕事に精を出すことにします」
「その方がいいだろう」
彼は大きなため息をついた。
それから背筋を伸ばした。
アゴ下に両手を持っていくと、ベリベリと顔をはがしはじめた。
ツグリ船長の変装をといたのだ。
船員たちも同じように顔をはがすかと思ったが、そうはしない。
どうやら彼らは変装する必要がなかったようだ。
彼らは作業用ロボットではあったが、全員がアルと同じヒューマノイド・ボディーだった。
そうでなければ、操船訓練での水兵との共同生活で、ロボットとバレてしまう。
水兵たちと一緒の生活をするのだから、飲食はできなければならない。
身長や体重、身体のスタイルなどは同じでいいとしても、同じ顔はありえないし、飲食もしないのもありえない。
人間ならば、飲食もすれば、排泄もするだろう。
汗をかき、髪やツメも伸びる。
ケガをすれば血も出るだろう。
もちろん、精密検査で透過装置にかかれば、人間でないことはすぐわかる。
それに人工脳髄は、アルほどのものではない。
「君たちもご苦労様だったね」
「いいえ」とひとりが笑みを浮かべながら言った。「我々も楽しんでいましたので、船長の落ち込みようは理解できます」
オレは笑った。
「なるほど。仲間がいてよかったね、アル」
彼は肩をすくめたが、その表情は明るい。
基地に戻ると、船員たちは本来の仕事に、アルも着替えて仕事に戻った。
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