【188.密漁被害】
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「被害は減っていないそうだ」
陛下は、オレを呼び出して、そう言った。
陛下の部屋の庭園での昼食に呼ばれたのだが。
「被害?」
「アーガイル・フォックスのことだ」
「ああ」
テーブルには、三つの席。
陛下とオレと、アーガイル・フォックスのサリー。
「昨夜もやられた、と言ってきた」
「陛下の御触れも効力なしですか」
「うむ」
食卓には、料理が並べられていく。
サリーの前には、すでに山盛りの皿が置かれているが、彼女は行儀よくして待っている。
もしかしたら気落ちしているのかもしれない、陛下と同じように。
「陛下、そんなに落ち込まないでください。次の手を考えてありますので」
陛下が顔を上げた。
「次の手?」
「はい」と笑みを見せた。「アルに手伝ってもらいますが」
「どんな手だ? こちらからの手が必要ならば――」
それ以上を手で制した。
「必要ありません。アル配下の作業員で充分でしょう。まぁ、多少時間がかかるかもしれませんが」
「どのくらいの時間が?」
「まぁ、3日もあれば、と思っています。まずは、アルに相談しなければなりませんが」
実際には、ゾフィーに相談することになるのだが、陛下にはまだゾフィーのことを話していない。
陛下は、オレから次の手を聞くと、元気になり、昼食を食べはじめた。
サリーもだ。
オレもゆっくりと昼食にありついた。
昼食後、室長に早退を願い出た。
仕事は順調だし、急ぎでもない。
室長は理由も聞かずに、許可してくれた。
自分の部屋に戻り、寝室から調査船に跳んだ。
「いらっしゃい、パオロ」
壁のスクリーンにゾフィーが現れた。
彼女にはすでに、訪ねることを教えてあった。
軽い挨拶をして、コントロールルームへと入る。
ゾフィーがホロ映像となって立っていた。
シートのひとつに座る。
彼女もホロの中でイスに座った。
「それで?」
「アーガイル・フォックスの被害が減っていないそうだ。そこで君の力を借りて、対応したい」
「聞かせて。それ次第よ」
次の手を話すと、彼女は必要な手を打ってくれた。
ナノマシンがドローンによって散布される。
散布場所は、〈アーガイル〉周辺地域だ。
その近くの村々には、オレが装置を配り歩く。
土壌にまかれたナノマシンは、その上を何かが移動すると、装置に信号を送る。
装置は送られてきた信号を解析して、人間であれば、画面にその位置を表示する。
これにより、密漁されるより前に、侵入者を発見できるようになるわけだ。
動物などには反応しない。
反応していたら警告にはならないだろう。
数日後。
連絡が入った。
侵入者が現れ、捕らえられた、と。
吹き矢やナイフなどの密漁道具を持っていて、すぐに密猟者だとわかった。
密猟者は有無を言わさずに、証拠とともに軍に引き渡された。
密猟は保護動物に対する虐待となり、重罪犯として、刑務所直行だ。
これも陛下が出した御触れに書かれていた。
それをわかってて密漁しようとしたのだから、身から出た錆だ。
その後も密猟者は発見され、逮捕された。
また、逮捕した密猟者から、どこの出身なのかを白状させることができた。
そのおかげで、その地域をドローンやナノマシンで重点的に調査して、密漁されてきたアーガイル・フォックスの毛皮を発見できた。
そこに軍の兵士が乗り込み、すべての毛皮を没収し、密漁実行犯が特定され、連行された。
侵入者はほぼいなくなり、密漁被害もなくなった。
「これで安心していられる。ありがとう、パオロ」
陛下は満面の笑みだ。
「その笑顔だけで充分です、陛下」
サリーもオレの手に前足をのせて、(ありがとう)とうれしそうに念を送ってきた。
(礼にはおよばない。友人を助けただけだ)
彼女は感謝の念を送ってきた。
それだけで充分だ。
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