【181.〈アーガイル〉・3】
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軍からの連絡が、評議会会議室にもたらされた。
それは、〈アーガイル〉との国境に駐留していた部隊からの通信だった。
その部隊は、進軍したわけではなく、国境警備にあたっているだけの隊だ。
「内容は?」と陛下。
「はい。〈アーガイル〉に侵入した諜報員からで、〈アーガイル〉側が代表者と話をしたい、とのことです」と伝令。
「諜報員を送り込んだのは」と議長。「確か、二日前だったはずだ。それがこんなに早く?」
「あそこは事前に侵入を試みてきましたが」と評議会のひとり。「誰も帰ってきていません。それなのに今回は諜報員を送り返してきた。何か意図がありそうですね」
「どんな?」
陛下の問いに誰もが首を振る。
伝令に向きなおる陛下。
「ほかには?」
「それだけです」
「ここと諜報員との通信を開くように」
「わかりました」
そうして、諜報員との通信が行なわれ、詳細が伝えられた。
代表団が組織され、〈アーガイル〉国境へと、ヘリコプターで向かう。
その代表団の中には、オレもいた。
到着すると、軍の部隊が代表団の護衛のために、国境線をまたぐように前進していた。
〈アーガイル〉側には、3人の男女が見える。
その中に、先日のヨーコはいない。
アーガイル・フォックスの姿もない。
こちらの兵士たちによって、テントが張られ、その中での話し合いとなった。
〈アーガイル〉側は隣国の脅威を感じており、〈スベルト王国〉の庇護が可能かどうかを訊いてきた。
「隣国というと、どこの国ですか? どのような脅威なのでしょうか?」と代表団のひとりが問う。
「我が国の周辺国です」と〈アーガイル〉側の代表のひとり。「我が国に侵入し、我々の財産を奪っていくのです」
「財産?」
「そちらでは、“アーガイル・フォックス”と呼ばれているとか」
代表団の誰もが視線を交わす。
誰も知らないのだ。
そこでオレが説明した。
「“アーガイル・フォックス”というのは、こちらの動物で、その毛皮はスベルト・シルクのようだ、と言われています。〈スベルト〉に来られた領主の奥方が襟巻きにしていました」
〈アーガイル〉側の全員が、表情に嫌悪感をあらわにする。
「その動物が奪われている、と?」
「はい。我々にとっては、とても大切な動物なのです」
「ペットなのですか?」
「いいえ。ですが、家族同様と言ってもいいでしょう。我々の歴史と密接に関わってもいます」
“家族同様”、これはオレが考えて出した理由だ。
本当の理由を言っても、代表団の誰も信じないだろう。
それにウソでもないし。
「なるほど」
「侵入者に気付ければいいのですが」と首を振る。
「それで〈スベルト〉に庇護を?」
「はい。〈アーガイル〉領土全域を保護してもらいたいのです。鳥獣保護区として」
「人的被害は?」
「多少。銃を携帯している侵入者は少ないのですが、毒のついた吹き矢を使っていますので、それが致命傷となります」
「その吹き矢で、その動物を?」
「ええ。銃や弓矢だと毛皮に穴を開けてしまうので、価値が下がるのだとか」
「ああ、なるほど」
「どうでしょうか? このままでは、家族同然に思っている動物が減っていくのを、手をこまねいているしかないのですが」
こちら側の代表団は、誰もが困惑していた。
まさかそんな話になるとは考えていなかったのだ。
そこでオレが口を開く。
「そちらとしては、〈スベルト王国〉への併合も視野に入れておいでなのでしょうか?」
〈アーガイル〉側の3人ともがうなずいた。
「それが必要であるならば。しかし、〈アーガイル〉内に立ち入る人間は制限せざるを得ません。双方のために」
「なるほど。その点は、考慮しなければなりませんね。そちらの経済活動の詳細をお聞かせいただけますか? それを持ち帰り、協議した上で、再度、会見を開くということでいかがでしょうか?」
「わかりました」
それで会見を終え、城へと戻り、評議会会議室で報告した。
そこからは、評議会の判断次第だ。
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