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落とされ人  作者: カーブミラー


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131/133

【131.陛下の思い・1】

続きを読んでいただき、ありがとうございます。励みになります。

 城に戻り、陛下に報告した。

「そうか。これでひと安心だな」と陛下も安堵の表情。

「はい。あのような場所があって、よかったです」

「うむ」

「今後、子どもたちはどちらで?」

「まだ決まってない。おまえが心配しなくても大丈夫だ」

「心配はしておりませんがね。ではこれで」

「ああ、パオロ」と呼び止められた。

「はい、陛下」

 陛下は、評議会の面々を見て、首を振った。

「いいや、なんでもない」

「なんでもおっしゃってください」

 オレを見つめながら、首を振る陛下。

 その目は、訴えていた。

 “この場で言えるなら言っている”と。

「わかりました。とりあえず、文化院の方に顔を出してまいります。ではこれにて失礼いたします」と一礼して、会議室から出た。

 なんなのだろうか?

 何か問題でもあるのだろうか?


 その夜、陛下の秘書が訪ねてきて「陛下がお呼びです」というのでついていくと、陛下の私室まで案内された。

 部屋に入ると、陛下は秘書にお休みを言い渡し、ふたりきりにするように言った。

 秘書は、お休みの挨拶をすると、部屋から出て、ドアを閉じた。

 陛下とふたりきりになった。

「昼間のこと、ですかな?」

 陛下は、パジャマ姿のまま、うなずいた。

「うむ。その前に、アルのところに連れていってもらえるか?」

「よろしいですが。なぜでございますか?」

「見せてもらいたいものがある」

「なんでしょう?」

「いいから早く」

 オレはまず船の状態をチェックした。

 船は、城の上空にいて、オレにあてがわれた部屋は薄暗くなっていた。

 今、船もアルも仕事らしい仕事がないので、エネルギーの使用を抑えているのだろう。

 陛下に歩み寄り、物送りの師父にお願いして、船にテレポートした。

 部屋がすぐに明るくなった。

 それからアルが走ってくる音が聞こえてきた。

 オレだけなら走ってはこない。

 陛下が一緒だから走ってくるのだ。

 そうして、アルは、部屋の入り口に片ヒザをついて頭を垂れた。

「陛下」

「アル、〈スータン〉を見せてくれ」

「はい、陛下」

 アルは、壁を指し、〈スータン〉の全球の画像を見せた。

「違う。前に見せてくれたボールのようなものだ」

「なるほど。では、コントロールルームへどうぞ。ここでは映し出せませんので」

「わかった」

 コントロールルームに入ると、部屋の照明がゆっくりと暗くなっていき、部屋の中央に〈スータン〉が浮かび上がった。

 陛下がその姿を近づいて見入る。

 惚れ惚れとしているのが、その表情からわかる。

「美しい」

「はい、陛下」

「パオロ……これをほかの人にも見せられないだろうか?」

「特別なかたでも?」

「王子や王女たちに見せてやりたい」

 御優しい。

 だが……

「残念ですが。特別な理由がない限り、ほかのかたがたをこの船にお乗せすることはできません。また、アルがさきほど申したとおり、ここでしか映し出すことができません。映し出すための装置を作るわけにもまいりません。その仕組み自体が〈スータン〉では生み出されていませんので。ですから、ほかの人にお見せすることはできません」

「そうだろうな。だが、見せてやりたいのだ」

 陛下の目は、ずっと〈スータン〉に注がれている。

 アルが耳打ちしてきた。「惑星儀をお作りになっては?」

「惑星儀?」

 その声に陛下が振り向かれた。

 オレがふつうの声で、その言葉を言ってしまったからだ。

「惑星儀とは、なんだ?」

「はぁ……陛下の見ているのは映像です。そうではなく、球体の表面にその画像を貼りつけたようなものでして、ふつうに持ち運びができます」

 アルが、〈スータン〉の映像に支持台を取り付けて見せた。

 大気の層がなくなる。

 美しさが薄れてしまった。

 陛下がそれを見て、うなずいた。

「これでもかまわぬ。作れるのか?」

「作れますが」とアル。

「では作れ」

 オレは慌てて、意見した。

「御待ちください、陛下。ここまでのものを御作りするわけにはまいりません」

「なぜだ?」

「それは〈スータン〉の外から見た姿です。つまり、宇宙から、という意味です。そのデータはこの〈スータン〉のどこにもあってはならぬもの。御分かりですか?」

 陛下は黙って、オレをにらんだ。

 それから言った。

「どうにもできぬのか?」低い声。御怒りだ。

「いいえ。アル、私が持ってきた両大陸の地図を惑星儀に貼りつけてくれ」

 陛下の前の惑星儀が地図に示された姿になる。

「これでは見せる意味がないぞ」

「御待ちを。アル、バルーンからの画像を――」

 言葉の途中で、惑星儀にそれが貼りつけられた。

 カラーになったのは、〈スベルト王国〉と周辺国だけだ。

「多少、マシになったな。南大陸は、諜報員から送られてきている画像データがあったはずだ」

 それも重ねられた。

「どうしてこの画像がここにあるのだ?」と驚く陛下。

「〈スベルト王国〉のネットにつながっております、陛下」とアル。

「そうか。しかし、画像が少ないな。もっとあると思っていたのだが」

「仕方ありますまい」とオレ。「諜報員の数も限定されておりますし、惑星儀を作るために画像を撮っているわけではないのですから」

「うむ。かといって、〈ラクロア〉に撮影を頼むとしても、向こうには画像を撮るカメラがない。今、コンピューターとともに船で送ってはいるが、それでもこちらに届くまでに時間がかかる。ううむ、何かよい手はないのか?」

「〈ラクロア王国〉にもカメラはございます。古い形のものですが。それで画像をファックスで送っていただきましょう」

「ファックス?」

「通信で画像を送る仕組みでございます。すでにその装置は送られております。実際に送受信も行なわれておりますし」

「だが、あれは白黒だぞ。それに粗い画像になってしまう」

「そこはコンピューターで色をつけ、補正すれば、それなりの画像になります。アル、どのくらいの画像を撮ればいい?」

「カメラの数が充分にあればいいのですが、それは期待できないでしょう。そうなると〈ラクロア王国〉を中心にしただけでも大変な枚数が必要になってしまいます」

「補正をかけても?」

「ええ。それに船で運んでいるカメラの台数も5台だけですし、それを使ったとしてもかなりの時間が必要になります」

「どちらにせよ、だな。ポイントを指定して、撮ってもらったとして、〈ラクロア王国〉の外縁部までのデータが揃うのは?」

「彼らのカメラが、20台だとして……それでも1年はかかります。途中で、こちらのカメラに変更したとしても、短期間だけの縮小に留まるでしょう」

「それは」と陛下。「追々、ということにしてもいいが?」

「では、今あるだけのデータ、つまり、そちらの映像の状態で作りますか」

「パオロ」とアル。「〈スベルト〉の開発済みの技術には、球体にプリントできるものはありません」

「ない? そうだったか。だが、平面に印刷は可能だな」

 惑星儀が展開して、縦に細い先細りの楕円が複数連なった地図になった。

「分割数は?」

「10度ずつの36です」

「球体に貼りつけられそうかな?」

「貼りつけたらシワが寄ってしまいますね」とほくそえむアル。

「もっと細かくするか、球体を削ることになるか」

 削った球に地図が貼りつけられ、惑星儀となって、映し出される。

 シワは寄っていない。

「陛下、とりあえずできるのは、ここまでです」

 それを見て、陛下は、唸った。

「満足はできんな。だが、仕方があるまい。これは作れるのだな?」

「〈スベルト王国〉の技術力があれば、充分に」

「では、おまえに任せるとしよう」

「確か、文化院に天文部がございましたな。あちらに御依頼されてみては?」

「私の考えだと思わせない方がいい。どこからこのような考えを持ち出したのか、問題になるかもしれん」

「ああ、なるほど。では、私から天文部に依頼してみましょう」

「そうしてくれ。アル、外から見た〈スータン〉を」

 惑星儀が、もとの映像に戻った。

 陛下の表情が、柔和になった。

「やはり、これが望ましい。この美しさを見せられまいか」

「バルーンからの映像……だけでは不充分か」

 念のため、いくつもの画像が現れた。

 そこには、バルーンからの画像が映し出されている。

「大気層の青さがない。ダメだな」

「特別なバルーンをあげれば、撮影できるはずです」とアル。

「特別な?」

「バルーンが破裂するくらいまでの上空に。およそ3万5000mですね」

「シミュレートできるかね? その位置からの眺めを」

「こちらです」

 画像が、ひとつだけになり、青い大気層のある〈スータン〉の姿に。

「おお」と陛下が喜んだ。「これだこれだ。これならば、なんとかできるのか?」

「はい、陛下」とアル。「このバルーンを必要数だけ揚げ、それを惑星儀に反映するとこうなります」

 〈スータン〉の球体が地図と画像を組み合わせた惑星儀となり、そこに特別製のバルーンから撮影された画像が組み込まれた。

 バルーンからの映像だけと違い、外洋と南大陸の一部までが、映し出されている。

 これには、オレも驚いた。

「ここまでの距離が撮影できるのか」

「ええ、パオロ。ただし、ガイドロープを張ることはできなくなります。その分の重みが邪魔となり、ここまでの高空まで達することができないからです」

「なるほど。だが、どうやって、回収するんだね? まぁ、バルーンが破裂してしまうのだから、落下してどこに落ちるかわからなくなるから使い捨てか」

「ビーコンを発信させればいいでしょう。データ送信機の代わりにメモリー上に記憶させておくだけにして」

「つまり、回収するまで、映像が撮れているかはわからないわけか」

「ええ。ですが、必ず回収できるようにしておけば、いいわけです。こちらでも追跡しておきますし」

「なるほど」

「この方がいい!」

 陛下の叫び声に、オレとアルが驚いてしまう。

「ああ、すまぬ。この惑星儀の方がいいと思うのだが」

「わかりました、陛下。まずは、特別製バルーンを揚げ、そのデータをもとに惑星儀を作成いたしましょう」

「頼む」


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