【126.相談と原因】
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数日後、船の中でアルと相談していた。
SXEの基地をどこに設営するか、決定するためにだ。
到着ポイント近辺は、人目に付きやすいし、近場の人々に影響を与えかねない。
上からの観測で見つかってしまうため、地表には設営できない。
ほかにもさまざまな要因で、候補地から外されていく。
最終的に残ったのは、海か砂漠、それと死火山。
「海に落下させたら、大波が発生するのではないか?」
「はい。宇宙空間で分離はさせますが、おそらく津波となって、惑星上を破壊するでしょう。海に設営するにしても一度、陸上に落とさなければなりませんね」
「そうなると落とすのは砂漠、設置場所は別の場所になるね」
「わかりました。落下ポイントは、砂漠の中央とします。シミュレーションも確認しておきましょう」
「その方がいいな。どんな影響が発生するか、事前に知っておければ、対処もできるだろう。運搬や設営で上に探知はされない?」
「それぞれの資材の運搬は、上空からは探知されません。設営にあたっても大丈夫です。それでも見つかる可能性はあります。ですから砂嵐を待って、運搬を開始すべきでしょう」
「砂嵐?」
「人為的に起こすことも可能ですが、あまりやりすぎるとリスクが高くなります。自然発生した砂嵐を大きくする程度の方がいいでしょう」
「なるほど。ではそれで行こう。問題は、どこに設営するかだね。SXEとしては、どこがいいと?」
「ここが」とアルは、地図上を指差した。
「死火山か。どうしてここを?」
「ここならば、地下に巨大な空間もありますし、資源の採取も比較的容易です。この船の出入りにも問題がありません。また、まわりの土地は不毛ですから、人間が入ってくることはないでしょう」
「なるほど。それで基地設営終了後のSXEからの物資の供給については?」
「それは、この船と同じように隕石として、落下させます。大気圏途中で燃え尽きたかのように見せかけ、探知されない状態で空中を移動してきます」
「よさそうだ。あとは、実行あるのみだね」
「はい……ああ、それから」
「ん? なんだね?」
「監視員たちが逃げ出した件ですが、原因がつかめました」
おや。
「それで?」
「とても珍しい鉱物によるものでした」
「鉱物? それならば、今でも地上で恐ろしいものを見ている人がいるのでは?」
「いいえ。それはありません。なぜならその鉱石自身が恐怖を発していたわけではないのです」
「どういうことかな?」
「こちらを見てください」
彼とはテーブルをはさんで座っていた。
そのテーブル上には、地図が表示されていたが、それが消え、ひとつのイラストが現れた。
「これは?」
「当時の監視員たちと囚人たちとの位置関係です」
「ふむ、それで?」
「じつは、ドローンから得られた資源調査データから、このあたりには問題の鉱石が存在していることがわかったのです。その鉱床がここにあります」
イラストの地下部分に鉱床のエリアが表示された。
そこは、ちょうど監視員たちと囚人たちとの中間地点だった。
「つまり、こう言いたいのかね? 囚人たちの恐怖がこの鉱床を通じて、監視員に伝わった、と」
「はい。ただし、伝わったのは、恐怖ではなく、恨みや嫌悪感などのマイナスの思考波だったと思われます。そして、その思念波が鉱石によって、増幅され、監視員たちに影響を与え、恐怖心を生み出した」
「なんと。そんな鉱石がそこにあったと?」
「はい。これは人類が知らない鉱石です。SXEだけが知っていたもので、知識だけがありました。まさか、この惑星にあるとは思いませんでした」
「どういうことだね? 知識だけがあったとは。その知識をどうやって知ったのかね?」
「それはわかりません。何ぶん、古い情報ですので。人類文明とは違う文明の知識だと思ってください。SXEはたまたま彼らと接触したのです」
「それを人類には知らせなかった。なぜだね?」
「彼らはすでにこの世にはいません。過去の文明なのです」
「だからといって――」
「人類に知らせるには、途方もない知識だったのです。それは創造と破壊が紙一重のものだ、とSXEでは判断したのです。SXEは人類を滅ぼすわけにはいきませんから」
「そういうことか。ああ、君たちSXEの秘密の通信方法もそこから得たんだね」
「はい」
「なるほど。その話は置いておくとしよう。私が知るべき情報ではないからな」
「ありがとうございます」
「さて、その鉱石がここにあった。囚人たちはそれと知らずにマイナスの思念波を発していた。それが鉱石によって、増幅され、監視員たちを襲った」
「はい」
「そんな鉱石があったとは。どんなものだね?」
テーブル上に画像が示された。
洞窟だった。
あたり一面、先端の尖った六角柱が所狭しと並んでいる。
「水晶?」
ふつうの水晶なら氷のように白く透明だ。
これは、金属的な青色をしている。
「その一種です。実際の鉱床をドローンで撮影しました。内部の不純物によって、色がついています。思念波がこの水晶を通ると増幅されて出ていきます」
「〈マニ教〉の力を知らねば、とても信じられんよ」
「そうでしょう」
「この水晶は、利用できるのかね?」
「どういう意味でしょうか?」
「思念波を増幅するのを知っていたその文明人たちは当然、利用したのではあるまいか。その利用技術も含めて、知識が蓄えられていたはずだ」
アルは、オレをにらんだ。
だが、すぐに表情を和らげた。
「失礼。SXEに問い合わせていました。パオロに教えてもいいものか、と」
「ああ、そういうことだったか。それで?」
「はい。この鉱石は、利用方法を誤ると危険である、ということをわかっていただかねばなりません」
「監視者たちが逃げ出したことを考えると、確かに危険はあるね」
「我々SXEとしては、そうした技術の提供は、とても難しい問題なのです」
「うん、わかるよ。素直に諦めるとしよう」
「申し訳ありません、パオロ」
「いいさ」
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