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落とされ人  作者: カーブミラー


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125/127

【125.騒ぎ2】

続きを読んでいただき、ありがとうございます。励みになります。

 自室前の庭園に戻ると、まずレフティーたちに出迎えられた。

 その声を聞き、テオが出てきた。

「お帰りなさい、先生」

「ただいま。心配をかけたね」

「まぁ。それでも、必ず帰ってくる、と思ってましたから」

「ほぉ。なぜだね?」

「レフティーたちをそのままにはしないでしょ?」

「それもそうだね」

「私よりも室長やマリーンが心配していましたよ。文化院のみんなもね。それからもうひとりも」

「もうひとり?」

「ダメですよ、先生。ブロードリック中尉のことをお忘れですか?」

 額を手で打った。

 ブロードリック中尉とは、クリスのことだ。

「忘れてた。私の失踪のことは、必ず、彼女にも伝わっただろうな」

「ええ。彼女は、重要人物の捜索人員のひとりですから」

「すぐに電話するとしよう」

 部屋のコンピューターで、映話することにした。

 電話の声だけではなく、元気な姿を見せた方が安心するだろう、と思って。

 おかげで、こっぴどく叱られた。

 それから彼女は泣き出した。

 心配したんだから、と。

 すまなかった、と謝った。

 その後、マリーンにも電話して、謝った。


 夜、ジルに念を送った。

 彼女は、早朝の海岸にいた。

 仲間の女性たちも一緒だ。

 どうやら岩場にいる生物を採取しているようだ。

 昨日渡した資料を持っていて、それと見比べながら、仲間に指示を与えている。

 そこへ、オレからのおはようの挨拶。

 左右を見回すジル。

(私はそこにはいないよ、ジル。テレパシーで話しているんだ)

「テレパシー?」彼女は口も動かしている。

 まわりの仲間たちが、変に思って、ジルを見ている。

(口に出さなくていい。1時間ほどしたら、そちらに行く。大丈夫かな?)

(何か用か?)

 今度は、頭の中で答えてくれた。

 少し警戒している。

(こちらの女性が、君たちに会いたい、と言っているんだ)

(女なら歓迎だ。わかった。待っている)

(では、そのときに)と送念を終えた。


 前回同様、村外れに降り立った。

 村の入り口には、ひとりの女性が立っていた。

 おそらく、歩哨だろう。

 手には、槍を持ち、その石突きを地面につけていた。

 こちらに気付き、その槍を持ち上げると、声を上げ、仲間に客人の到着を知らせた。

 走るようにして、ジルがその歩哨のところに来て、こちらを見た。

 その眉が上がる。

 彼女の視線の先には、陛下の姿。

 3人で、入り口まで来ると、立ち止まった。

「パオロ、客人とは、その子どもか?」

「ジル、紹介しましょう。〈スベルト王国〉の女王陛下、ノーラです」

“その子どもが?”と言葉には出さないが、怪訝な表情。

 陛下はすでに経験上、相手の表情や態度から、自分がどう思われているかを察するようになっていた。

「女王が子どもでは不安であろうな、ジルとやら」

「い、いや」としどろもどろになるジル。「パオロからは、陛下の年齢について、聞いてなかったので」

「そうか。これでも13歳だ。実務もこなしている。それだけでは、不満か?」

 言葉が出ずに首を振るジル。

 陛下の態度に圧倒されているのだ。

「ジルとやら、村に入れてはもらえまいか」

 ジルと歩哨の女性は、すごすごと下がって、陛下の前を開けた。

 陛下は、それを許諾と受け取り、村へと入っていく。

 オレとアルも歩みを進めた。

 村のようすを見回す陛下。

 村の女性たちは、それぞれの仕事をしていた手を休め、陛下やオレたちを見つめている。

「ジル」と陛下は、彼女を見ずに呼んだ。

「はい、陛下」

 ジルは、陛下の前に慌てて出た。

「村にプレゼントを持ってきた。受け取ってもらえるか?」

「プレゼント、ですか?」

「受け取ってくれるな」有無を言わせぬ態度だ。

「は、はい」

「アル」

「はい、陛下」

 アルは、ジルの前に進み出ると、背中に背負っていた荷物を地面に降ろした。

 それからその荷物のフタを開ける。

 開いたフタから荷物の中身を見たジルは、思わず、それに手を伸ばし、持ち上げる。

 それが日の光をキラリと反射させた。

 それだけで村の女性たちが近寄ってきた。

 ジルは、自分の顔をそこに映して、顔を左右に振る。

 それは、手鏡だった。

 ほかの女性たちが、荷物の中身を覗き込み、それらに手をやる。

 櫛やブラシ、ほかにもいろいろとある。

 騒ぎになった。

 陛下はそれを見て、満足そうな笑みを浮かべている。

「どうだ、パオロ。女はいつでもきれいでありたいものなのだ」

「陛下の御配慮には頭が下がりますな。私には思いもつきませんでした」

「男は誰でもそうなのだ。いつも女同士で愚痴を言い合っておる」

「左様でしたか」

 その騒ぎが収まるのを待って、女性たちから話を聞いた。

 彼女たちも本当は、文明社会での生活を望んでいたが、男とは接触したくない、見るのも嫌だ、という思いがあった。

 全員がそうだというわけではない。

 そう思っているのは、一部の女性たちだけだ。

 ほかの女性たちは、恋愛もしたいし、結婚も夢見ているのだ。

「わかった」と陛下。「それぞれの思いを加味した上で、〈スベルト〉に迎えられるよう、手配いたそう」

「本当に?」とジル。

「もちろんだ。必要な接触も女性が担当できるようにしておく。そうすれば、そなたたちは男を見ることもないであろう」

「そうなれば、助かりますが」

「それでもしばらくは」とオレは続けた。「待っていただくことになります。体制作りにも時間はかかるし、何よりこちらへの迎えには、惑星の反対から来なければなりませんからね」

「ああ、そうか。それまでは、まだ男が落とされてもくるわけか」

「そういうことです。その男たちは、小屋に閉じ込めておけばいいでしょう。必ず回収しますので」

「連絡はテレパシー?」

「あはは。ジル、あなたからは使えませんね。電波を発するのも危険ですし。何かしらの方法を考えてみます」

「そうしてください」

「わかりました」


「やはり便利だな。船といい、超能力といい」

「ですが、諸刃の剣でございます」

「うむ」

 我々は、城の上空に戻ってきていた。

「我々には、まだまだ手にあまる力だな」

「そうです。状況がもっとよくなるまでは」

「いつごろになりそうだ?」

「残念ながら、陛下、我々が生きているあいだには無理でしょう」

「そうだろうな」

 陛下を居室に御戻しして、御休みの挨拶をする。

 そこからオレ自身の寝室に戻った。

 師父にお礼を言って、ベッドに横になった。


読んでいただき、ありがとうございます。面白ければ、ブックマーク、評価、リアクションをお願いします。励みになりますので(汗)

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