【125.騒ぎ2】
続きを読んでいただき、ありがとうございます。励みになります。
自室前の庭園に戻ると、まずレフティーたちに出迎えられた。
その声を聞き、テオが出てきた。
「お帰りなさい、先生」
「ただいま。心配をかけたね」
「まぁ。それでも、必ず帰ってくる、と思ってましたから」
「ほぉ。なぜだね?」
「レフティーたちをそのままにはしないでしょ?」
「それもそうだね」
「私よりも室長やマリーンが心配していましたよ。文化院のみんなもね。それからもうひとりも」
「もうひとり?」
「ダメですよ、先生。ブロードリック中尉のことをお忘れですか?」
額を手で打った。
ブロードリック中尉とは、クリスのことだ。
「忘れてた。私の失踪のことは、必ず、彼女にも伝わっただろうな」
「ええ。彼女は、重要人物の捜索人員のひとりですから」
「すぐに電話するとしよう」
部屋のコンピューターで、映話することにした。
電話の声だけではなく、元気な姿を見せた方が安心するだろう、と思って。
おかげで、こっぴどく叱られた。
それから彼女は泣き出した。
心配したんだから、と。
すまなかった、と謝った。
その後、マリーンにも電話して、謝った。
夜、ジルに念を送った。
彼女は、早朝の海岸にいた。
仲間の女性たちも一緒だ。
どうやら岩場にいる生物を採取しているようだ。
昨日渡した資料を持っていて、それと見比べながら、仲間に指示を与えている。
そこへ、オレからのおはようの挨拶。
左右を見回すジル。
(私はそこにはいないよ、ジル。テレパシーで話しているんだ)
「テレパシー?」彼女は口も動かしている。
まわりの仲間たちが、変に思って、ジルを見ている。
(口に出さなくていい。1時間ほどしたら、そちらに行く。大丈夫かな?)
(何か用か?)
今度は、頭の中で答えてくれた。
少し警戒している。
(こちらの女性が、君たちに会いたい、と言っているんだ)
(女なら歓迎だ。わかった。待っている)
(では、そのときに)と送念を終えた。
前回同様、村外れに降り立った。
村の入り口には、ひとりの女性が立っていた。
おそらく、歩哨だろう。
手には、槍を持ち、その石突きを地面につけていた。
こちらに気付き、その槍を持ち上げると、声を上げ、仲間に客人の到着を知らせた。
走るようにして、ジルがその歩哨のところに来て、こちらを見た。
その眉が上がる。
彼女の視線の先には、陛下の姿。
3人で、入り口まで来ると、立ち止まった。
「パオロ、客人とは、その子どもか?」
「ジル、紹介しましょう。〈スベルト王国〉の女王陛下、ノーラです」
“その子どもが?”と言葉には出さないが、怪訝な表情。
陛下はすでに経験上、相手の表情や態度から、自分がどう思われているかを察するようになっていた。
「女王が子どもでは不安であろうな、ジルとやら」
「い、いや」としどろもどろになるジル。「パオロからは、陛下の年齢について、聞いてなかったので」
「そうか。これでも13歳だ。実務もこなしている。それだけでは、不満か?」
言葉が出ずに首を振るジル。
陛下の態度に圧倒されているのだ。
「ジルとやら、村に入れてはもらえまいか」
ジルと歩哨の女性は、すごすごと下がって、陛下の前を開けた。
陛下は、それを許諾と受け取り、村へと入っていく。
オレとアルも歩みを進めた。
村のようすを見回す陛下。
村の女性たちは、それぞれの仕事をしていた手を休め、陛下やオレたちを見つめている。
「ジル」と陛下は、彼女を見ずに呼んだ。
「はい、陛下」
ジルは、陛下の前に慌てて出た。
「村にプレゼントを持ってきた。受け取ってもらえるか?」
「プレゼント、ですか?」
「受け取ってくれるな」有無を言わせぬ態度だ。
「は、はい」
「アル」
「はい、陛下」
アルは、ジルの前に進み出ると、背中に背負っていた荷物を地面に降ろした。
それからその荷物のフタを開ける。
開いたフタから荷物の中身を見たジルは、思わず、それに手を伸ばし、持ち上げる。
それが日の光をキラリと反射させた。
それだけで村の女性たちが近寄ってきた。
ジルは、自分の顔をそこに映して、顔を左右に振る。
それは、手鏡だった。
ほかの女性たちが、荷物の中身を覗き込み、それらに手をやる。
櫛やブラシ、ほかにもいろいろとある。
騒ぎになった。
陛下はそれを見て、満足そうな笑みを浮かべている。
「どうだ、パオロ。女はいつでもきれいでありたいものなのだ」
「陛下の御配慮には頭が下がりますな。私には思いもつきませんでした」
「男は誰でもそうなのだ。いつも女同士で愚痴を言い合っておる」
「左様でしたか」
その騒ぎが収まるのを待って、女性たちから話を聞いた。
彼女たちも本当は、文明社会での生活を望んでいたが、男とは接触したくない、見るのも嫌だ、という思いがあった。
全員がそうだというわけではない。
そう思っているのは、一部の女性たちだけだ。
ほかの女性たちは、恋愛もしたいし、結婚も夢見ているのだ。
「わかった」と陛下。「それぞれの思いを加味した上で、〈スベルト〉に迎えられるよう、手配いたそう」
「本当に?」とジル。
「もちろんだ。必要な接触も女性が担当できるようにしておく。そうすれば、そなたたちは男を見ることもないであろう」
「そうなれば、助かりますが」
「それでもしばらくは」とオレは続けた。「待っていただくことになります。体制作りにも時間はかかるし、何よりこちらへの迎えには、惑星の反対から来なければなりませんからね」
「ああ、そうか。それまでは、まだ男が落とされてもくるわけか」
「そういうことです。その男たちは、小屋に閉じ込めておけばいいでしょう。必ず回収しますので」
「連絡はテレパシー?」
「あはは。ジル、あなたからは使えませんね。電波を発するのも危険ですし。何かしらの方法を考えてみます」
「そうしてください」
「わかりました」
「やはり便利だな。船といい、超能力といい」
「ですが、諸刃の剣でございます」
「うむ」
我々は、城の上空に戻ってきていた。
「我々には、まだまだ手にあまる力だな」
「そうです。状況がもっとよくなるまでは」
「いつごろになりそうだ?」
「残念ながら、陛下、我々が生きているあいだには無理でしょう」
「そうだろうな」
陛下を居室に御戻しして、御休みの挨拶をする。
そこからオレ自身の寝室に戻った。
師父にお礼を言って、ベッドに横になった。
読んでいただき、ありがとうございます。面白ければ、ブックマーク、評価、リアクションをお願いします。励みになりますので(汗)




