【121.文明化の町・3】
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彼らは島を〈ベルリナール〉と呼んでいた。
さすがの彼らも電子技術に関しては、それを開発する者がおらず、無線通信もできずにいることがわかった。
食材も薬も見分けるのが困難で、確実に利用できるものだけを採取していた。
つまり、この島のすべてを活用できてはいないのだった。
そこで船に戻り、ドローンを使って、〈ベルリナール〉のより詳細な情報をかき集め、そのあいだに必要な装置を作って、必要と思われる知識をオレの脳から引き出した。
引き出すための装置は、アルが作り出した。
アルのその装置は、特別なものでない限り、なんでも作り出せる。
機材でも食べ物でも。
船のライブラリーにあるものならば、それを指定すればいい。
なければ、それなりの部品データから作り、組み立てればいいだけだ。
引き出し作業は、いつもの仕事のそれよりも順調にはかどった。
ページをめくり、イメージを出すだけで済んだからだ。
微調整は、船の人工脳髄がやってくれた。
OCRもやってくれた。
ドローンたちが戻ってきて、島の情報が集約され、そこから飲食可能な食物、治療に役立つものを探し出し、島の地図を作り上げた。
それとともにそれらの見分け方や利用方法を記した冊子を数部用意。
通信機――〈スベルト王国〉で作られているものと同等なレベルだ――も作った。
「パオロ、彼が目覚めました」
「彼?」
作業が終わってから、夕食をしていた。
「ポッドに閉じ込められていた彼です」
「ああ、治療中の。それでどうかね?」
「意識があり、はっきりしつつあります」
「では、食事を終えてからの方が良さそうだね」
医療ドックの中の彼の顔を見る。
まだ青白さは残っているものの、少しずつ体調が戻ってきているのが、ホオの赤みでわかる。
彼がこちらを見上げている。
年齢は、30代だろうか?
スキンヘッドで、目はブルーとグレーの中間だ。
「どうかね? 身体の調子は」
「ここは?」
医療ドックの中には、外の音声が届くようになっている。
「船の中だよ。君は惑星〈スータン〉に落とされたんだ。だが、ポッドから出るに出れなくて、飲食もできずに衰弱していた」
軽くうなずく。
「そうだった。私は、ステーションに到着すると、ロボットに着替えさせられ、ポッドに押し込まれるようにして、乗せられた。閉じ込められて、衝撃があった。すぐに眠くなって。気がついたら暗闇の中だった。いや、目の前に文章が見てとれたが、その指示に従おうとしても、どうにもならなかった」
「わかるよ。あなたは低重力環境の人だね。どこから?」
「〈エルタ星系〉だ。そこの小惑星帯にいたんだが、禁止薬物を輸入したんで捕まったんだ」
「なるほど。ここは、ほぼ1Gだが、君にとってはつらいだろう?」
また軽いうなずき。
「かといって、〈スータン〉からは出られないし」
「パオロ」とアル。「彼には、ここの重力下でも耐えられるような処置を施しているところです」
「耐えられるような?」
「はい。彼の全身に対して、ナノマシンを使い、重力に抗う力を強化しています。それでも自力で立ち上がる程度でしかないため、機械による補助を必要とするでしょうが」
「なるほど。〈スベルト〉でもそうした機械は手に入る。悪くはないな。しばらくは慣れるのに苦労するかもしれないが」
「動けるんならそれでいい」と彼。「ベッドに寝たきりなんて嫌だからな」
「そうだね。ところで、何か特技はあるかね? 仕事をもらって、働かなくてはいけないんだが。特別な知識があれば、それだけでも」
「特別な、か」
しばらく考えていたが、頭を振った。
「ないな。親の遺産でのうのうと暮らしてきただけだから。何冊か、小説を書いてたくらいだ」
「小説? どんな?」
「大衆娯楽作品だよ」
「失礼ですが、お名前を伺っても?」とアル。
「申し遅れた。ハウザー・マジスンだ」
「こちらこそ、パオロとアルだ。ラストネームはわけがあって言えないんだ」
「OKだ」
アルが、沈黙している。
「どうしたね? アル」
すぐに我に返るアル。
「失礼いたしました。ミスター・マジスン、あなたは有名な作家ですね。現在までに26冊の本を出していらっしゃる」
「なんと」
「もうそんなに書いてたか。10冊くらいまでは数えていたが、次から次へと書いていたから、途中から数えるのをやめたんだ」
「ならば、こちらでも書き続ければいい。良質な娯楽作品は少なくてね。趣味程度のものでも売れてしまうんだ」
「つまり、作家でも仕事になると?」
オレは笑顔でうなずいて、答えた。
「ありがたいな」
「ありがたいのは、こちらだよ」
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