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落とされ人  作者: カーブミラー


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120/127

【120.文明化の町・2】

続きを読んでいただき、ありがとうございます。励みになります。

 詰め所で警官と話をしていた。

 そのあいだに出されたのは、きれいな水だった。

 訊くと、地下水なのだそうだ。

 それを汲み上げているらしい。


 お昼。

 連絡がいったのだろう、ひとりの女性が詰め所に現れた。

 年齢は、30代後半か。

 赤く長い髪を後ろで束ねている。

 小顔の色白美人だ。

 瞳は、濃い青。

「ナンシー・ジェファーソンです。よろしく」

 彼女の三輪車に同乗すると、そう名乗ってくれた。

 顔は変えているが、名前までは変えなくてもいいだろう。

「パオロとアルです」

 三輪車は、4人乗りだった。

 彼女が運転し、我々は後部座席に収まった。

「これから庁舎に向かいます」

「そちらでどなたと面会を?」

「評議会の面々と会っていただきます。彼らがこの島の代表になります」


 庁舎は、港のそばのビルの中だった。

 そこから港のようすがよくわかる。

 どうやら漁の釣果は上々だったようだ。

 威勢のいい掛け声がまだ続いている。

 ビルの中は、庁舎職員が忙しそうに働いていた。

 最上階の部屋に通される。

 そこには、すでにそれらしいメンバーが6人集まっていた。

 ナンシーさんは、オレたちふたりを空いている席に座らせ、自分も席に落ち着いた。

 彼女の席は、メンバーの並びだ。

 とすると彼女も評議会のメンバーなのか?

 中央の男性が言葉を発した。

「この島に住みたいとか」

「はい」と答える。「落とされた場所は、規則ばかりでしてね」

「聞きました。となりの島から逃げ出した人は初めてですよ。とは言ってもとなりの島のことは何ひとつ知りませんが」それを気にしているようすはない。

「最近」とそのとなりの女性。「落とされたのですか?」

「はい。つい先日。まさか、上で人が殺されているとは知りませんでした」

「そうですね。先日は少なかったようですが。それがあそこでの日常なのでしょう」

「ところで、こちらは文明化が進んでいるようですが、建物は以前からあったんですか? 動力付き車両も」

「いいえ」と別の男性。「我々の知っている知識を集約して、作り上げました」

「すごいですね。となりの島では、未開人の生活だというのに」

「そうでしょうね。ここは、自然の恵みもありますし、資源も豊富でした。そして、落とされてきた人間の多くがさまざまな知識を持っていました。各種の加工技術を持った人間もいました」

「最初は、大変だったそうです」と別の女性。「ここで生活するための道具作りから、はじめねばならなかったと」

「そうでしょうね。おそらく、動物や魚を得るための道具、それに草木を切るための道具、ほかにもたくさんの道具が必要だったはずです」

「はい。火を起こし、その火で金属を溶かすためにも道具が必要でした」

 オレはうなずいた。

「ですが」と中央の男性。「それを可能にしたのは、ひとりの男の登場でした」

「ひとりの男?」

「ええ。彼は、知識を集め、必要な技術を持った人間に必要なものを作らせ、組み上げていったのです。彼がいなければ、我々は今も未開人のままだったでしょう」

 評議会全員がうなずいた。

 〈スベルト〉の先王のような人がいたのか。

「尊敬されているのですね、そのかたを」

「もちろんです。彼なしでは、今の我々はありませんから。まだまだ必要な技術がありますが、それもいずれ作り出すことができるでしょう」

「なるほど」

 オレは、彼らの前で、思案した。

 それからこう言った。

「大きな国に属する気はありませんか?」

 評議会メンバー全員が怪訝な顔になった。

「どういう意味でしょう?」と中央の男性。

「じつは、私ども、先日、落とされたのではありません。もう1年以上前に落とされたのです」

「しかし、その格好は」

「これは、似せて作っただけです」もちろん、アルに作ってもらったのだが。「生分解性はありません。この惑星〈スータン〉には、多くの国が存在しています。それらの多くはいまだに未開人に近い生活水準です。しかし、南北の両大陸には、それぞれに大国があり、そこではそれぞれの文明化が成し遂げられています」

「どのくらいの?」

「ひとつは、南大陸の〈ラクロア王国〉です。こちらは蒸気機関が多く使われています。もうひとつは、北大陸の〈スベルト王国〉。こちらは、ジェット機もコンピューターも開発されています」

「コンピューター!?」と全員が腰を浮かした。

 さすがにそこまでの電子技術は作り出せていないようだ。

「ええ。〈ラクロア王国〉にも計算機はありますが、電子機器ではありません。スチームモーターで動かす機械式です」

「機械式……ああ、なるほど、聞いたことがあります。実物が存在するとは」

「もちろん、ほかの一般技術も。食料に関しても検査され、危険性の有無が調べられ、安心して調理することができています。同じように薬も」

 評議会メンバーは、全員が唖然としていて、誰もが口をパクパクさせたが、言葉が出てこない。

 そこで地図を取り出して、テーブルに広げた。

 彼らが立ち上がって、テーブルに乗り出すように地図を見た。

 その地図は、オレが持ってきたもので、新たに見つかったポイント7ヵ所も加えてある。

「この地図は、〈スベルト王国〉と〈ラクロア王国〉が作成した地図をベースにしたものです。ポッドの着陸ポイントやその他の情報が書き込まれています」

「我々はどこに位置しているのですか?」とひとりの男性。

「ここです」と指差す。

 そこには、両大陸の中間点で、着陸ポイントが記されているだけだった。

「どちらの王国もこのポイントを把握していません。ですので、この島の情報がひとつもないのです」

「あなたがたは、どうやって、知ったのですか?」

「調査船で来ました。この島を発見し、上空に無人機を飛ばして調査したのです。それでこちらを知りました。我々は小型船に乗ってこちらに。あなたがたと話すために」

「話というと?」

「どちらかの大国に属する気がないか、と」

「それを選べ、と?」

「どちらを選んでもいずれ双方の生活水準は同程度になります。現在、その方向で調整中です。通信は無線だけですが、いずれグラスファイバーで両大陸を結ぶことになれば、さまざまな情報が行き来します。ですからどちらに属してもいいと思います。ただ、どちらを選ぶにしろ、すぐにそうなるわけではありません。連絡を取ったとしても外洋船でもひと月はかかるはずです」

「あなたがたは」と中央の男性。「どちらに属していらっしゃるので?」

「私たちは、両国の共同プロジェクトに参加している者です。つまり、両国に属しています」

 その後、両国の詳細を話した。

 彼らは、さらに質問をしてきたので、それに答えた。


読んでいただき、ありがとうございます。面白ければ、ブックマーク、評価、リアクションをお願いします。励みになりますので(汗)

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