【120.文明化の町・2】
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詰め所で警官と話をしていた。
そのあいだに出されたのは、きれいな水だった。
訊くと、地下水なのだそうだ。
それを汲み上げているらしい。
お昼。
連絡がいったのだろう、ひとりの女性が詰め所に現れた。
年齢は、30代後半か。
赤く長い髪を後ろで束ねている。
小顔の色白美人だ。
瞳は、濃い青。
「ナンシー・ジェファーソンです。よろしく」
彼女の三輪車に同乗すると、そう名乗ってくれた。
顔は変えているが、名前までは変えなくてもいいだろう。
「パオロとアルです」
三輪車は、4人乗りだった。
彼女が運転し、我々は後部座席に収まった。
「これから庁舎に向かいます」
「そちらでどなたと面会を?」
「評議会の面々と会っていただきます。彼らがこの島の代表になります」
庁舎は、港のそばのビルの中だった。
そこから港のようすがよくわかる。
どうやら漁の釣果は上々だったようだ。
威勢のいい掛け声がまだ続いている。
ビルの中は、庁舎職員が忙しそうに働いていた。
最上階の部屋に通される。
そこには、すでにそれらしいメンバーが6人集まっていた。
ナンシーさんは、オレたちふたりを空いている席に座らせ、自分も席に落ち着いた。
彼女の席は、メンバーの並びだ。
とすると彼女も評議会のメンバーなのか?
中央の男性が言葉を発した。
「この島に住みたいとか」
「はい」と答える。「落とされた場所は、規則ばかりでしてね」
「聞きました。となりの島から逃げ出した人は初めてですよ。とは言ってもとなりの島のことは何ひとつ知りませんが」それを気にしているようすはない。
「最近」とそのとなりの女性。「落とされたのですか?」
「はい。つい先日。まさか、上で人が殺されているとは知りませんでした」
「そうですね。先日は少なかったようですが。それがあそこでの日常なのでしょう」
「ところで、こちらは文明化が進んでいるようですが、建物は以前からあったんですか? 動力付き車両も」
「いいえ」と別の男性。「我々の知っている知識を集約して、作り上げました」
「すごいですね。となりの島では、未開人の生活だというのに」
「そうでしょうね。ここは、自然の恵みもありますし、資源も豊富でした。そして、落とされてきた人間の多くがさまざまな知識を持っていました。各種の加工技術を持った人間もいました」
「最初は、大変だったそうです」と別の女性。「ここで生活するための道具作りから、はじめねばならなかったと」
「そうでしょうね。おそらく、動物や魚を得るための道具、それに草木を切るための道具、ほかにもたくさんの道具が必要だったはずです」
「はい。火を起こし、その火で金属を溶かすためにも道具が必要でした」
オレはうなずいた。
「ですが」と中央の男性。「それを可能にしたのは、ひとりの男の登場でした」
「ひとりの男?」
「ええ。彼は、知識を集め、必要な技術を持った人間に必要なものを作らせ、組み上げていったのです。彼がいなければ、我々は今も未開人のままだったでしょう」
評議会全員がうなずいた。
〈スベルト〉の先王のような人がいたのか。
「尊敬されているのですね、そのかたを」
「もちろんです。彼なしでは、今の我々はありませんから。まだまだ必要な技術がありますが、それもいずれ作り出すことができるでしょう」
「なるほど」
オレは、彼らの前で、思案した。
それからこう言った。
「大きな国に属する気はありませんか?」
評議会メンバー全員が怪訝な顔になった。
「どういう意味でしょう?」と中央の男性。
「じつは、私ども、先日、落とされたのではありません。もう1年以上前に落とされたのです」
「しかし、その格好は」
「これは、似せて作っただけです」もちろん、アルに作ってもらったのだが。「生分解性はありません。この惑星〈スータン〉には、多くの国が存在しています。それらの多くはいまだに未開人に近い生活水準です。しかし、南北の両大陸には、それぞれに大国があり、そこではそれぞれの文明化が成し遂げられています」
「どのくらいの?」
「ひとつは、南大陸の〈ラクロア王国〉です。こちらは蒸気機関が多く使われています。もうひとつは、北大陸の〈スベルト王国〉。こちらは、ジェット機もコンピューターも開発されています」
「コンピューター!?」と全員が腰を浮かした。
さすがにそこまでの電子技術は作り出せていないようだ。
「ええ。〈ラクロア王国〉にも計算機はありますが、電子機器ではありません。スチームモーターで動かす機械式です」
「機械式……ああ、なるほど、聞いたことがあります。実物が存在するとは」
「もちろん、ほかの一般技術も。食料に関しても検査され、危険性の有無が調べられ、安心して調理することができています。同じように薬も」
評議会メンバーは、全員が唖然としていて、誰もが口をパクパクさせたが、言葉が出てこない。
そこで地図を取り出して、テーブルに広げた。
彼らが立ち上がって、テーブルに乗り出すように地図を見た。
その地図は、オレが持ってきたもので、新たに見つかったポイント7ヵ所も加えてある。
「この地図は、〈スベルト王国〉と〈ラクロア王国〉が作成した地図をベースにしたものです。ポッドの着陸ポイントやその他の情報が書き込まれています」
「我々はどこに位置しているのですか?」とひとりの男性。
「ここです」と指差す。
そこには、両大陸の中間点で、着陸ポイントが記されているだけだった。
「どちらの王国もこのポイントを把握していません。ですので、この島の情報がひとつもないのです」
「あなたがたは、どうやって、知ったのですか?」
「調査船で来ました。この島を発見し、上空に無人機を飛ばして調査したのです。それでこちらを知りました。我々は小型船に乗ってこちらに。あなたがたと話すために」
「話というと?」
「どちらかの大国に属する気がないか、と」
「それを選べ、と?」
「どちらを選んでもいずれ双方の生活水準は同程度になります。現在、その方向で調整中です。通信は無線だけですが、いずれグラスファイバーで両大陸を結ぶことになれば、さまざまな情報が行き来します。ですからどちらに属してもいいと思います。ただ、どちらを選ぶにしろ、すぐにそうなるわけではありません。連絡を取ったとしても外洋船でもひと月はかかるはずです」
「あなたがたは」と中央の男性。「どちらに属していらっしゃるので?」
「私たちは、両国の共同プロジェクトに参加している者です。つまり、両国に属しています」
その後、両国の詳細を話した。
彼らは、さらに質問をしてきたので、それに答えた。
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