【119.文明化の町・1】
続きを読んでいただき、ありがとうございます。励みになります。
その町の外れに船は停止した。
アルとともに降りる。
外は朝だった。
オレは、アルに言って、仮面を作ってもらい、顔にかぶった。
仮面といっても人工皮膚でできた人間の顔だ。
それを自分の顔に押し付けると、密着して、簡単にははがれない。
「まさか、〈スベルト〉にいるはずの人間が、こんな場所に来ているなどと知られるわけにはいかないからな」
そう言い訳したのだが、アルはたいして気にも留めていなかった。
服装も〈落とされ人〉の格好にした。
船を振り返る。
そこには何も見えなかった。
「本当にわからないな」
「物がぶつからない限り、わからないと思います。鳥のような動物がぶつかることはあるでしょうね」
「なるほど、見えないからか」
「はい」
ふたりで、朝の町を歩く。
港の方が騒がしい。
漁に出ていた船が戻ってきたのだとわかっていた。
水揚げは、上々だろうか?
公園に着いた。
遊具があり、花壇があり、ベンチがある。
ふたりして、ベンチに座って、朝の町を眺める。
持ってきた朝食をふたりで食べはじめた。
アルは食べる必要はないが、オレひとりで食べているのは不自然なので、そう指示したのだ。
食べ終わるころに、警官らしき男性が、公園入り口に現れた。
こちらに気付いて、近づいてきた。
腰の後ろに手をまわしている。
武器に手をかけたのだろう。
こちらふたりは、武装はしていない。
少なくとも見える範囲には。
「見かけない顔だね」と警官が声をかけてきた。
「ええ。こちらの警察のかたですか?」
「そうだ。どこから来たね?」
「となりの島から。夜のうちに」
「船でかね?」
「ええ。こちらは、ずいぶんと文明化が進んでいますね。ふたりとも驚いている最中です」
「にしては、落ち着いて朝食を食べてたようだが?」
「やっと腰を落ち着けたので。できれば、ここのお偉いさんに会いたいのですが」
「偉い人に会って、どうするんだね?」
警官は、腰の後ろにやった手をまだ戻していない。
警戒し続けているのだ。
「ここの住民になれればと」
「となりの島から逃げ出してきたのか」
「そういうことです」
「何をやった?」
「何も。落とされたら、あそこがただ規則ばっかりでして。それが嫌で逃げ出してきたんです」
「なるほどな。まぁ、いい。一緒に来てくれ。詰め所でゆっくりと話を聞こう」
その警官のあとについていき、“詰め所”と呼ばれるところにいった。
そこは、とあるビルの1階だった。
商店街の一角だ。
商店街はまだ開かれてはいない。
中に入る。
そこには、もうひとりの警官。
「ご苦労様です」と声をかけた。
「〈落とされ人〉か」と彼。
「となりの島から逃げ出してきたんだとさ。規則が嫌で」と最初の警官。
「ここにも規則はあるんだがな」と彼は軽く笑った。
読んでいただき、ありがとうございます。面白ければ、ブックマーク、評価、リアクションをお願いします。励みになりますので(汗)




