【107.SXEの依頼】
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晴れの日が続き、雪が溶けていく。
春の訪れももうすぐだ。
南の方では、すでに狩りがはじまっているとか。
冬眠していた動物たちが、起きだして、まだ少ないエサを探し出ているのだ。
春か。
ふと、あの渡り竜、レフティーを思い出した。
今ごろ、どうしているだろうか?
仲間たちと合流できたのだろうか?
意識を彼女に向けて集中してみる。
彼女のまわりには、たくさんの渡り竜の姿。
合流していたんだな。
平たい岩場は、水辺が近い。
沼か湖だろう。
対岸は、もやで見えない。
彼らの吐く息が白い。
まだまだ寒いのだ。
意識を閉ざす。
また来てくれるとうれしいが、そうもいかないだろう。
群れでの行動が基本だからだ。
それでも立ち寄ってくれるとうれしいが。
マリーンのメンテナンス費用捻出のために、クレジットをかき集め、投資をしておく。
3分割して、多少の損があってもそれを吸収できる仕組みを整えておく。
コンピューターに任せれば、いちいちこちらの手を煩わせずに済む。
多少の利益が出た場合は、口座に入れる。
これを続けていけば、多少ではあるが、クレジットを貯めることができる。
それをタネにして、何かをはじめることもできるだろう。
その何かが問題だが。
詐欺行為をするには、身体の自由が必要だ。
だが、ここでの仕事もある。
詐欺ではなく、まっとうな商売の方がいい。
あるいは、特許を取って、それを企業に売るか。
特許か。
ここの技術の中には、特許を取れるものもいくつかある。
実用新案でもいい。
調べるのにも申請するのにも売るのにも、人を雇うことになるだろう。
だが、そのくらいはなんでもない。
ここの技術をまとめられるように調査を開始した。
定期的に隠れ家のようすをチェックする。
といっても、いつもいつも物送りしてもらうのは気が引けるため、自分で遠見の術を使うことにしていた。
遠見の術は、大別してふたつあり、オレが使うのは物に念をこめておき、その周辺を見るものだ。
これは、以心伝心の術の延長能力。
だから習得には、それほどの苦労はない。
隠れ家のようすをチェックするのは、投資の状況を確認するためだ。
コンピューターのモニターは、定期的に表示されるようにしてあるので、同じタイミングで状況を確認する。
投資は順調に行なわれていた。
大きな儲けにはならないが、損はしていない。
その日も確認を終えて、意識を切り離そうと思ったのだが、映話の留守番機能がメッセージを受け取っていることに気付いた。
物送りの師父に頼んで、隠れ家に送ってもらう。
いつもいつもテムジン大師父に頼むのも気が引けるので、その師父に代わってもらったのだ。
留守番メッセージは、SXEのスーザンさんからだった。
連絡を待つ、という。
メッセージの時間を見ると、二日前だった。
本来ならば、時間帯を考えるべきだったが、オレはすぐに映話を申請した。
スーザンさんとは、ほとんど待たずにつながった。
「お待たせしてしまいましたかな? スーザンさん」
「もしかして、〈スータン〉にお戻りになられていましたか?」
「はい」
「そうでしたか。どのように超能力をお使いなのか、教えていただけませんか?」
簡単に説明する。
「というわけでして」
「なるほど」
「それでお話というのは?」
「はい。マリーンさんのメンテナンス費用のことなのですが、目処はつきましたか?」
「まぁ、それなりに」
「じつは、こちらでも検討したことがございまして。あることをしていただけましたら、費用全額を無償で行なわせていただこうかと」
おやおや。
だが、うまい話には裏がある。
注意せねば。
「どういうことでしょうか?」
「じつは、惑星〈スータン〉にロボットを送り込みたいのです」
「おや。〈スータン〉でご商売を?」
彼女が笑った。
「いいえ。〈スータン〉が植民されて、およそ250年が経ちます」
250年。
長いとも短いともいえる。
「我々SXEとしては、人類がロボットという恩恵を受けずにいることが、どのように人類に影響を与えるのか、知りたいのです」
「ふむ」
「もちろん、この250年のあいだにロボットは送り込んできました」
「おそらくセクサロイドでしょうな。人目につかないようにするのに」
うなずく彼女。
「正確には、“ヒューマノイド・ボディー”と呼ばれるタイプでして、人間と見分けがつきません。今まで彼らを送り込んできたのですが、さすがに初期の者たちは劣化が激しく、修理も必要となっており、現在は活動をやめて、隠れている状態なのです」
「それらを回収したい、と?」
「いいえ。そうではなく、修理をして、調査を続行させたいのです」
「超能力でそちらに送るのですか?」
「それもいいですね。ですが、すでにかなりの数のロボットが送り込まれておりますので、超能力での移送は無理かと思われます」
「では、どうやって?」
「〈スータン〉に修理設備を整えた基地を建設したい、と考えております」
「基地を?」
「もちろん、消耗品などの資機材を送り込まねばなりませんが、それ自体は苦労せずに送り込めるかと思います」
「どうやって?」
「小天体を落とします。その中に隠すのです」
「基地も同じように?」
「はい。ですが、かなりの大きさになってしまいますので、そのまま落とすと惑星上に被害がおよぶと思われます。そこで大気圏突入前に分離させ、確実に被害を低減いたします」
「しかし、場所は? 海ですか?」
「そのへんはまだ。何しろ、〈スータン〉の情報は限られておりますので」
「どうするんです?」
「調査船を降ろします。ステルス機です。小天体に擬装して」
「なるほど。それで私は何をすれば?」
「まずは、その調査船に同乗していただけたらと」
「どうしてですか?」
「基地建設のための立地条件を一から調べ上げるのは時間がかかります。事前にできるだけの情報があれば、それだけ早い設置が行なえます。お手伝い願いませんでしょうか?」
「こちらの予定に合わせていただけますか? 仕事をサボるわけにもいきませんから」
「合わせますわ」
「では、こちらもそれなりの情報をまとめておきましょう。それでその調査船はいつ?」
「準備はすでにできていますが、出発はこれからでして、数ヵ月かかるかと」
「なるほど」
「連絡は、留守番メッセージとしておけばよろしいでしょうか?」
「そうしてください」
「わかりましたわ。それからセクサロイドのご希望はございませんか? 手配もできますが」
オレは、首を振って、答えた。「必要はありません」
「わかりました。ですが、いつでも御用命くだされば、無償提供いたしますので、その際には、お声掛けを」
「無償ですか、うれしいですね。そんな日が来るとは思いませんが」
別れを言って、映話を終了した。
寝室に戻り、パジャマに着替え、ベッドに潜り込んだ。
SXEの基地が完成したら、おそらくマリーンのメンテナンスもそこで行なうことになるのだろう。
その点は、スーザンさんに確認しなくては。
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