生きるための勇気
痛い…
痛い…
痛い…
叩かれた背中が
ジンジンと心臓の鼓動に合わせて痛む
部屋の隅で
体育座りをして
抱え込んだ膝の上におでこを乗せて丸まった
両手は左右の肩付近を強く握りしめた
一人で部屋の隅で
何にも考えずに体育座りをしているのが
楽だった
この現実から逃れられるようで
この現実から目を背けられる気がして
1階から聞こえる
親の笑い声に寒さも感じない体がガタガタと震えた
その声を聞きたくなくて
今度は耳を強く塞いだ
感情を取り戻さない方が楽だったかもしれない
「ごめんなさい…」
貴方が喜んでくれた感情を取り戻したことも
今は邪魔になってしまっている
痛いも悲しいも苦しいも
心を麻痺させてしまっていた頃と
同じように部屋の隅で体育座りをすることで
少しは楽になれるような気がした
目からは何の感情もない涙が流れ
床にポタポタと零れ落ちていった
背中の痛みを忘れたくて
親に言われたことを忘れたくて
手を伸ばせば届いたカッターを握りしめた
それを左腕に刃を当てて
左から右へと引いた
腕からも指を伝い
赤いそれが零れ落ちていく
訪れた束の間の幸せに
壁に頭をくっつけて目を閉じる
自らが作った傷が
脳内麻薬といわれるβ-エンドルフィンを分泌させている
したくてしてるわけじゃない
これがしていいことじゃないことは分かっている
それでもこの行為を続けてしまうのは
やはりこの現実から目を背ける為だった
1時間後生きるために
1週間後を生きるために
1年後を生きるために
痣や傷にまみれたこの体に
新たな傷を増やして
その脳内麻薬によってもたらされる
束の間の幸せを得ることでしか
生きるための勇気を貰うことができなかった




