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目を閉じれば  作者: さち
第3章 幾度となく訪れる暗闇へ
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生死

「はぁ…」


「どーした?」


「あ、死神さんだぁ…」


「今日は深く切ったな…(笑)

血いっぱい出てるよ」


「うん、いっぱい出てるぅ」


「よしよし」



死神さんの大きくて冷たい手が

頭を撫でてくれるのが気持ちよかった

死神さんが頭を撫でてくれたり

抱き締めたりしてくれると安心するのか

すぐに眠気が襲ってくる


「おやすみ…」


そう言った死神さんの声を最後に

暗闇へと吸い込まれた







最近は8歳の自分が現れることはなかった

その代わりに

夢の中でも死神さんが来てくれる


「あずさ、おいで…」


優しく微笑んでくれる

手を伸ばして、受け入れようとしてくれてる


「死神さん…」


「あずさ」


死神さんの膝に乗っかれば

彼は抱き締めてくれる


「あずさは辛くても苦しくても

いつも一人で抱え込んで話してくれないね?」


「そんなことないよ…」


「俺の目は誤魔化せないよ

そうやってボロボロになってく

あずさを見ていられない」


「ボロボロになんか…」


「なってるよ

あずさ自身はそう思ってないかもしれない

けどね、周りからはそう見えるんだよ

だから、あずさの所に来た」


「え…?」


「ああ、この子は

周りの人に見放されてきたんだなって

この子は変わろうとしてるのに

過去の自分を乗り越えて前に進もうとしてるのに、周りの人はそれに気づかないで

そんなんだからダメなんだよって

突き放した

だから、あずさは変わろうとしても

ダメって突き放されるから

それでも受け入れてもらえないから

どんどん絶望していった

変わろうとすることが

どれだけ大変で労力が必要なことなのか俺は知ってる」


頬を撫でられた


「あずさ、無理して生きなくていいんだよ」


「でも…」


「周りの言うことを気にしすぎ

確かに、あずさが望まない明日を

欲しがった人も大勢いる

だけど、生きてることが苦痛でしかないならいいんじゃないかな」


「いいの…?」


「あずさは十分頑張った

いい子だよ、一緒に幸せになろう?」


「うん」




二度寝をして起きても

時間はまだ朝の10時を指していた


ベランダに出てバケツに水を貯める

足がガクガクと震えるほどの寒さだったが

そんなのどうでもよかった


「よし…」


部屋との境目らへんにそのバケツを置く

自分もそこに腰掛け

カッターに思いっきり力を込めて

左から右に引く

腕をいつもよりも多く血が流れる

もう一度、もう一度

それを10回以上繰り返した

腕をバケツに突っ込んだ


ふわふわとした感覚に襲われるなか

死神さんの肩に頭を乗せる

実際、それは扉で

自分の傍にいてくれる人なんていなかった

頭を撫でられる感覚も

本当は風が吹いているだけで

体はどんどん冷えていく


「これでおわる…」


その自分が発した声とともに

意識が途切れた













「んっ…」


外はもう日が傾いてオレンジ色に染まっていた



まだ生きてる…?


バケツを見ると

薄く赤に染まっていた


腕を抜くと

血が固まっていた


「まだ死ぬにも値しないの…」


一つ二つと涙が頬を伝った


「うぅ…ふぇ…」


子どもみたいに泣くことしかできなかった











ご飯の匂いを嗅ぐだけで

吐き気に襲われる


喉が締め付けられるように苦しい

胸も圧迫されているように苦しい




こんな思いしてまで

まだ生きてなきゃいけない?

死ぬことも許されない?















新しくなった保険証が親から渡された


裏には

臓器提供意思表示の欄があった

自分がもし、脳死になったら

死んだら…



今までまわりに迷惑をかけてきたんだ

疫病神だった

だからもし自分がこうなったら

こんな自分の体でも臓器でも

必要としてくれる人がいるなら

それで生きたいと思う人を救えるならと


脳死になった場合、

臓器を提供するに◯をつけた


流石に眼球はちょっと嫌だなと思った


でも他の臓器ならいくらでも

持っていってもらって構わない




最期ぐらい誰かのためになりたい



そう思った自分は可笑しいんですか…?


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