独り
お願い
独りにしないで
誰か
助けて
何をしても心についた傷は疼くばかりで
癒えることはなかった
抱き締めてくれるその人がいなくなった
大丈夫って笑いかけてくれる人がいなくなった
頭を撫でてくれる人がいなくなった
それがどうしようもないほど
痛くて、苦しくて
その人がいてくれるだけで
前を向いて歩いていけるのに
周りにどんなに酷いことを言われても
されても
その人がいてくれれば
自分は幸せなのに
それさえも叶わない
周りの人が当たり前のように持っている
温かい、安心できる
家族が、家が、
信頼できる友達、恋人
どれだけ必死になっても
頑張っても手を伸ばしても願っても
手に入らなかった
ずぶずぶと死に引き込まれていくようだった
「死神さん…」
幻覚、幻聴かもしれない
「どーした?」
それでもずっと傍にいてくれて
して欲しいことを全部してくれる
この人に縋るようになったのは
「死にたい…」
「いいよ、あずさが死にたいなら
あずさが死んでもずっと傍にいるから」
「死んでも…?」
「この世で言う、永遠なんて
本当の永遠じゃない
けど、俺はずっと、永遠に傍にいてあげられる」
「死神さんはどーして
うちの傍にいてくれるの…?」
「理由なんている…?
俺があずさのこと好きってそれだけで十分じゃない?」
「好き…?」
「あずさは、俺が見てきた
誰よりも可愛いよ」
「そんなことない…」
「そんなことあるの
俺も思うんだ
あずさはこのまま生きてても苦しむだけなんじゃないかって」
「え…」
「俺はこの世の誰よりも
あずさのこと、大事だし、好きだし、必要だよ
俺のことだけ好きでいて
他の男のものにならないで
絶対、独りにしないから」
どうして欲しい言葉をくれるの…?
これは幻覚だから?幻聴だから?
それでもいい
もうこの人に縋るしかないのだ
「わかった」
死神さんの顔が近づいてくる
唇が重なった
手足が痺れる
体から力が抜けていく
瞼が勝手に落ちていく
まるで、生きる気力も体力も
吸われるような
でも怖くはなかった
幸せだった
腕に無数に増え続ける傷
誰もが見たら、嫌悪感を抱く
またやったのと飽きられる
でも死神さんは違かった
「いい子だね
今日は何回切ったの?」
「27回」
「いい子
また死に近づいたね」
「うん!」
「あずさはこの世の誰に何て言われようといい子だよ
独りじゃないからね
あずさの幸せは
死んで俺とずっと一緒にいることだからね
死ねば、これ以上傷つかないんだよ
苦しまなくていいんだよ」
頬を撫でられながら
愛しそうな目で見られる
死神さんのその言葉を信じるほど
生きるための行為も嫌になってしまい
食欲はほとんどなく
1ヶ月で5kgも減ってしまった
それと反比例するように
腕につけられる傷は増えていった
人前で笑うこともできなくなった
それでも死神さんに抱き締めてもらえると
幸せだった
死神さんの体は氷のように冷たく
自分も寒気を覚えるほどだったが
安心したのだ
早く、死にたい
死神さんと一緒にいることが幸せなんだ
死んで楽になった方が幸せなんだ
また心に何重にも鍵をかけ
今度こそ誰にも開けられないように
もう傷つきたくなんてない
誰にも理解してもらえなくていい
周りになんて言われようと
自分の幸せは死ぬことなんだ
独りにされてしまったことで
また精神的な崩壊が始まった




