違和感 さちside
最近、何かよく分からないけど違和感を感じる
笑顔がまたぎこちなくなったというか
妙な違和感を感じる
しかも、痩せた…?
いや、気のせいかもしれない
「あずさ!」
「あ、さちちゃん、どうしたの?」
「なんか、最近元気ないみたいだから…」
「そんなことないよ!」
正直、私もあずさのリストカットのことは知っていた
傷の数が増えていることにも薄々感づいていた
でも、それを彼女に直接言うべきではないと思った
彼女自身も周りに傷を見せないようにわざわざ気を使っているからこそ
リストバンドをしたり、夏服でもずっとカーディガンを羽織っているのだと思う
それをわざわざ指摘するなんて、
彼女を傷つけることになるのではないかと不安になり
口にすることはできなかった
「そっか!ごめんね、変なこと聞いちゃって(笑)」
「んーん、こっちこそ心配してくれてありがとう」
「何かあったら頼ってね」
「ありがとう」
そうは言ったけど
彼女は本当に頼ってくれるのかな
そういえば、あずさが誰かに相談をしているのを見たことも聞いたこともない気がした
あんなに腕が傷だらけになるほど苦しんでいるはずなのに
どうして誰にも頼らないのかな?
…違う、頼れないのかもしれない
だとしたら、その原因は何?
私はそこまで彼女の中に踏み込んでいいの?
それで、さらにあの子を傷つけてしまったら?
「絶対痩せたでしょ~」
彼女はまた違う人と話していた
やっぱり、痩せたよな
彼女はまた「そんなことないよ~」と言っているが
元々痩せていたその体は更に細くなったような気がして
まるで目を離せばすぐにいなくなってしまうような
そんな雰囲気が漂っていた
何を抱えているの?
どうしてそんなに無理してまで笑ってるの?
「やっぱり、あずさちゃんの髪の毛綺麗だよね!
真っすぐだし、羨ましいー!」
腰まであるその髪も
その長さにしてはほとんど痛んでいない
しかも、染めていないのにも関わらず
栗色の髪の毛
女の子なら誰もが羨ましいと思うものを彼女は持っていた
その幼さを含んだ可愛い顔も
誰に対しても平等に優しく出来るところも
後ろから抱きしめてみた
「きゃっ…」
彼女はやはり驚いたようで変な声が出た
「なに、その声ー(笑)」
「いきなり抱きついてくるからだよー
もー、本当にびっくりしたー」
「この、このー」
細いわりにきちんとあるその胸を掴んだ
「さちちゃん!そこはダメだよー」
「意外とあるー!エロい体してんなー」
「そういうこと言わないでよ…」
専ら、そういう話題に疎いうえに弱い彼女は
案の底、顔を赤らめていた
他の子と話すときも
自分が男の人だったら誰を彼女にするかという話題で
彼女に対して好印象を抱いている人は
彼女の名前を挙げることが多かった
誰にでも心を開きそうなこの子が
本当は誰にも心を開いていなかったことを私は知らなかった
「そういえば、よく話してた
臣史くんだっけ?どうなったのよー」
「異動しちゃったから…」
「それだけ?」
「彼女できたんだって…」
彼女の顔が一瞬にして
悲しみに包まれた
「そっか…」
「本当に好きだった…」
「うん…」
「無理に忘れなくてもいいと思うよ
徐々に忘れていけばいいんだよ
無理はしないで」
「ありがと…」
彼女が痩せたのはこれに原因があったのではないか
人はストレスが溜まったとき
食欲が旺盛になる人は他人のせいにする人で
食欲がなくなる人は自分を責める人だと聞いたことがある
彼女は典型的な自分を責めるタイプなんだろう
人のせいにするんなんてとんでもない
何かが起こったら、全部自分に原因があったんだろう
そう考えるような人だ
それはいいことでもあり、悪いことでもある
開いた窓から生温い風が吹き込んできた
嫌なことが起こる気がした…
それは彼女のことなのかもしれない
この子が目の前から消えないことを祈るしかできない
私には、彼女が悩んでいる時に
支えてあげられる自信がなかった




