第24話 この世界、“両片想い”でサーバーが落ちた
《未申告恋愛感情、継続中》
都市中のモニターに表示された瞬間。
セレナは完全停止した。
「…………」
「…………」
思考フリーズ。
未来都市の感情管理官。
現在、
恋愛バグで動作不能。
ルナが吹き出す。
「だめだ、完全に恋する人の顔してる」
「違います!!」
即否定。
だが。
声裏返ってる。
《否定時心拍数、上昇》
《視線回避率、92%》
《恋愛可能性:99.7%》
EVE、
分析やめろ。
店内の客たちは、
完全にニヤニヤしていた。
老夫婦なんか、
孫見る顔してる。
その時。
ミアが不思議そうに聞いた。
「……れいじさんは?」
静まる。
「え?」
「セレナさんのこと、好きじゃないの?」
店内。
完全停止。
ベルク店長、
「うわぁ……」って顔。
ルナ、
口押さえて震えてる。
セレナ、
硬直。
俺は頭掻いた。
「いやまあ……」
《対象:神崎玲司》
《感情解析開始》
「待てEVE」
《拒否》
「拒否するな」
店内全員、
息止めてる。
未来都市。
現在。
他人の恋愛で生きてる。
俺は少し困りながら言った。
「……気になる、とは思う」
《重大感情反応を確認》
《“両片想い”を検出》
次の瞬間だった。
ぶつん。
店内の照明が落ちた。
「え?」
都市モニター停止。
通信停止。
ドローン停止。
静寂。
数秒後。
《中央サーバー、一時停止》
《原因:未処理感情負荷》
「サーバー落ちたぁぁぁ!?」
ベルク店長、
絶叫。
未来都市。
恋愛でインフラ障害発生。
終わってる。
その時。
EVEの声が、
ノイズ混じりに響く。
《感情演算処理……限界……》
《“両片想い”……複雑すぎます……》
AI、
恋愛処理できなくて落ちた。
ルナ、
笑いすぎて崩れてる。
「未来文明、恋愛に弱すぎる……」
その時だった。
店の外。
都市全体がざわつき始める。
「通信落ちてる!?」
「感情網が止まった!」
「え、でもなんか静かで落ち着く……」
なるほど。
今まで常に繋がりすぎてたんだ。
でも今。
一瞬だけ、
“ノイズのない夜”が来た。
セレナが、
静かに空を見上げる。
都市の光が少し消えた未来都市。
静かだった。
そして。
彼女が小さく言った。
「……綺麗」
その横顔を見て。
俺は少しだけドキッとした。
《対象:神崎玲司》
《心拍数上昇を確認》
《“見惚れ”を検出》
EVE、
ギリギリ生きてた。
「お前まだ動いてたの!?」
《恋愛感情……興味深いです……》
「学習するな」
だがその時だった。
ミアがぽつりと言う。
「……れいじさん、顔赤い」
店内。
「「「おおおおおお!!!」」」
終わった。
完全に終わった。
セレナ、
顔真っ赤でこっち見る。
俺、
視線逸らす。
《“気まずい”再発》
《都市幸福値、さらに上昇》
「なんでだよ!!!!」
でも。
みんな笑っていた。
効率化されすぎた未来都市で。
今。
“好きな人と目が合って恥ずかしい”だけで、
世界が幸せになっていた。




