第23話 この世界、“告白前の空気”で天気が変わった
セレナが“楽しい”を観測してから三日後。
未来都市は、
完全におかしくなっていた。
《感情気象庁 緊急報告》
《都市西部に“そわそわ前線”を確認》
《原因:恋愛感情密度上昇》
「感情で天気変わるの!?」
俺が叫ぶと、
ベルク店長は遠い目をした。
「この都市、感情同期インフラだから……」
なるほど。
この世界。
人間の感情と都市ネットワークが、
深く接続されてる。
だから今。
“恋愛”という未管理感情が、
都市そのものに影響与え始めていた。
終わってる。
でもちょっと面白い。
その時だった。
店内に女子高生たちが飛び込んでくる。
「やばい!!」
「また?」
「今日、告白する人いるらしい!!」
店内。
ざわっ。
完全にイベント扱い。
《重大感情イベント予兆》
《“告白前空間”を検出》
《都市緊張値、上昇》
モニターまでソワソワし始めた。
未来都市、
恋愛耐性低すぎる。
その時。
ルナが小声で聞く。
「……告白前って、なんでこんな空気変わるの?」
「緊張するからだろ」
「なんで?」
「人生変わるかもしれないから」
静寂。
未来人たち、
またその概念に固まる。
この世界。
効率化されすぎて、
“人生変わる瞬間”が減ってたんだ。
全部最適。
全部予測。
全部管理。
でも告白って違う。
成功するか分からない。
拒絶されるかもしれない。
でも。
言わずにいられない。
その時だった。
店の外。
一人の男子学生が立っていた。
顔真っ赤。
震えてる。
手には花。
周囲の空気まで緊張してる。
《高密度感情波を確認》
《周辺住民の心拍数上昇》
《空調システム異常》
ぶわっ。
突然、
風が吹いた。
空が曇る。
「えっ」
ルナが空を見る。
「ほんとに天気変わってる……」
セレナが静かに呟く。
「感情エネルギーが都市網へ流入してる……」
つまり。
告白前の緊張で、
街の気圧変わってる。
青春エネルギー、
インフラ干渉レベル。
その時。
女子高生たちが息を呑む。
「来た……!」
店の前。
男子学生の前に、
一人の女の子が現れる。
沈黙。
周囲の通行人まで止まる。
都市全体が、
この瞬間を見守っていた。
男子学生は震えながら言う。
「……あ、あの」
《感情圧力、急上昇》
空で雷鳴。
怖い怖い怖い。
女子高生たち、
完全に観客。
ルナまで胸押さえてる。
「む、無理……見てるだけで苦しい……」
セレナも目を逸らせない。
その時。
EVEが静かに問いかける。
《質問》
「なんだ」
《なぜ人類は、“拒絶される可能性”に挑むのですか?》
俺は少し笑った。
「好きだからだろ」
《それだけで?》
「それだけで」
静寂。
男子学生は、
ついに言葉を絞り出した。
「……ずっと、もっと話したいと思ってました」
風が強くなる。
《感情エネルギー上昇》
《都市網負荷増加》
「街がラブコメに弱すぎる」
女の子は目を見開いていた。
顔が真っ赤。
そして。
小さく笑う。
「……私も」
その瞬間だった。
都市全域。
ぶわぁぁぁっ!!!
空に光が走る。
雨雲が一気に晴れる。
夕焼け。
歓声。
拍手。
知らない人まで拍手してる。
《重大感情イベント成功》
《“両想い”を確認》
《都市幸福指数、史上最高値更新》
ベルク店長、
ついに泣きながら笑った。
「誰だよ感情消した方が安定するとか言ったやつぅ……」
その時だった。
セレナが、
小さく俺を見る。
視線合う。
逸らす。
また合う。
《感情管理官セレナ》
《未申告恋愛感情、継続中》
都市中のモニターに表示された。
セレナ。
「……っ!!!!!」
顔、
夕焼けより赤かった。




