弟子が可愛い
壇上にいる先生陣、保護者席だけが結界で守られている。そこには目もくれず、ゴーレムは新入生へと向かっていく。
「師匠、知ってたのかな……?」
「たぶん知らないんじゃない?ほら、あの顔見てみてよ」
「……無表情な気がするけど」
「いやいや、ちゃんと見なよ。ちょっとだけ目の開き方が違うから」
「……」
────
「……」
少し、いや、かなり驚いた。このような抜き打ちのテストをするのか……。それにしても、このようなテストでは魔導具を持っていない子も多い、というか全てだろう。大丈夫なのか?
「大丈夫ですよ。あのゴーレムたちはよわーく作ってありますから。それに、これは魔法を見るための試験じゃあないんです。魔法は、これから伸ばしていくからいいとして、これで重要視されるのは身体能力と弱点を見抜く目、そして引き際を理解しているか、ですかね。それ以外にもありますが、基本はこれです。この能力が下位の子に危険な実戦授業をするわけにはいきませんから」
「何も言っていないが……」
「なんとなくですよ」
クレムが微笑みながらそう言う。
────
新入生百数人に対して、ゴーレムは三十と少し。しっかり弱点を狙って攻撃しないとまともにダメージが入らないようになっている。
「ちょっと!アタシの邪魔しないでよ!お姉様に褒めてもらうんだから!」
「俺だって、師匠の期待に応えなきゃいけないんだ!」
まともにダメージが入らないようになっている……はずだ。レングもヴェアも魔法を使用していない。しかしながら、異常な速さでゴーレムを倒している。開始からわずか10分、ゴーレム合計討伐数……五。
火を纏わず、毒を用いず、それでも倒す。それを支えるのは魔物を討伐した経験。人より少しだけ多い、ただそれだけの経験値が、彼彼女らを支えている。
「お姉様見てるかなぁ!?」
「知らないよ!後俺の狙ったヤツを取らないでくれるかなあ!」
ヴェアは暇があればそちらを見る。レングはゴーレムを倒した後、チラッとそちらを見る。見られている張本人は……
……「ふふ、可愛いやつらだ」
我が子を見ているような気持ちになっていた。
「一応ゴーレムの弱点は個体によって変えてるんですけどねぇ……。どんな育て方をしているのやら」
そんな感じで目立っている二人組……の近くに、目立ちたがり屋が割り込んだ。
「ちょっとそこのお二人さん!僕も混ぜてよぉ!」
獣耳が生えた獣人種。他の種よりも高い力でゴーレムを弱点ごと破壊する。
「うぉっと!」
「邪魔!」
「ははっ!、そんなこと言わないでよ!悲しくなるじゃあないか!おっと、自己紹介を忘れていたね。ファイ・アガイアだ!君らの名前は!?」
「そんなことより!前!」
「そんなこと?ノンノン、自己紹介は、大事だろう?」
軽口を叩きながら、拳を振るう。これだけでも充分と言うような、腕の力だけを使ったパンチ。それは的確に弱点を破壊した。
「見えていたのか?」
「見えるし、聞こえるし、匂うし、感じるね。獣人の五感を舐めてもらっては困るよ。それで、名前は?」
「レング・ウォート。こっちには目もくれずにゴーレムを倒しに行った馬鹿はヴェア・フレアだよ」
「ふむ、あそこにいるフレア氏の関係者かな?」
「俺が弟子、あいつは妹」
「ほうほう。あの人の魔導具には興味があるんだ。言伝を頼みたいんだが……」
「とりあえず、これが終わってからかな」
「なら、さっさと終わらせよう」
この年のテストは、異例の速さで終わることになったとか。




