面倒事は続く
この戦闘を見て、
「……センパイ、めっちゃ楽しそうッス。あれくらいやらないと……こっちを向いちゃくれないんすね。頑張るッスよ……」
決意を固める者。
「なんだありゃあ……」
「剣帝が生き生きしてるぜ……前まで死んだ目しか見た事なかったのによ」
「どうやったら追いつけんだよ……」
驚愕し、絶望する者。
「あぁ……お姉様……」
「え」
恍惚とした表情を浮かべる妹とドン引く弟子がいたりした。
────
「はははっ!」
コイツッ、いい加減緩めよ!どんだけ打ち合ってると思ってるんだ、全く剣圧が変わらない!
「あぁ、もう!こうなりゃヤケだ!性にあわないんだよ、博打なんて!」
築いた塔、伸ばした足場を一瞬にして消滅させる。
「落ちるだけだぞ!」
「ワタシが上でオマエが下だ。さァ、お祈りの時間だ!当たれよ!」
兼ねてより考えていたクリスタルの高速射出機構。義手を素体として構造を頭に入れ、それをなぞるように組み替えていく。出来損ないの羽根に付けたのよりずっと速い。下手すりゃあ殺してしまうが、オマエは死なないだろ。
「はぁっ!」
「……ッ!」
空中でありながら見事な構え。久しぶりに成り立った戦闘に、感覚が研ぎ澄まされる。これを超えるには成長が必要だと、研ぎ澄ました感覚は言う。
「……なら、今成長しよう」
「あ?」
魔力を通さない体。それでも魔力は回っている。だから、この義眼はいち早く変化を観測できる。魔力の回路が変わる。身体の構造が変わる。進化する。
「……化け物が」
人族では反応できない、魔族ですら反応は難しいだろう。放たれたクリスタルは、そんな速さだ。それをいとも容易く、足場とし、気づいた時にはワタシが下で、首に剣が当てられていた。
「僕の勝ちだ」
────
「うおおおおおおお!」
「何が起こったかわかんねぇ!でもすげぇ戦いだった!」
拍手が巻き起こる。この戦いは、正しく最前線の戦いであった。
「……ふふ」
その勝利を誇らしく思う者もいれば……
「……お姉様が負けるわけないのにぃぃぃぃ!!」
その敗北にただをこねる者もいたそうな。
「あ、アタシがお姉様って言ったの内緒ね?言ったら距離ができちゃうから……バラしたら、分かってるでしょ?」
「……はいはい」
────
悔しい。
「また、やろう」
そんなワタシを見て笑っていやがる。嫌なヤツになったものだ。
「次は倒す」
「その闘志を、忘れないでくれ」
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「ああもう、悔しい悔しい悔しい悔しいぃ!」
「まぁそう落ち込むな。今のブレイは全盛期の儂でも倒せん」
「それでも勝ちたかったぁ……」
「……まるで昔のようじゃの」
店を休みにして孤児院のベッドに寝転がっていた。
「お前さんは無茶な戦い方をするんだから、今日ぐらいは休んどけ。儂は散歩に行ってくる」
そうしてウィックさんは出て行った。ヴェアはどこにいるか分からないし、レングはあの戦いの後、ブレイに近接戦闘の手ほどきをしてくれと頼んだから、今日はそれだろう。キューレさんは孤児院の子といる。……安静にしている方がいいのだろうが、どうにも落ち着かない。
「そもそも、あの変化はなんだ……ブレイは本当に人なのか?ワタシが言うことでは無いか……」
魔族であるワタシが一番他人の事を言えないなと自嘲する。寝室から出て、ウィックさんに見つからない程度に外を散歩していると、何やら妙な気配を感じる。
「……誰かがつけてきている?敵意は……無いか」
そう言って、後ろを振り返る。
「ワタシをつけているのは、誰だ?」
振り返ると、そこには……
「あら、気づいていたのね。初めまして、ヴァエルちゃん。私は、カレナ・カレイド。トライト魔法学校……の現校長よ」




