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魅せてくれ


ブレイが、コインが落ちたと同時にもはや人であるか怪しいほどの身体能力で距離を詰めてくる。


「はははっ!」


「チッ」


ヴァエルは横薙ぎに振られた剣を義手で滑らせて受け流す。……が


ここまでだったか!?


力負けしたヴァエルが吹き飛ばされる。空中で無防備となったヴァエルをブレイが追撃に動く。



────


「うっわ、剣帝サマはやることがちげえや。もう終わるだろ」


「だな〜」


剣帝を知る全ての人が同じことを考える中、そんな話をした男二人に観客席のどこからか殺意が向けられる。いや、顔に出ている人にも。


「……」



────



妹に、弟子に、カッコ悪いところなんて見せられるかよ!


吹き飛ばされながらも追撃を阻止するためにクリスタルを放つ。普通なら当たらない状況。しかし、有り余る戦闘意欲、威圧感、隠す気のない存在感、この全てが、見ていなくともヴァエルの感覚に像を結ぶ。結ばせる。


「……やっぱり、いいね」


それにより、ブレイが回避行動に移り安全に着地する。


「……最初から飛ばし過ぎだろ。もう少しお手柔らかに頼みたいんだが?」


「そりゃあ……無理な話だ!」


もう一度突進。普通なら二度は効かん……と言いたいところだが、余りにも速すぎる。


「らァっ!」


「はぁっ!」


新しく剣を作り、振る。もちろん、壊れる。


「それだけか!?」


「んなわけ……無いだろ!」


新しく剣を作り、振る。


今のブレイの剣は苛烈だ。防御する気が感じられないほどに攻撃に特化している。攻撃は最大の防御とはよく言ったもので、隙がない。だが、剣の型自体は昔見たそれと大きく変わらない。ただただ、経験からオマエはこう振ると予測する、いやそう願う。実戦じゃあ絶対死ぬ人読み。それが当たっていたとして、ワタシでは受けることは出来ない。受け流しても吹っ飛ぶ。だから、魔力を過剰に流した不安定な剣を作る。ブレイの剣を受ければ壊れる。それで、衝撃を全て剣に擦り付ける。


「ぐっ」


「もっとだ、もっと!」


それだけではいつか負けると分かっているヴァエルは、死角からクリスタルを放ち意識を分散させる。


「はははっ!アハハハッ!楽しいなぁ!面白いなぁ!もっとやろう!」


「オマエっ、いつからっ、そんなっ、戦闘狂になったんだよっ!」


「最初からさ」


「だとしたら面の皮が厚すぎるな。早めに剥がしとくんだった、なっ!」


「よっ……と」


数回、数十、数百回打ち合った後、急にブレイが飛び退いた。


「……これでも結構楽しいけど、本気じゃないだろ?死ぬ気でやらないと訓練にならないってよく言ってたじゃないか」


「最初っから本気に決まってるだろうが。……チッ」


「魅せてくれ、もっと」


「……殺す気で行くぞ」


「上等」


その瞬間、空気が変わる。


「誘ったのはそっちだ。後悔しても遅いからな」


塔が作られる。黒色の塔。その塔の上に、彼女は立つ。……大きな翼をはためかせ。


「想像以上だ、ヴァエル。本当に、ありがとう」


返事は密度が増したクリスタルの雨によってもたらされた。


「それでこそっ!」


クリスタルの雨を掻い潜り、利用して塔を登る。


その時、ヴァエルはまるで指揮者であるかのように腕を振り上げ、振り下ろす。そうすると、クリスタルの雨が別方向からも発射される。


「あ〜、キッついなぁ!戦いはこうでなきゃあ、なぁ!」


剣を振り、軌道を変え、それでも進む。流石に無傷とはいかないが軽傷。ほぼ、万全。


「ただい、まァ!」


「おかえり」


先程とは違う、黒く染まった剣を振る。そして、足場を作りながら、踊るようにブレイの剣を受ける。


体が悲鳴をあげている。それを悟られる訳にはいかないが、長くは持たないな。


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