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VS剣帝 開幕


「「え」」


店に入ってきた、十中八九ブレイである男が女を侍らせている。ほう、会っていない間にそこまで…。


「違うぞ」


「思考を呼んだのか?」


「変なことを考えていそうだったからな」


「……顔に出ていたか」


「考えてたのかよ」


「え、えっと…この方は…」


「ヴァエル……僕がギルドにいた時の相棒だ」


随分と雰囲気が変わったな……。キューレさんが言ってた荒んだってのはこういうことなのか?


「まあなんでもいい。店に来たんだ。魔導具を買いに来たんだろ?好きに選んでいい」


「……………」


なんで黙るんだ。そして、なんで魔導具じゃなくてワタシを見るんだ。


ブレイの口角が少し上がる。


「気が変わった」


不味い。この目は不味い。戦う時の目だ。絶対、面倒事だ。目立ちたくない……に、逃げろ


「そろそろ店じま……」


「僕と戦ってくれ。…無理にとは言わないけど……そこまで臆病になったのかな?」


「……面倒だな。……だが、そこまで言われて引き下がるのは無理な話だ……場所はそっちで用意しろよ。で、いつやるんだ」


「今からだ」


「……そうかい」


「…………」


自分には分からないこの二名だけの関係。グランは少しもやもやした。



────



「剣帝が喧嘩売ったぁ!?何したんだよそいつ!」


「知ーらね。なんかやべえことしたんじゃねえの?」


噂はあれよあれよと広がっていく。ヴァエルは剣帝が、かつての相棒がこれほどの地位にいるとは思っていなかった。


「オマエの今の地位を考えてなかったワタシが悪いな……。まあいいや、で、ここはなんなんだよ」


「元はただの練習場だったけど、増築に増築を重ねていったら観客席も増えて闘技場みたいになったんだ」


「なんだそれ」


まだ戦いは始まっていない。だが、剣帝の戦いを一目見ようと多くの観客が集まっていた。


「……」


その中には、知っている顔もいる気がする。いや、いる。


「頑張って!お姉ちゃん!」

「負けないでくださいよ!師匠!」

「あんなに小さかった二人がこんなに大きくなってねぇ……」

「ガッハッハ!あいつが帰ってきて早々にこれかい!」


どこで聞いたんだよこれを。ついさっき決まったことだぞ。店番はワタシだけだったはずだろ。


「……最近ずっーーーと退屈してたんだ。……先輩はとうの昔に追いついた。追い抜いた。騎士団にいた全ての人を追い抜いた。そんな僕を誰も追いかけてこなかった。でも君なら……」


「……変わったなぁ。オマエ」


「君こそ」


「これはなんだ?いつものか?」


「あぁ、それでいこう」


いつもの。殺す気で戦い、命を奪うに等しい一撃を与える攻撃。その直前で終了する試合。


「グラン。結界の魔導具を頼む」


「そんな都合のいい女みたいな……。でも実際そうなんで!やるっすよ!───魔導具接続!結界展開っす!」


四角い箱のようなものから光が溢れる。ワタシの義眼が捉えたのはこの闘技場の観客席と戦場を分けるかのようにそこで空間が揺らいでいる光景だ。


「……それは?」


「この結界の魔導具のことっすか?これはブレイパイセンの体質をちょちょいと解明した大天才、クレム先生が開発した魔導具っすよ!」


「なるほど、ありがとう」


「いえいえっす」


魔導絶縁体質……。それを応用してこれを作ったのか。……凄いな。


「観客はこれで安全になったことだし、始めようか」


「自分も見てるっすからねー!……練習の戦闘でこんな事言うのどうかと思うんすけど、それでもしょーじき勝って欲しいのはブレイさんっす……応援してますよ」


「……」


聞こえているのかは知らないが、ブレイは去っていくグラン何某に目もくれずこちらを見ている。


「なぁ、今の聞こえたか?オマエ何したんだよ。相当好かれてるだろ、あれ」


「…………?」


なんの事やらまったく分からないと言った様子だ。コイツ……。あの子は大変そうだなぁ……。


「なんの事かは分からないが、僕は待ちきれないんだ。さっさとやろう」


「さっさとやるのは賛成だ。これ以上人が集まって目立つのは御免だからな」


ブレイが懐から取り出したコインを上に投げる。


………………落ちる。


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