え
あれから数日経った。キューレさんにはヴェアはワタシの妹だと言えば魔族であることを理解してくれた。しかもすぐに仲良くなっていた。何を話しているのかは知らないが、ヴェアがワタシをにやにやしながら見てくることが多くなっている。
レングの方は特に問題は無かった。ちょうど入学の時期だったので、色々の手続きをしてくれた。もうすぐで学校が始まるらしい。
ワタシはと言えば、店が結構繁盛してきたぐらいだ。まぁそれはウィックさんが宣伝役を担ってくれたのが大きい。先々代の騎士団団長が品質を保証してくれるのは助かった。
────
「久しぶりだな。本当にバカ娘に似て欲しくないところが似てしまって心配でしょうがなかった。だがまぁ、おかえり」
「…ただいま」
「で、店の宣伝をやって欲しいんだってな。儂で良けりゃあ手を貸そう」
「ありがとうございます」
「なぁに。孫のようなもんだからな。それにしてもなんと言うか…雰囲気が変わったな」
「……?」
「出ていった時、本当に切羽詰まったような、息苦しそうな感じがしていたからなぁ。今は違うようだな。そいつはいい。あんな顔して生きてても、なんにも楽しくなんかねえよ」
「別にワタシは楽しくなくても生きていけます」
「そういうことじゃねえ。どうせ生きるなら楽しい方がいい。ここまで生きた、老いぼれた爺さんの人生の感想みてえなもんだ。ま、生きたいように生きりゃあいい。それで、儂ゃあ何をすればいい?」
「じゃあ───」
─────
で、現在に至る。やっぱり凄い人だったんだな。いや、当たり前なんだが、改めてそう感じる。ウィックさんの名前を使わせてもらったり、色々と体に負担をかけない程度に手伝ってもらった。
それで、店はこの国でちょっと有名になった。ワタシの魔導具の品質がそこらに劣っているわけは無い。なぜならそれは、その技術はこの国のかつての希望に教わったものだからだ。…………なんでもできるな、あの人。
そんなこんなで稼ぎは出ている。住まわせてもらっているのだから当然だろう。あの人たちは何もしなくていいとは言っているが……。まったく、優しい人たちだ。
カラン
「いらっしゃ………え」
─────
「はぁ……」
どいつもこいつも、僕を英雄とでも思ってるのか?なんで……なんで…。僕は、そんな遠い存在じゃない。並んでくれ。追いかけてくれ。僕は……。
最初に剣帝と呼ばれた時は嬉しかった。嬉しかったから、より頑張った。その勢いのまま、騎士団に所属した。あぁ、そこまでは良かったんだ。そこからが問題だった。今の騎士団はどうやらステラさんが消えた事件が起きたその日にそれ以外の精鋭も消えたらしい。
……そこらへんの話はしてくれなかったな。あの人に信頼されていなかったのか……今となってはもう知る手段はない。それで、騎士団の戦力は大幅に減少。団長を誰にするかは後回しにして、今後の戦力増強や見回りの担当変更なんかで忙しそうにしていた。
そんな状況で、騎士団に入った。今の騎士団は弱い。入団試験では模擬戦闘で先輩を倒した。全て倒した。倒せてしまった。簡単だった。つまらなかった。
強さ。それだけで、騎士団長となった。周りの騎士が僕に抱く感情は畏怖。認めないなら認めないでいい。けれど、彼らは僕を恐れている。彼らは僕に追いつけないと悟ってしまった。彼らは僕に着いてくる。それは信頼ではない。
あぁ、強さしか持たない僕は、希望になんてなれない。たった一人、この孤独を埋めてくれるのは誰もいない。あぁ、なんて寂しいんだ。貴方も、そうだったのかな。
今日も退屈だ。そういえば、僕が住んでいた孤児院に魔導具店ができたらしい。
「団長、今日休暇でしょ。新しくできた魔導具店、行ってきたらどうですか」
僕が団長になった後に入ってきた女性。短く揃えられた茶髪。それに対応したような茶色の目。名前は確か…
「グランか……あの魔導具店は孤児院のところでやっているだろ。あそこの孤児院はちょっと酷い別れ方をした。今更顔向けなんて…」
「そんなことでうじうじしてるんすか?もう剣もぼろぼろじゃないすか。仲直りするついでに買ってきたらいいんすよ」
「……はぁ、分かったよ」
そうしてあの孤児院まで歩き出す。
「顔とか隠した方がいいんじゃないすか?あの剣帝サマっすよ?」
「……いや、その前になんで着いてきているんだ」
「自分も休暇っすから」
「……そうか」
「ほら、顔隠さないから見られてるっすよ」
「見られても減るものはないんだ。別に良い」
「ふぅん…。あ、もうすぐ着くっすよ」
「そうだな……ふぅ」
少し深呼吸してから扉を開ける。
「え」




