ただいま
「…知っての通り、固有魔法は応用力が高い。だから、自分で限界を決めてしまうのは最も愚かな事だ。固有魔法を扱うのならば、まず自分を信じること。それを大事にするんだ」
グリズリーの焼き肉を食べながら、そんな事を話す。
「その点では両方ともかなり良い。レングは汎用魔法と混ぜて使う、ヴェアは毒の応用で身体能力の強化…。弟子が優秀でワタシも鼻が高い」
正直、固有魔法を教えるのは難しい。己の固有魔法は己しか使い勝手が分からないからだ。それでも、戦闘の心得や行き詰まった時に発想を与えてやるぐらいはできる。
「偉いぞ。レング、ヴェア」
両方の頭をわしゃわしゃ撫でてやった。褒める時のやり方は孤児院のキューレさんを参考にさせてもらった。
……ついでに、まだトライトにいた時は周りに舐められないようにステラの真似をしていたのを思い出してしまった。ワタシの中の強さの象徴がステラだったからだ。……だが、なんともむず痒い。思い返すのはやめよう。
「……えへへ」
「……そんなに子どもじゃないですよ」
ヴェアは素直に喜んでくれたが、レングは少々恥ずかしかったようだ。褒め方はよく分からないな。
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「食べ終わったら支度をして先に寝ていていい。ワタシが見張りをしておく……予め言っておくが、手伝いはしなくていい。ちゃんと寝てろ」
「…」
どちらもちょっと不満そうな顔で支度を始めた。寝る子は育つとはよく言う。
────
そんなこんなで魔物を倒したり、料理しながらトライト魔法国に到着した。
「ところで師匠、門番の人がいますけど、入れるんですか?」
「あぁ。こういう時に、都合良く入ろうとしている知り合いがいる」
「え…入れる確証が無いのに来たんですか?」
「……」
「お姉ちゃん!そんな事無いよね?お姉ちゃんは、ちゃんと考えて来たに決まってるじゃない!」
妹の期待は裏切りたくない。レングにはバレているだろう。
…………………………あ、いた。
「師匠?どこへ…?」
無言で緑髪の人の元へ歩いていき、肩をつつく。
「……はい?」
「キューレさん。ただいま」
「えっ、あっ………えぇ?…ヴァエル……ちゃん?」
「ちゃんはやめて欲しい……です。弟子もいるので」
「…………」
なにやらキューレさんがぷるぷると震えて……。
「ずっと心配してたのよ!?あの日からずっと!あの子もちょっと荒んじゃって……でも、無事で本当に良かった……」
泣きながら抱きついてきた。流石に行き先も伝えず出ていったのは不味かったのか。けれど、レングとヴェア、それに他の人の目があるからと言ったら離れてくれた。そして、無事に国に入れ、孤児院に案内された。
「少し孤児院が小さくなってい…ますが、なにかあったんですか?」
ちょっと敬語は苦手だ。それでも尊敬している相手には敬語を使っとけ、と最も尊敬している人に言われている。
「そうねぇ……。伝えていなかったけれど、孤児院はウィックさんが騎士団で稼いだ分と騎士団を退いてからも、戦闘訓練などで国から渡されるお給料…それから私もある程度稼いでいたわ…けれど、ウィックさんが倒れてしまったの。だから…孤児院に使えるお金が少なくなって、規模を小さくするしか無かったの」
「事情は理解しました。それでは、ここで店を開く許可をいただきたいです」
「店…?」
「えぇ、ワタシの能力で作った魔導具を売る店です。向こうではこれとある程度魔物を狩って生活していました。店で稼いだ分は全て孤児院に使ってください」
「…分かったわ。ヴァエルちゃんの言う事はできるだけ聞いておきたいし、救える子は多い方がいいものね」
「……ちゃん呼びはやめてください」
治安が悪い訳ではないですが、学校がある上、学校に通う上でかかるお金はほとんど無いため、なんとかしてくれるだろうとワケありの子が別の国からやってきたり家族に置いていかれたりしているため、孤児がそこそこいます。




