意志を通す力
ノーブが姿を現した瞬間、一斉に別の個体が現れた。
「家族総出で、お相手しましょう」
現れたノーブの家族は、自我が無く、どうやら吸魔族の魔力と適合出来なかったらしい。
「たった一人しか、適合出来なかったのか?そりゃ、可哀想な事だな」
「えぇ……残念ながら、ワタクシしかこうしてお話ができない体になってしまいました……が、それでも家族は家族です。みな大切に扱っていますよ」
「……戦う前に、聞いておきたい事がある。なぜ人と敵対するような真似を?」
「そっくりそのままお返ししますよ。アナタも、魔族でありながら人の側に立っているではありませんか……。そうそう、魔力を与えてくれた方から、譲り受けた者と、伝言があります」
「……なんだ?」
「どうやら、成長したアナタに興味を持たれたようです。もう一度だけ、やり直すことを望むなら、許そう。と」
「……」
「そうでないなら……出てきていいですよ」
そう言って現れたのは、ワタシの──
「……ヴェア」
「そう、アナタの……妹です」
……戦場じゃ、会いたくなかったな。だけど、もうあの子に対する答えは決まっている。
「おや、そこまで動揺していませんね。もう少し驚いてくださると思ったのですが……。少々がっかりですよ」
「お喋りはもう良いだろ」
「いえ、まだ喋っていないのがいますから……レング」
レングはコイツらが出てきてから一切喋っていない。だが、レングは言った。仇は仇で返すと。……覚悟が鈍ったか?まぁ、レングはワタシと境遇こそ似ているものの、産んでくれた恩自体は返そうとしたくらいには真面目だ。どんな野郎でも、家族は家族だからな。
「もう、貴方と話すことは無い。俺の人生に貴方は要らない。……だから」
そんな心配は要らなかったか。
「邪魔です。どいてください」
拳に火が宿る。今までの怒りを思い出すかのように、火はさらに燃え上がる。敵を燃やし尽くすに充分な薪はもう、焚べられている。
「仮にもう、家族ではなかったとしても元々は家族だったんだ……。最後の親子喧嘩といこうじゃないか」
戦闘が始まる予感を感じ取ったヴァエルは、自らが羽織っているものを投げ捨てた。
「……?」
ワタシは、強くなるということを誤解していた。ただ、もっと強くもっと速く魔法を扱う事だと思っていた。だから停滞していたんだ。レングに明かした事で少し冷静になれた。固有魔法の真髄は、汎用魔法とは比べ物にならない応用力だ。
ヴァエルの背中から、蜘蛛のような足が生える。
「ははっ、それじゃまるで魔物だ。人になろうとしている方がやる戦い方じゃない」
「別に、人になろうとしている訳じゃないさ。人と共に生きる。その目標から外れなければ、何でもするよ。ワタシは」
「……ヴェアさん、お願いしますね」
それに呼応するように、ヴェアは毒の槍を作り、こちらに投げつけてくる。
そうか、ヴェアに発現した魔法は毒の魔法だったのか。妹の成長が見れたようで少し嬉しくもあるが、そういう場合ではないな。
「固有魔法の使い方を、教えてあげよう」
ワタシに向かってくる毒の槍をクリスタルの義手で受け止める。そのまま──
「毒を、吸収した……?」
ヴァエルの義手は、紫色に染まっていた。
「妹がいるから、少々授業をしてやろうと思ってな。今意識があるのか知らないが、妹のためだ。強くなってほしいんだよ」
ノーブは一瞬目を逸らした。その反応を見なくてもわかる。ヴェアの頭にあの子の魔力じゃない反応がある。まあ、洗脳の類いだろう。良かったよ。あの子の存在が確認出来ない時の方が、ずっと怖かった。
「さて、レング。生きるには、意志を持つことも、意志を通す力も必要だ。アイツらに教えてやろう。今のレングなら、できるはずだ」
「はい!」
そう言って、レングは駆ける。ノーブに真っ直ぐ。
「野蛮なのは嫌いなんだ……。家族の為に、動いてくれるかい?」
そう言うと、自我を失ったのが一体動き出した。レングを止めるように。
「できるとでも?」
ワタシはレングを守るように動き出し、走った勢いを利用して、蜘蛛の足を地面に突き刺し、回し蹴りを食らわせた。
「行儀が悪いね。貴方の父上に言った方がいいかな?」
「安心しろ、アイツはもっとだ」
「まったく、子どもの教育というのは大変だね。あの方に同情するよ。……みんな、家族の明日を守ろうか」
そう言うと、全員が動き出す。……が
「レング、振り返るなよ」
恐らく声が届いた事を確認したワタシは、閃光弾の方の球体に魔力を込め、起動させる。
「なっ」
怯んだノーブの目の前にはレング。
「はぁっ!!」
燃え盛る拳に力を込めて、思い切り殴りつけた。
「痛いなぁ。でも、貴方とワタクシの相性は最悪だ」
水を周囲に浮かせながら、立ち上がっていた。
「親子喧嘩の続きをしよう」
こうして、戦いは始まった。




