信頼
「品揃えも素晴らしいですね……。この剣を頂いても?」
「あ、あぁ。代金は書いてある通りだ」
敵意は無い。ここで争う意味は無いだろう。……だが、嫌な予感が拭えない。
「それでは、また来ます」
ウォートはレングの……。どうなっている……。
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「ヴァエルさん……今日の分終わりました……!」
「……そうか」
今日のことを話すべきか……いや、そうすれば混乱を招くだけか……?話したとして、相手が吸魔族であることまで話すのか……?そうなれば、ワタシが人でないことまで……。まあ、ひとまずは。
「レング」
「……はい?」
「聞かせてくれ、キミの過去を」
「……恥ずかしい過去なのであまり言いたくなかったんですけど……ヴァエルさんなら……」
────
曰く、ウォート家は先祖代々、水の汎用魔法であったらしい。古臭い掟を大事にしているため、適正が水魔法でないと判明してしまった子は、捨てられてしまうと。その点、レングは肉体が強いなどの才能があったことから、期待されていた分酷い扱いを受けたそうだ。
今までの付き合いから、良い奴であることは分かっている。そんな扱いを受けても、産んでくれた恩を返すために精一杯尽くしたんだろう。それでも、捨てられてしまった……と。
「こんなところです」
「……」
「それにしても、なんで俺が嘘をついていると……?」
「親族が、ここに来ていた」
「……!名前は、なんと言っていましたか?」
「……ノーブ・ウォートと名乗ったな」
「……その人は俺のお父さんで、歴代の中で最も強いと言われていました。何か、言っていましたか?」
「また来る、と」
「……」
「辛いことを話させて悪いが、ここからが重要だ。……ここに来たノーブ・ウォートは、人じゃなかった」
「え!?」
「人を魔族に変える手段を持つ魔族であること。そして、何よりも最大の特徴である紅い目……吸魔族になっていた」
「……え、ちょ、ちょっと待ってください。それじゃあ」
レングが後ずさる。
「貴方は……!」
レングは、ヴァエルの義眼ではない紅い目が、妖しく光った気がした。
「これは、明かしたくなかったがレングにばかり話させる訳にはいかない。………………そうだ。ワタシは、吸魔族。人ではない」
「……」
「どこから話そうか……。いや、それよりも。逃げてもいいんだぞ?言いふらしてもいい。キミは、選択できる」
「………………俺は、恩は恩で返すって決めてるんです。当たり前のことですけどね……」
「……」
「だから、俺は貴方を信じます」
「いいのか?」
「選択できるって言ったのはヴァエルさんです。それに、記憶の中の勇者も本当なら、仲良くしたがっていましたから」
「ハッ、ワタシはとんでもないヤツを弟子に持ったと思っていたが、ここまでとはな」
「お互い、秘密は明かしたんです。改めて、師匠と呼ばせてください!」
「あぁ、好きに呼べ」
「分かりました!師匠!」
「それで、話の続きだが……」
この後ヴァエルは、自分の過去も含めて、今後襲ってくるなら狙いはワタシ達であることを話した。
秘密を明かした両者の間に疑念は無い。
───
「……そこまで猶予は無いだろうから、それまでみっちり鍛えてやる。覚悟しておけよ」
「上等です!師匠!」
「それと、住まいを変える」
「?」
「この町に被害を出す訳にはいかないからな。野宿だ」




