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オカルティック・アンダーワールド:ベート  作者: アキラカ
5.電脳異界譚

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第4話 イグニッション


 有明(ありあけ)が筐体に映し出された画面上でカーソルをスタートへ移動させ、Aボタンを押すと電灯が消えるようにパチンと周りの風景が夜の街へと切り変わった。



「?・・・・ここは」


 4人は突然()()()()に放り込まれ、周囲を見渡した。



「どうやら、首都高の上・・みたいですね」


 (ふひと)はその雰囲気から凡そを察していた。

 勿論それは有明も同じだった。


「なるほど。つまり・・・カーレースゲーム。って事ですかね」


 するとピコン!という通知音が響き渡り、目の前の空中にこれまたホログラムのような設定画面が現れた。

 そこに映し出されているのはカーレースでは定番の人気車種AE86だ。



「・・なんかめちゃくちゃ見た事あるような形式のゲームだな」


 寿々(すず)がその画面を見ながら呟くと、


三枝(さえぐさ)さんはカーレースゲームをやったりする方なんですか?」


 左隣にいた朱李(しゅり)が聞いてきた。


「いや全然!俺、小さい頃からあまりゲームに触れる機会が無かったから、本当に未知すぎるんだけど。でも義理の弟が得意で、昔はよく隣でやっているのを見ていたんです」


「じゃあ有明はやっぱりこういうゲームが得意なのか?」


 そうやって少し前方で上空に浮かぶ設定画面を眺めていた有明に向かって朱李は聞いてみた。

 すると有明は顎に右手をあてながらこのゲームの内容を把握しようと考えている途中だったようだが、大袈裟にくるりと振り返り、


「いいえ私も全くです」


 と自信たっぷりに言い放った。


「な!・・・ええ?だってここに来る前の説明だと確か、やりたいゲームが展開されるって」


「確かにそうですね。私も三枝さん同様にゲームはほとんど触れて来なかったので、これがやりたいゲームなのかすらわかりません。ただ昔は交通警察隊に入りたいという希望が多少あったような気がするので、恐らくそこら辺が反映されたのではないかと」


 そう言いながら有明はどうやって設定画面を弄れるのか辺りを探ってみた。

 すると道路の端にポリビアスの筐体がちょこんと立っているのが目に入った。


「なるほど、視覚的には先進的なのに設定はアナログコントローラーなんですね」


 そう言うとツカツカと筐体に歩みより、筐体のコントローラーで頭上に浮かぶ設定画面を操作し始めた。


「えっと・・・まずは車種選択・・と」


 そう言って十字のスティックキーを動かしながら、何があるのかを調べる。

 画面がスクロールして出てきたのは全部で6車種だった。


 〖トヨタ・AE86,GR86。日産・2000GTX-E,GT-R。スバル・WRX,BRZ〗


 一つ一つの数値を見比べながらパフォーマンスの違いを見て、有明はどの車が一番バランスが良さそうか、はたまた自分の願望に従う方がより良い走行に繋がるのかを真剣に悩んでいた。

 その様子を残りの3人はただ黙って見つめていると、


「ところで何で俺達もここに一緒に来ているんでしょうか?」


 と史がもっともな意見を述べた。


「さぁ・・・応援とか?」


 寿々(すず)も全く理解ができないままそんな暢気な事を言っていると、隣で頭上の数値をただ眺めていた朱李が独り言のように呟いた。


「この車種全部が4人乗りになってますね。一人で乗って速さを競うのであれば2人乗りの方が早い車なんてもっとあると思うんですよ」


「・・つまり。俺達も一緒に乗らないとって事!?」


「僕の見解だと、そうなると思います」


 そう言うとそれを聞いていたのか、有明が朱李に向かって聞いてみた。


「どうです?朱李さんは今一通りの数値を見てみて、どの車種がバランスいいと感じましたか?率直な意見で構いません」


 有明がそんな事を聞くのは始めてだったのか、朱李も一瞬びっくりしたが、数値を比べるのならば得意なものだ。


「そうだな・・・。多分この数値は実際の車とは多少違うのかもしれない。何故ならば速さ、安定性、エンジンの数値、そして機動性。どれも個々に特徴は出ているが、平均するとほぼ同じ数値になるように設定されている。単純にプレイヤーの得意な部分と苦手な部分を考慮して選ぶのが正解だと思う」


「得意・・ですか。そうですね・・・個人的にモチベーションが上がるのは2000GTX-Eですが。・・・やはり全員で乗り込む事を考えると馬力と安定性を考慮して、WRXが得策かと。何よりも実際に仕事でも乗った事がある車種なので」


 そう言うと有明はスバルWRX、インプレッサを選択し、決定ボタンを押下した。

 カチっという軽いアナログのボタンが押されると、4人の前に青色の車体がドットから物質化するように出現した。



「おおお」


 寿々は目の前に出現する車の現れ方が、あまりにもゲームの演出と同じ雰囲気でちょっとばかり感動してしまった。


「さぁ、早速乗り込みましょう。どうやらそこまで時間が無いかもしれません」


 そう言うと有明は上空左側に浮かぶ、見落としそうな小さい数字を指差した。

 そこにはカウントダウンをしている数字が浮かんでいる。


「え?あと30秒?」


「ゲームですからね、確かにそういうのもあるのでしょう。寿々さんとりあえず後ろに乗りますよ」


 そう言って史が寿々の背中を押した。


「ま、待て!何で(はだ)さんと三枝(さえぐさ)さんで後ろに乗るんだ?」


 時間が押し迫っているというに、何故か朱李は座席の場所で困惑しているようだ。


「何言ってるんですこんな時に。別にどこの席に乗っても変わらないでしょ」


 史がしらけた顔をして後部座席のドアを開いた。


「いいや変わる!別にこんな時に性別で優先してくれとは言わないが、率直に僕は後ろに乗りたい」


「はあ?」


 史はこの状況でいきなり何を言い出すのかと呆れてしまった。

 すると運転席に乗り込もうとしていた有明も、


「私も考えてみたのですが万全を期して、史君にはいざという時の為にが助手席に乗ってもらえると助かります」


「え?何でですか?俺は身体もデカいし助手席の後ろに乗るのが体格的にも一番バランスがいいですよ」


 と史も何故かその意思を曲げない。


「っていうか朱李さんは寿々さんの隣に座りたいだけでしょう?今はそれを考える時間じゃないですよ」


 史は苛ついているのか、朱李にはっきりとそう告げると、朱李は少しだけ押し黙り史を睨みつけた。


「・・・別にそんな事を今は考えていないですよ。・・単純に助手席だと視野が広いのでちょっとだけ嫌だなと・・その・・絶叫マシーンみたいなのは苦手で」


 朱李はどうやらスピードが速い光景を恐れて助手席を嫌がっているようだった。

 うんざりした様子でそれを聞いていた寿々は、カウントダウンがあと7秒というとこで、


「わかった!じゃあ俺が助手席に乗る!」


 そう言って即座に助手席のドアへと手を掛けた。


「ええ!!」


 3人が3通りの思惑の下、寿々の判断をまるで最悪だと言わんばかりの酷い声で驚いたが、寿々はその声を無視して助手席に乗り込むと少し荒めにドアを閉めた。


「・・・・・・・・」




 タイムオーバーの通知音が鳴り響くと車の中からの光景とエンジンが自動で起動し始めた。


 全員が急いでシートベルトを締め、体勢を整える。


「カーレースだった場合、競う相手がいるはずですけれど。今のところ見当たらないですね・・・」


 そう言って有明は右左は勿論背後もバックミラーで確認をする。

 しかしそこには車一台たりとも姿が無かった。


 と同時に目の前の道の上ににデカデカと〖5〗の数字が表示され、スタートのカウントダウンが始まった。


「・・何だかルールが良く分からないですが、とりあえずは発進しますよ!!」


 有明はサイドブレーキを下した状態でシフトレバーを1速に入れ、更に半クラッチにしたままアクセルを踏み込みエンジンの回転数を上げる。


「うう、了解です!」


 唸るように車体の底から響き渡るエンジン音に、助手席に乗る寿々も緊張を隠せなかったようで両手でシートベルトを握りしめた。



【ピ・・ピ・・ピーーーーーー!!!】


 スタートに合わせてサイドブレーキを下し、共にクラッチを繋ぎアクセルをベタ踏みした!


 ブォォォォオオオオオオオオンッツ!!という爆音が鳴り響きWRXはロケットスタートを切る。


「ヒィェッ・・・・」


 寿々は思わずその急加速に体がついていけずシートに押し込まれるように硬直した。

 有明は一気に加速させると、素早く3速にシフトアップする。するとエンジンはそのまま更に唸るように加速させ、5速へと上げる頃にはスピードは時速80㎞を超え、更に6速に上げようかとしたところで再びバックミラーへと視線を移した。


「・・・・え」


 有明はその光景を見て一気に顔が青ざめた。


【ウゥ~~~!】


 サイレンの音を響かせ、赤色灯を付けた覆面パトカーが背後から追いかけて来るのが目に入ったからだ。


「有明!?これはどういうことなんだ??」


 有明の後部に座る朱李が、状況を飲み込めずに後ろから迫るクラウンタイプのパトカー数台を目視すると焦った様子で運転席のシートにしがみ付いた。


「・・・これはゲームの使用上どっちなのか・・逃げるのが正解か、停止して応じるのが正解か」


 運転しながらも悩む有明に寿々の後部に座る史が声を掛けた。


「有明さん。とりあえずここは行けるところまで行くつもりで、このまま速度を上げて先に進みましょう。もしパトカーから逃げる事で失敗してもとりあえずはまだチャンスはあるはずです。今は一秒でもこのゲームの内容を把握する為に続行できる方を選択してください!」


 そう言われ、有明は正直こんな事をするのはマズいと理解していながらも、すぐに気持ちを切り替えると握ったシフトレバーを6速へと入れた。


「・・・わかりました。このまま130㎞まで加速しますので全員絶対に体勢を崩さないで下さい!」


 そう言うとWRXを甲高いエンジン音へと変わり車はあっという間に130㎞へと加速した。


「うぁぁぁ・・・」


 助手席の寿々はその瞬間に助手席に自ら乗り込んだ事を深く後悔した。


 目の前の景色は瞬時に移り変わり、さっきまで近くで聞こえていたパトカーのサイレン音が急に小さくなったのを感じると、トンネルへと入り環状線を内回りに走る車体の前に、突如三宅坂JCTの分岐が目に飛び込んできた。


 コースは都心環状線と決められているのか、分岐されるべき部分は閉鎖されそちらに進む事はできない。

 しかしその分岐で一瞬でも判断を誤れば置かれたクッションドラムに突っ込み失敗になるだろう。

 有明は素早く4速にシフトチェンジすると速度をセーブし、しかしそれ以上落とさないよう細心の注意をしながらJCTのカーブをやり過ごした。


 千代田トンネルと抜ける手前で先ほどまで遠くにいたはずのパトカーが再びWRXに急接近してきた。


 道が再び直線になると早速6速へとシフトアップさせる。

 そして加速させながら有明はようやく目の前のあらゆる数字へと目線を移した。


「何で私の願望が交通警察隊とのカーチェイスなのかはわかりませんが、見て下さい」


 そう言って右手でハンドルをしっかりと握りながら、左手で寿々のすぐ前辺りの数値を指差した。


「一番上がこのゲームが開始してからの経過時間です。そしてそのすぐ下、わかりますか?」


 失神しかけそうな怯えた表情の寿々、そしてその後ろに座る史、運転席にシートにしがみ付いて下を向いていた朱李も言われた場所に注目した。


 そこには時間経過と共にグングンと増え続ける数字が表示されている。

 再びシフトチェンジしてカーブを曲がると、今度のカーブは少しばかり角度がキツイようで全員が外側に体を持って行かれそうになるのを必死になって踏ん張った。


 ようやく道が直線へと戻ると加速させながら有明が再び話し始めた。


「その数字、おそらく例の報酬を得れる点数なのだと思います。そして、その右に/50000と書かれていますよね?つまりこのゲームで得られる最高ポイントは5万点。ゴールが何処なのか、それともポイント達成がゴールなのかまだわかりませんが、とにかく目指すべき目安はそれのようです」


 それを聞いて史は、


「今のところ、どちらかと言うと耐えないといけないのは俺達の方になりますけど、有明さんの運転ならあの覆面パトカーに追いつかれる事はないんじゃないですか?」


 と聞いてみたのだが、


「どうだろうねぇ。・・・ゲームである以上このままただ運転すればクリアできる程簡単だとは思えないけれど・・」


 浜崎橋JCTを超えたところで数値はあっという間に1万点を超えていた。


「にしても、そうなると雑な予測ではあるけれど、一人当たり最低2万5千は絶対に獲得しないといけない事になるんだな・・」


 朱李がそう話したところで隣の史が疑問を述べた。


「あの報酬一覧にはスキルを上げる項目もあったはずです。(ソウル)の数は言うまでもないですけど、パワーアップ、マジックアップ、などはこのゲームに関しては何を基準にしているのかちょっとわからないですよね。あとアタックとディフェンスに関しても」


 そう言ったところで助手席で身を屈めるようにして震えていた寿々がサイドミラーに映る影に驚いた。


「左後ろから黒いバイクに乗った人が近づいて来ています!!」


「何!?」


 有明はそう言われ、死角になっているところを急いで目視すると、突如現れた黒いレーシングスーツを着て黒いヘルメット被った黒いバイクの男が急接近したのと同時に伸縮式の警棒を取り出した。


 ガゴンッ!!


 そう言って鈍い打撃音が車内に響き渡った。

 幸いガラスが割られることはなかったが、目の前で警棒で攻撃された史は一瞬身構えてしまった。


「史!大丈夫か!?」


 寿々が慌てた様子で史の無事を確認する。


「・・・大丈夫です。なるほど、使用上ガラスまで割られる事なさそうですが、こういうのがあるからディフェンスの数値を上げる必要もあるって事ですか・・・」


 史が話したのと同時に汐留JCT先のトンネル内へ入っていった。

 そして中に入ると同時に今度は右側からも同様の黒のバイクが急接近してきたのが目に入った。


「くそっ・・」


 思わず普段は使わないような言葉が自然と有明の口から洩れた。

 バイクの男は先ほどと同じように警棒を取り出すと一気にリアウィングに向かって振り下ろしてきた。


 ガゴン!!ガゴン!!


 容赦なく2発が入れらる。


 近場にいた朱李はすぐにでも逃げ出したい気持ちで一杯だったが、これがただのゲームであってこの後自分達も何かしらのゲームをプレイしなくてはいけないのならば、ここでたとえ怪我を負うような事があってもそれでハンデなったり死ぬような事には絶対にならないはずだと強く信じ込み、何とか精神を保つ事に集中した。


『どうすれば・・・まさかぶつけて転がすわけにもいかないし』


 その有明の考えを悟ったのか、史は襲ってくる右後ろのバイカーに注意しながら話しかけた。


「有明さん!これはあくまでもゲームです。立場上嫌かと思いますが、少しでも危険を回避する為にもあのバイクが次に近づいてきたら当てて転がしましょう」


「しかし・・」


 有明がそれを躊躇っていると、


「右下の車体図を見て下さい!」


 そう言われてフロントガラス右下に表示された車体の全体バランスを表す図に目を向けた。


「たった2発ですが、右後方の車体損傷が一気に黄色の警告判定になっています。もし次に攻撃を受けて赤判定になれば、一気に車体バランスと走行速度に支障が出る可能性があります!」


 確かに史の言う通りだった。このまま呵責に苛まれたとしてもここでそれをやらないよりかは遥かにマシだと思える。


「来ました!」


 史が再びそう言うと、有明はサイドミラーを確認しながらバイクが接近してくるのをそのままの速度で待ち受けた。

 そして近づいてきた黒ずくめののバイカーが再び警棒を振り上げたその瞬間。


 一気にブレーキを掛けるとバイクはリアバンパーにガガン!!という音共に接触し、バランスを崩すとハンドル操作不能な状況に陥り、スピンしながら派手に横転していった。


「・・・・」


 有明は何とも嫌な気持ちになって顔を歪ませたが、後部に乗る朱李と史は同時に「やった!」と声を合わせて歓喜している様子だった。


 だが、それも束の間だった。

 右に気を囚われていた4人は左からのもう一台のバイカーに全く気付いていなかったのだ。


 ガゴン!ガン!!


 という金属音と共に車体図左後方が一気に赤くなりフロント上部に〖車両損傷!!〗の警告が表示された。


「しまった!!」


 そう言うのと同時にWRXは急激にグラリグラリと激しく左右に揺れ始めた。

 そのままの速度では到底走れるわけがない。

 しかし有明はその振られる車体を利用して、更にハンドルを左に切って、次の攻撃を準備しだしたバイカーへと車体をぶつけた。


 ゴゴン!!という先ほどと似た音ともに、同じようなモーションとスピンをして転倒するバイク。しかしこちらもこのままの速度で走り続けるのはもはや不可能に近かった。


【ウゥ~~~~!!】


 速度が落ちるのと同時に再び後方から覆面パトカーが追いかけて来るのが見えた。


 場所は神田橋の合流を過ぎ竹橋JCTに入る手前に差し掛かったその次の瞬間。

 後方から迫る時速100㎞を超えたクラウンのパトカーはとても人が乗っているとは思えない躊躇いの一切ない速度のまま一気にWRXの後部へとぶつかってきた!


 バンッ!!!!


 まるで何かが破裂したような高音が全員の耳を通り抜け、そして車体はそのまま首都高速都心環状線から押し出され宙に舞い上がった。


 誰もがこれは死んだな・・・。

 と思った次の瞬間。



「!!?」


 気づくとそこは一番最初にスタートした、ポリビアスの筐体がある場所に瞬間移動するように戻されていたのだった。



「・・・・・・・・・」


 全員が今しがた襲われた恐怖に言葉を失い、その場にへたり込んだ。


 暫く放心状態の4人はその時間がまるで何時間にも感じたし、実際はたったの10秒程だったかもしれない。


寿々(すず)さん・・大丈夫ですか?」


 (ふひと)は立ち上がりながら、目の前の寿々へと近づいた。

 寿々は完全に放心状態のようで顔が真っ青だった。


「大丈夫・・・なんだよな?」


 むしろ何故今無事なのか、そっちの方が不思議で仕方ないと言った様子だ。

 隣いた有明(ありあけ)も立ち上がると、後ろにいる朱李へと声を掛ける。


朱李(しゅり)さんも大丈夫ですか?」


 朱李も寿々同様に何故あの速度で追突されて吹っ飛ばされたのに無事なのか。

 ゲームだからと分かっていてもやはり脳がバグって即座の理解が追い付かない様子だ。

 しかしすぐに首や背中などを摩り、


「・・あれだけの衝撃だったら怪我でもしていそうなものだが・・・一応何でも無さそうだな」


 とまだ恐怖で痺れるような感覚が残る両手をグーパーさせながら確認した。


「はぁ・・・・これが私が望んだゲームだって??絶対に信じられないですよ!全部がストレスでしかない!」


 有明はそう言いながらその場で屈伸をして首を回す。

 しかし立ち上がった史は頭上に浮かび上がる画面を見て指差した。


「でも・・見て下さい」


 そう言って獲得された点数に全員が注目した。


「41500点!!」


 その数字に一番驚いていたのは朱李だった。

 当初話していて一人当たりの目標獲得点数より遥かに多い。

 これならば、他の3人が少しばかり点数が少なかったとしてもそれなりに補える分はあるような気がした。


 画面上部にも〖リプレイと次のプレイヤーの二項目が表示されている〗


 それを見て史は、

「有明さん、どうしますか?このままもう一度チャレンジして更に点数を稼ぐか、辞退して次のプレイヤーに交代するか・・・・」


 史としては先のゲームが分からない分、もし有明が了承するならばもう一度やって少しでも高得点獲得を狙ってくれる事を期待していた。

 もしかしたら次は5万点まで到達できるかもしれないからだ。


 しかし有明は腰に手を置き目を瞑ると、


「・・・悪いがここで辞退させてもらいたい。これ以上難易度が上がったとして、例えゲーム内とはいえ、誰かを轢き殺さないといけないとかになったら、とてもじゃないけれど私の精神が持たない。申し訳ない」


 有明の申し出に3人が文句など言えるわけがなかった。

 それに先ほどの追突された恐怖。それをもう一度味わう可能性を考えればそれもやはり無理な話だった。


 寿々と史、朱李のが顔を見合わせ無言で頷くと、


「わかりました。じゃあ次のプレイヤーにいきましょう」


 そう言って疲れ果てた有明を休ませ3人で集まり、


「さて、じゃあ次は誰がいきますか?俺でもいいけれど、有明さんの例をみるとどうも()()()()ゲームってのは嘘なんじゃないかと思えてきました。なので得意ではあるけれど使用上苦手な演出が多く含まれる可能性があります。俺は万が一ヒトコワなどの要素が絡む内容だった場合、途中で投げ出すかもしれません。そうするとその後のプレイヤーのプレッシャーは増えますが。どうですか?」


 寿々と朱李はお互いに目を合わせ、確かに後ろになればなるほどプレッシャーの重圧がかかる事を危惧した。

 しかしそれは誰がやっても同じ事だ。


「じゃあ俺で!」

「僕がやる!!」


 2人は同時に返答をする。


「え?」

「あ・・・」


 そして同時に気まずくなり、しかしそれは寿々の方が上回っていたようだ。


「ごめん・・朱李さん。情けない事に日和って先んじてしまって」

 素直にそう言うと寿々は、


「もし朱李さんの準備がいいのならば、先にプレイしてくれ構わないよ」


 と少しだけ虚勢を張って答えた。

 朱李も少しだけ悩んだが、やはり最後のプレッシャーによって2万5千点に届かなかった場合のショックはより大きいものなるのは確実だ。


「三枝さんすみません。やっぱり最後の方になったプレッシャーに耐えられるか自信がないので・・・」


 いつも格好良く余裕ある自分を見せている朱李のそんな姿を見たら、寿々だって自分に譲ってくれだなんて言えるわけがなかった。


「もちろん!俺達に出来る事があるのかはわからないけれど。・・気をつけて」


 寿々がそう言うと朱李はゆっくりと頷いて立ち上がり、筐体へと近づいた。


 そして点滅するカーソルを〖次のプレイヤー〗に動かすと、一度大きく深呼吸をしてから決定ボタンを押下した。





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