第3話 ポリビアス
警視庁本部地下2階
公安三課・第5班〖特務係〗 通称:ニル
通称と言っても公安内でもその名を呼ぶ者はごく一部に限られている。
かつては『ゼロ』とも呼ばれていたその部署は、10年以上前に一度解体させられ、今は更に規模を縮小して署内でも実際に『無』のような存在として地下倉庫の更に奥の扉の先に配置されていた。
「ちーっすお疲れちゃ~ん」
そう言ってガラの悪そうな垂れ目の小柄な女が部屋の中へと入ったきた。
身長150㎝台半ばだろうか。レイヤーカットのセミロングを搔き上げ、ダボッとした黒いセットアップのパンツスーツを着た女は、まるで煙草のように棒付きキャンディを口に咥えている。
パッと見た感じはまるで昭和のヤンキーのように見えなくもない。
「おはようございます中尾さん」
そう言って机に向かって何かを調べていた有明白朗は、目線だけで中尾に挨拶を返した。
「有明、いいか?」
「はい」
そう言うと中尾は目を瞑ってすっと息を吸い、天井に向けて右手をバッと翳したかと思うと、まるで天からのエネルギーをその手に集めるようにグググと力を籠め始めた。
「どうぞ!」
有明が相変わらずPCから視線を外さずにそう言って手を差し出すと、
「ん~~~!!有明の正体は・・・・・M・I・B!!」
と腰に手を当て、左手でビシっと有明を指差した。
「ブブー、外れです」
「だぁ・・・マジかぁ、今回のは結構自信あったんだけどなぁ・・」
そう言うと中尾は口に咥えたキャンディを取り出し、本気で残念そうに自分の席に持っていたコンビニ袋を乱暴に置いた。
「これで38連勝ですね」
有明は平然と中尾に言い返した。
「大体さぁ~ムズすぎなんだよねぇ。テレパシーの能力があるのはわかってるけど、有明ってマジ何なん?そろそろ吐いちゃってもいいじゃない?」
「そう言うわけにはいきません。こればっかりは上に口留めされているので」
「上ねぇ~」
中尾は椅子にドサッと腰を掛けると再びキャンディを口に咥え、コンビニの袋から大量のお菓子を取り出して机の上一面に広げた。
「それにしても毎日毎日凄い量ですね」
有明も中尾のそのお菓子の山を見てドン引きしている。
「これはうちにとってのガソリンなんで~」
と言いながらコンビニで見かけた新発売のグミの袋を開けた。
口の中のキャンディを一旦出すと、そのグミを数粒一気に頬張る。
「あ、やばこれうまっ!」
ちらりと横目で見た有明は、その食べ方も含めて苦い顔をすると、
「そんなに糖分ばかり摂っていて糖尿病とかにならないんですか?」
と質問をしてみた。
「ならない、ならない。うちの糖分は全部能力へと変換されちゃうんで」
「能力・・・それっていざなぎ流の呪力ってことですか?」
「まー正確には呪詛の方ね」
「・・・・・」
有明は中尾の力をすでに何度も目にしているので、その力そのものを疑ってはいなかった。が、本当に山盛りの菓子の糖分がそのエネルギー源になっているのかは疑いの目で見ていた。
「んで?係長は?」
中尾は再びキャンディを口に戻しながら立ち上がり辺りをキョロキョロと見回す。
「いますよ」
有明はそう言うと一番奥に簡易的に作られた小上がりになった畳スペースの上で横たわる毛布の塊を指差した。
「あ~~・・・また家帰れなくてあっこで仮眠ってわけか。かわいそ~」
そう言いながらずっとPCを見ている有明が気になった中尾は、背後からずいっと顔を近づけその画面を確かめた。
「なんそれ?・・・被疑者?」
そこに映し出されていた二人の人物の画像を見て、中尾は視力が悪いのか目を細めた。
「今私が個人的にどうしても協力をしてもらい二人です」
「協力ぅ?このちっさいのとでっかいの?」
そう言って画像と共にデータベース化された名前を確認する。
「三枝寿々・・・と秦史・・・。この二人って何の能力があるっていうの?」
中尾が不思議そうに問いかけると、
「三枝さんは予知的な力があるのか、目に見えない危険性を察知する能力があります。史君の方は、能力で具現化された物質に対して直接攻撃ができます。しかし、それはあくまでも私が目で見ただけの力にすぎず、恐らく本質的なものはもうちょっと違うのかもしれません。例えば史君のは・・・中尾さんとも近い呪力なのではと」
有明はそう言うと腕を組んで椅子の背にもたれた。
「はは~ん・・・。あ、わかった!目を見れば分かるわこの子。狐だ。しかも眷属としての狐の力を持ってるんだ」
中尾はそう得意げに答えた。
「流石ですね。確かにそういう類のものなのかもしれません」
「えへへ~、犬や狐はうちの専売特許なんでねぇ」
「じゃあ、こっちの三枝さんは何だか分かりますか?」
「う~ん・・・・うん?う~~~~ん・・・」
中尾も腕を組みながら悩み、首を右へ左へと傾げ続ける。
そして再び目を細めながら画面に近づくと、
「これは・・・なんだ?なんだこいつ?鬼でもあって天狗でもあって・・・いや、でもそれのどちらでもない??」
と困ったように呟く。
「・・・天狗?なるほど。鬼は分かりませんが、天狗の方がイメージに近いかもしれません」
「んで?この狐と天狗はワンセットなわけ?」
「はい。ワンセットで取り込みたいんです」
「・・・・つーかまさかこいつら付き合ってる?」
「え??そうなんですか?それは・・気づきませんでした」
中尾にそう言われて少しだけショックそうな顔を見せた有明を中尾はニヤリとした顔で眺めた。
「そうかそうか~、有明はこっちの天狗が気になってたんかぁ」
同情するようにそう言うと、中尾は有明の肩をドンマイと言わんばかりにトントンと叩いた。
「なまじ何でも分かっちゃうのは、こっちとしても面倒ですね」
有明は特にそれを怒るわけでもなく溜息をつくと、再び画面へと近づいた。
「・・・・中尾さん」
「ん?」
「この二人に呪詛をかけてもらう事って出来ますか?」
「はぁ?」
有明はそう言いながら初めてしっかりと中尾の方を向いた。
しかも笑う顔は悪そうな表情をしている。
「呪詛って例えばどんな?」
「ちょっとだけ不幸になるやつ?」
そう言って親指と人差し指でほんの少しのジェスチャーをする。
「ちょっとだけって、お前・・完全にそれ逆恨みじゃん」
中尾はてっきり有明が恋する前に失恋した事に嫌がらせでもしたいのかと呆れてしまった。
「違いますよ。私怨は全くなく、少しだけ刺激を与えた場合どんな事件が彼らに近づくのか。それが知りたいんです」
「はぁ・・・できなくはないけれど。またろくでもない頼み事だなぁ」
そう言うと中尾は髪の毛をガシガシと掻き、机の中から乱雑に押し込んだ和紙をどさっと取り出した。そしてそれを器用に折り畳んで小刀を用意する。
それは高知県の民間信仰『いざなぎ流』に基づく神事で使用する御幣と呼ばれる祈祷用の紙細工だ。
あっという間に多種多様のミテグラを作り竹串に刺し、さらに提婆の幣を藁で編んだ輪に刺し祀り上げようかと思ったその時、有明のスマホに着信が入った。
着信先は身辺警護の担当になっているあのオカルトラボからだ。
「もしもし?」
「有明だな!?」
通話の先から聴こえてきたのはオカルトラボ代表東海林藍李の妹、朱李の声だった。
「どうかしましたか?」
有明は正直言うと、この東海林朱李が若干苦手であった。
苦手というか、率直に面倒なタイプだと感じていた。
年齢など一切構わずとにかく高圧的に挑んでくる。
有明は比較的性別や年齢に対する固定概念は無いタイプであったが、それでも朱李の無礼で人を上から見るような可愛げのない態度には少々うんざりしていた。
「有明、お前何処にいる!?もし警視庁にいるのならすぐに東京ドームのゲームセンターまで来てくれ!」
「はい?東京ドーム?何があったんですか?」
電話先の朱李の態度と焦りようが伝わってくる。どうやらそれなりに大変な状況のようだ。
「今日、坂口とアガルタの依頼による実地検証を行っていたのだが、その途中で・・・坂口が消えた」
「え?坂口さんが?消えたってどうやって」
「分からないんだ!僕の背後は袋小路になっていて、その壁際にいたはずなのに、一瞬だけ目を離したら次の瞬間には忽然と姿が消えていたのだから」
有明は朱李が一体何を言っているのか状況を上手く飲み込む事はできなかったが、もし言っている事が本当ならば何か奇妙な状況に巻き込まれているのは間違いなさそうだった。
それにまたもやあのアガルタ編集部との繋がりの事件だ。
これはやはり何かしらの因果がアガルタにあるのか、はたまた朱李にあるのか。
どちらにせよ有明の直感がピンと働いた。
「朱李さん、私の他に誰かを呼びましたか?」
「え?・・・今さっきアガルタ編集部の担当の三枝さんって方に来てもらうようお願いしたばかりだが・・。何でそんな事を?」
その言葉を聞いて有明は『ビンゴ』と心の中で呟いた。
「わかりました。朱李さんはとりあえず店の外に出て待機していて下さい。令状はすぐには出せないので捜査できるかは分かりませんが、私が店の方へ直接協力をお願いしてみます」
そう言うと通話を切って急いで立ち上がり、背もたれに掛けていたジャケットを羽織った。
「中尾さん、ちょっと急ぎで出ます!」
「あ?」
呪詛の準備中だった中尾は口に小刀を加えたまま有明を見上げた。
「その呪詛、する前に効果でましたよ。早速向こうからチャンスがやってきました」
やや楽しそうに言うと、中尾はやれやれといった顔をして。
「りょーかい。じゃあいつものようにうちはここで待機してるから、何かあればテレパシーで呼んで」
「わかりました」
そう言って有明は少しだけ急ぎで走り出すと、
「有明!」
「はい?」
呼ばれて振り返った瞬間、後ろから結構な速度で一本のビニール傘が飛んで来た。
「!」
バシというなかなか重たい音をたてて受け取ると、
「ちゃんとテレパシーのスイッチオンにしときなよー」
と中尾は再び甘いお菓子の袋をバリっと開けながらヒラヒラと手を振った。
午後4時
有明白朗とオカルトラボの東海林朱李。
そしてアガルタ編集部の三枝寿々と秦史は、今の今まで消えたオカルトラボの職員坂口を探して、東京ドームに隣接するゲームセンターの倉庫にいたはずだった。
しかしそこで見つけた『ポリビアス』というアーケードゲームの筐体に、朱李が触れた瞬間、4人は見た事のない白いグリッド状の空間の中へと転送されてしまったのだった。
「何だここは!!」
朱李は辺りをぐるりと見渡しその不可思議な場所に驚愕した。
「・・・・・」
有明は何となく予想をしていたような落ち着きがある。
一方寿々と史もこの状況はある程度想定済みだった、とでも言いたそうな表情でお互い見つめ合った。
そして4人の前には件の筐体が白い空間にポツンと置かれている。
「・・・こいつの仕業なのか?」
寿々はポリビアスの筐体を見ながらそう呟いた。
全員が筐体に注目したと同時に、突如筐体の背後からサングラスを掛けた黒服の二人の男が両脇にニュ~ウッと姿を現した。
「!!!」
全員がその場から一歩下がって咄嗟に身構える。
「誰だ!」
史は寿々を守るようにして前に立ちはだかり、二人の黒いスーツを着た男に質問をした。
「ここは〖ポリビアス〗あらゆる電脳異界へとアクセスできる夢の空間!」
最初の口を開いたのは筐体の左に立つ黒服Aだった。
「君たちは選ばれし幸運の使者!是非ともこの世界で思う存分ゲームを楽しんで!!」
そう続いたのが、筐体右に立つ黒服Bだった。
どちらも同じ造形をしている。身長190㎝くらいのガタイのいいラテン系の見た目に、真っ黒なサラサラのボブヘアに光を通さない真っ黒なサングラス。そして黒いスーツに黒いネクタイ、黒い靴。
まるで双子のようだが唯一違うのはシャツの色だ。
黒服Aのシャツは青、黒服Bはピンクのシャツを着ている。
4人はその言葉を聞いて暫く無言になった。
「ゲームを楽しんで・・・だと?」
朱李は顔を顰めながらもこの二人の意図が読み取れずに困惑した。
見れば有明は懐から拳銃を取り出して黒服A頭へと照準を合わせている。
そして警戒をしながらそろりそろりと左に進み、黒服Aの右側へと移動した。
「有明さん!?」
寿々が声を上げたが、それを史が止めた。
「寿々さん、動かないで・・・」
有明はそのまま微動だにしない黒服Aへと近づくと、銃を眉間に向けたままゆっくりとその黒服へと手を伸ばした。
すると有明の左手が触れた瞬間、その部分だけが液晶モニターのドット飛びのように像が乱れた。
「やはりな・・・」
そう言うと有明はそのまま黒服の腹の中まで手を伸ばし、左右へと振ってみたが、同様にドットが乱れたようなサブピクセルがチラつく光が広がり、黒服に触れる事は出来そうにない。
「なるほど、つまりホログラム、のような存在ってことですか」
そう言うと有明は銃を下し、安全ロックをかけると再びスーツの中のホルスターへとしまい込んだ。
「どうもこの二人は、この空間の番人と言った感じのようです。そしてこの場所でできる事はさっきの言葉通りならば、ゲームをする事・・・なのでしょう」
「はぁ?ゲーム?ゲームをすればどうなるんだ?」
朱李が飽きれたように話すと、突然それまで微動だにしなかった黒服Bがぐりんと体を捻らせ筐体に向けて動き出した。
「!!」
近くにいた朱李は再び驚いて飛び退き、寿々のすぐ近くまで下がる。
黒服Bは不気味に体の上半身だけを筐体へと捻ると、筐体のボタンをカチっと押した。
【チャッチャララ~~♪ティ~~ティ~~ティ~♪】
筐体から出て来た音は甲高く耳ざわりな何ともレトロなゲーム音楽。
複雑さの欠片もない極めて単純な音でありながら、何故か音階がとても不気味で不穏な雰囲気を醸し出している。
すると画面が光だし文字が浮かび上がった。
『ようこそポリビアスへ・・・ここは誰もが思う存分好きなゲームを好きなだけ遊べる夢の世界。君が望めばどんな知らない世界でも、どんな未知の職業でも、どんな難解な推理でも味わう事ができる。・・・ではルールを説明しよう。君たちにはあらかじめ2回分の魂がある。これがそのマークだ』
そう言って画面には大きく青色の火の玉のようなマークが表示された。
そしてゆっくりと黒の画面へと戻ってゆく。
『この魂が全部無くなったらゲームオーバー。君たちの負けだ。そしてこの世界では必ず一人一つのゲームに挑戦してもらう。ゲームの内容はさきほど言ったとおり、君たちがやりたいと望んだゲームが展開される。そしてゲームで得た点数によって報酬が得られる。開始する前に是非ともオプション画面で確認する事を推奨する。準備ができたら一人ずつスタートにカーソルを合わせ開始してほしい』
4人はその文字を確認する為に一気に筐体へと近づいていた。
「もしゲームオーバーになったらどうなるんだ?」
史は答えてくれるかもわからない筐体に向かって口頭で質問をした。
『・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・』
暫く中黒の記号が表示され続ける。そして、
『ゲームオーバーはゲームオーバーだ。負け、つまり〝死〟だ』
「・・・やっぱりそうなるのか」
史はそう言って舌打ちをした。
「なぁ・・質問していいか?」
朱李は3人に向かってそう聞いた。
「どうしましたか朱李さん?」
有明が代表して聞くと、
「本気でこの空間は何なんだ?これは前回のような〖夢〗の世界なんだよな?」
そう真剣な顔をして聞いたが、有明も史も寿々もどう説明するべきか分からず顔を見合わせた。
すると寿々が代表して話し始めた。
「夢かどうかはこの世界を出てからじゃないと分からないと思います。でも実際に今自分の皮膚を抓ってみればきっと普通に痛いと思いますよ?」
そう言われて、朱李は自分の頬を摘まんで抓った。
「痛っ・・・い」
その痛みを感じて、現時点でこの場所にいる自分というのは、決して睡眠中の夢にいるわけでないのだけは理解した。
「じゃあなおさらここは一体何処なんだ・・・?」
科学者である朱李は、超自然的な現象をそのまま受け取る事はできない。
だからこそ何か理解しえるだけのソースが無いととてもじゃないけれど気が狂いそうでもあった。
頭を抱え考え込む朱李を心配した有明は朱李に近づくと、
「とりあえず私が先にこのゲームを試してみますので、朱李さんはそこから何かこの空間とこのゲームの仕組みについて考えられる事全てを科学的に記憶して分析してください」
「記憶・・・分析・・科学的に」
そう言われて朱李は少しだけ思考が戻ってきたような気がした。
更に寿々も続けて、
「ここに連れてこられたのがこの4人である事には恐らく意味があると思うんです。それも含めて一番冷静かつ客観的にこの状況を分析できるのは朱李さんしかいません。だから俺からも是非ともお願いします」
『なるほどそれならば得意だ。・・・それに三枝さんにお願いされると何と言うか、不思議とやる気と自信が湧いてくる』
朱李はそう思うと、再びきりっとした表情に戻り寿々へと向き直った。
「わかりました。まずは全ての事象を観測し、僕の思考で考えられる限りの解決策を導き出します。・・・なので絶対にここから一緒に抜け出しましょう」
「もちろん!」
寿々は自分では解決できる自信なんて1ミリもなかったが、それでも寿々という男はそういう男なのだ。
確証もなく例え虚勢だとしても、絶対に最後まで周りを絶望させるような事だけはしたくない。
それは自分が本質的に憶病でネガティブな人間だからこそできる事なのかもしれない。
しかしこんな状況だというのに、その二人のやり取りを目の前で見ていた史は思わず舌打ちが出そうになった。
だがここで再び寿々に注意でもされれば、メンタルがまた危うくなるのも分かっていたのでそこはグッと歯を食いしばって堪えた。
「では・・まずはさきほど言っていた報酬について確認しておきましょう」
そう声を掛けたのは有明だった。
有明はここまでの3人の関係を観察しながらも、至って冷静な様子だった。
実際の心の中は・・・誰にも分からない。
筐体画面を確認すると、ドットで描かれたポリビアスのタイトル文字の下に並ぶスタート、オプション、クレジットの中からオプションを選択する為に慎重にレバーコントローラーを下へと動かした。
そしてAボタンを押す。
するとそこにはいくつかの報酬項目がずらりと並べられていた。
『報酬
1,魂×1・・・・・1000
2,魂×2・・・・・1900
3,魂×3・・・・・2500
4,アタックオブジェクト・・・・・・1500
5,ディフェンスオブジェクト・・・・・・・1500
6,ヒント・・・・・・300
7,アシスタントデコイ・・・・500
8,パワーアップ・・・・・・1500
9,マジックアップ・・・・・・1500
10,スピードアップ・・・・・1500
11,メンタルアップ・・・・・1500
12,インテリジェンスアップ・・・・・1500
13,スキップ・・・・・・30000
13,エスケープ×1・・・・・50000
14,オールエスケープ・・・・・1000000
15,サカグチ・・・・・50000 』
そこまで見て有明はその項目の一番下に坂口の文字がある事に注目した。
「坂口さん!?」
その言葉に朱李もズイっと顔を突っ込んで確認をした。
「そんな!坂口が報酬に入っているのか?しかも脱出一人分と同等だと?」
それを知って全員が眉を潜めた。
ここまでやって来て万が一の状況になれば、坂口を見捨てないといけない可能性すらあるからだ。
「・・・とりあえずはすべてのゲームの難易度次第ですね。普通に推測すれば、難易度の高いゲーム程獲得特典が高くなるとは思いますが・・・問題は誰から始めるか・・・・」
史がそう言って顔を上げるとすぐ目の前の人物と目が合った。
「まずは私がやりましょう」
そう言ったのは有明だった。
「有明さんはゲームは得意な方なんですか?」
寿々が聞くと、
「いいえ全く」
と言ってにっこりと笑った。
『はぁあ??』
全員が脳内で同じ反応が思い浮かんだ。
しかし、どのみち全員が一人一つずつゲームをプレイしないといけないのだ。
そして場合によってはゲームオーバーになる可能性もある。
そうすれば『死』が待っている。
文字通りこの世界からの脱出は失敗する。
だからこそ誰から始めたところでそこは何も変わりは無い。あるとすれば、もし一番最初に有明がゲームオーバーになったら、あとの全員のメンタルが崩れ次のプレイに確実に影響がでる事だろう。
「わかりました。どのみち始めない事には仕組みも解決策もわかりませんからね。魂も一つで終わるわけじゃないですし、そこはまずは一回やってみてから色々と考えてみるべきなのかもしれません」
寿々が少し見上げるように有明に答えた。
有明は寿々のその言葉が気に入ったようで再びにっこりと笑う。
「私も同意見です」
史はもう一度画面に目を戻し、指差した。
「状況にもよりますが、やはりここは最初から10万のオールエスケープを目指しましょう。オールである以上、この中に坂口さんも含まれているのではないかと思います。他の選択肢については戦況によって考えなくてはですが。そんな事にならないよう全員でノーデスオールポイントを狙うつもりでお願いします」
「・・・史君、最初からプレッシャーを掛けるのはどうかと思うよ?」
余裕そうに見えた有明ではあったが、やはりそこは内心不安がないわけもない。
それを聞いて寿々も再び史に苦言を呈した。
「そうだぞ、もし俺だったら今のでだいぶメンタル削られてるからな」
「・・・・すみません。ちょっと気合いを入れ過ぎました」
再び注意を受けた史は何だかより一層メンタルが落ちたようにも見えた。
「さて。じゃあ気を取り戻して、まずはチュートリアルのつもりで行きましょうか」
そう言うと、有明はカーソルをスタートへと移動させ、全員の顔を見ると覚悟を決め、ボタンをカチリと押下した。




