第三十九回 デスマーチの悲鳴と、コメント欄の大炎上
「ミモ〜、今日の膝枕はとってもポカポカして気持ちいいよぁ〜」
「ルピちゃん、頭をなでなでしてあげますぅ〜。……あ、そういえば最近、毎日使う小麦粉やお砂糖がほんの少し安くなっていて、とっても助かってますぅ〜」
「ほんと? それはすごく良かったねぁ〜!」
膝枕をしたミモザがルピナスの髪を優しく撫で、ルピナスはミモザの腰に腕を回してうっとりと目を細める。
『てぇてぇの極み……』
『この空間だけ時間がゆっくり流れてる』
『一生見ていられるチル空間』
『物価安くなったのは嬉しいねぇ』
二人が頬を寄せ合って幸せそうに微笑んでいると、コメント欄に異質な文字が流れ込んできた。
『限界関税局員:助けてください……毎日関税が0.04%単位で微修正されてデスマーチが終わらないんです……もう1週間家に帰れてません……ルピミモのチルを補給しにきました……』
『リスナーA:えっ関税局員!? なんか生々しいやつ来たぞ』
『リスナーB:1週間帰れてないってどういうこと??』
『限界関税局員:毎日毎日、各国から小数点以下の関税引き下げ書類が届いて再計算の嵐なんです……』
『説明ニキ:待て、さっきミモザちゃんが「小麦粉と砂糖が毎日少しずつ安くなってる」って言ってたよな?』
『説明ニキ:関税が毎日微みょうに下がる=仕入れ値が下がる=小麦と砂糖が安くなる……繋がったぞ!?』
『G・ガルシア:……なに!? 我が国以外の関税も動いているというのか!? お前たち、まさか何かしているのではあるまいな!?』
『東方の旅人:愚問! そちらこそ密かに0.02%ずつ下げて推しに点数稼ぎをしているのではないか!?』
『砂漠の隠者:白状しろ! 1%未満ならバレないと思って毎日いじっていたのは誰だ!!』
『北欧の隠者:お前ら全員やってただろ!!』
『リスナーC:ええええええ!?』
『説明ニキ:コイツら(ロイヤル勢)が推し活で関税を日替わりで改定しまくってたから関税局がデスマーチになってたのかよwww』
『リスナーD:職人を家に帰してあげて!!!』
『リスナーE:国家権力の私物化やめろwwww』
『ロイヤルの自爆で大炎上してて草』
画面の向こうで王皇太子の覆面アカウント同士が不毛な罪のなすりつけ合いを始め、真相を理解したリスナーも総突っ込みを入れてコメント欄はかつてない大荒れ状態に突入する。
しかし、画面の中の二人は至って穏やかだった。
「ミモ〜、コメントがたくさん流れていって、お星様みたいで綺麗だねぁ」
「はいですぅ〜! みんな元気いっぱいでハッピーですぁ〜」
大炎上するコメント欄を背景に、ルピナスとミモザは互いに「えへへ」と笑い合い、さらにおでこをコツンと合わせてチルな世界に浸るのだった。




