第三十五回 迷料理教室とメレンゲ職人の誕生
「〜〜♪ 今日の『お花畑お料理教室』は、ふわふわの特製ハッピーパンケーキを作るよ〜、ミモ!」
「はいですぅ〜! ルピちゃん特製のハーブソースをたっぷりかけて、みんなでハッピーになりますぁ〜!」
エプロン姿のルピナスがミモザの帯をそっと結び直し、ミモザもルピナスの耳元へ小さな粉を吹きかける。ふたりの鼻先が触れ合い、ふんわりと頬が朱に染まった。
『お料理配信きたあああ!』
『狂室の予感しかしないwww』
『小麦粉まみれでイチャついてて草』
『後ろの執事たちの顔www』
「ルピナス様、ミモザ様! 火加減はお任せを……ああっ、ミモザ様、砂糖と塩が!」
「ルピちゃん、小麦粉が目に入っちゃいましたぁ〜」
「大変だ! ふーふーしてあげるね! ふー……ふー……」
「あたたかいですぅ……」
ヴァルデマールが手帳を落とし、額の汗を拭いながら絶叫する。テレーゼも魔導バリアを展開し、飛び散るハチミツを間一髪で弾き飛ばした。
『カオスすぎるwwww』
『誰か卵白泡立てろwwww』
「あ! メレンゲ忘れてた! ガレット、ちょっとこれふわふわにしてくれないかな!?」
「……承知」
キッチンの隅で腕を組み、静かに控えていた巨漢ガレットが一歩前へ出た。巨大な泡立て器を掴み、猛烈な速度で腕を振るう。ボウルの中で白い波が激しく渦を巻いた。
『ガレット参戦wwww』
『筋肉メレンゲ草』
『プロの菓子職人:肘を固定しろ!』
『職人ニキ:ボウルを少し傾けて空気を抱き込め!』
『職人ニキ:ツノが立つまで手を止めるな!』
ガレットは無言のまま視線をコメント欄へ走らせた。角度を修正し、手首のスナップを速める。
「……こうか」
ピシッと立った完璧なツノを掲げて見せる。
『『『完璧なツノだーーーー!!』』』
『プロ:……見事なキメだ』
『メレンゲ職人(非公式)爆誕www』
『ガレット(非公式:メレンゲ職人)草www』
「わあ! ガレットのおかげでふわっふわだよ〜!」
「ガレットさん、すごいですぁ〜!」
「……自分は、ただ立てただけだ」
ガレットは照れくさそうに明後日の方向を向いた。ルピナスとミモザは焼き上がったパンケーキを前に、お互いの口へ同時に運び「ん〜っ!」と笑顔を咲かせる。
『ガレットちゃん可愛いwww』
『王都カフェでこれ出したら即完売だな』
『今日も最高のてぇてぇだったww』




