第二十八回 緊急株主総会とイチャイチャ
「――これより、子会社『株式会社お花畑ハッピーピクニック・ジャパン』の緊急株主総会を開会する」
アイナール・ホールディングス本社の巨大ホール。重々しい雰囲気が立ち込める中、アルベルトCEOは静かに葉巻の煙を吐き出し、深く低い声で告げた。
「本日は、子会社役員の報酬『手取り10万ペル』に関する一連の騒動、および市場への混乱について、親会社としての見解を説明する」
『株主総会が生配信されてるwww』
『アルベルトCEOの圧が凄すぎて画面割れるわ』
『ピリピリしすぎてて空気重いwww』
『こんな重苦しい雰囲気で配信始まることある???』
『重層的な企業統治の敗北か?』
『ルピミモを映せ! ルピミモを!』
『画面越しでもCEOの威圧感で震える』
『株主たちの顔がマジでガチすぎるwww』
『これ本当に配信で流して大丈夫なやつ?』
『ホールディングスの株価どうなるんだよ』
『ルピミモちゃんどこー!?』
アルベルトの厳格な報告が淡々と続く中、壇上の役員席の一角だけは、まるで別世界のお花畑が広がっていた。
「ねえミモ、喉乾いてない? 温かいお茶淹れようか?」
「ふふ、ルピちゃん優しいですぅ。じゃあ、ひとつのカップで半分こして飲みましょ?」
「うん! はい、あーん」
『おい画面の端!! www』
『重臣たちが青ざめてる前でお茶あーんすなwww』
『空気感の温度差で風邪引くわwww』
『ルピミモは今日も通常運転で安心した』
『尊すぎて心臓が痛い』
『あーんの破壊力wwww』
『背景の重臣たちの顔が青白くて草』
『アルベルトCEOが喋ってる真横でイチャつく度胸よ』
『完全に二人の世界入ってるwww』
『ハーブティー持参してんの草』
『ひとつのカップで半分こ助かる』
『可愛すぎて総会の内容が頭に入らん』
「……コホン!」
進行役を務めるヴァルデマールは、額から垂れる冷や汗を指で拭い、マイクに向かって咳払いをした。
「ご懸念の点について補足いたします。両名の手取りが10万ペルに固定されているのは、王位継承権放棄時に発生した巨額の『個人の借金』を、子会社の売上から分割返済しているためであります」
『えっ、借金あるの!?』
『手取り10万から返済に回されてたってこと!?』
『ていうか残高いくら残ってんの!?』
『手取り10万ペルで借金返済とか生活どうなってんだよ!!』
『搾取構造の正体これか!』
『借金返済アイドル爆誕生www』
『王位捨てるのってそんなにお金かかるの……?』
『え、じゃあ親会社が不当に搾取してたわけじゃないの?』
『手取り10万で借金返すとか過酷すぎるだろ』
『生活費残らんやんけ!!』
『全貌が見えてきたぞ……』
株主席の前列で青ざめていたカネイチ公爵は、バシッと勢いよく机を叩いて立ち上がった。
「ヴァルデマール君! 一体、二人の借金はあといくら残っているのだ!? 隠さず言い給え!」
「確認いたします……」
ヴァルデマールは手元の魔導書類をめくり、数字を読み上げた。
「元金および利息を含め……現在、残金は約三千五百万ペルとなっております」
『『『三千五百万ペルーーーー!?!?!』』』
『まだそんなに残ってんの!?』
『手取り10万でそれ返すの何年かかるんだよwww』
『ブラック労働確定で草』
『完済する前に寿命来るだろ!!』
『全額親会社が立て替えてやれよ!!』
『過酷すぎる現実wwww』
『3500万はえぐいって!!』
『手取り10万で3500万返済とか途方もなさすぎる』
『完済まで350ヶ月=約29年wwwww』
『アラフォーになっちゃうwwww』
『悲劇すぎるだろwww』
『誰か完済させてあげてくれぇぇぇ』
会場とコメント欄が悲鳴のような大騒ぎに包まれる中、ルピナスはミモザの口元を指で優しく拭った。
「ミモ、お茶ついてたよ?」
「まあ、ルピちゃんたらぁ。えへへ、ありがとですぅ〜」
『現実見ろwwwwww』
『3500万の借金背負いながらイチャつくなwww』
『このメンタル見習いたいわ』
『もう視聴者みんなで100ペル投げて返済手伝おうぜ……』
『イチャイチャで借金の圧を打ち消すなwww』
『指で拭くな指でwwww』
『尊いからもうなんでもいいや!!』
『借金3500万あってもこの余裕、大物すぎる』
『ミモザちゃんのえへへで全部吹っ飛んだ』
『株主総会がただのデート風景になってて草』
『幸せそうで何よりだよもうwww』




