第二十七回 手取り10万ペルの余波と株主総会
「『世界一の配信者が手取り10万ペルで過酷労働させられている』ですと……!? 大陸中の新聞も魔導回線も、この話題一色ですわ!」
仮テント指令室で、フランチェスカは頭を抱えて机に突っ伏した。
配信での何気ない暴露は一瞬で国家レベルの不祥事へと発展し、今や親会社アイデナール・ホールディングスへの不買運動や不認可デモにまで拡大していた。
――アイデナール・ホールディングス本社、四公爵会議室。
「笑えん……まったく笑えんぞ!」
カネイチ公爵が泡を吹きながら魔導計算機を叩く。
「子会社への抗議声明だけならまだしも我が社の株価がストップ安だ! 帝国や諸外国の王族株主たちから『貴社は労働搾取企業か』と詰問の魔導通信が鳴りやまん!」
「『お忍びアカウント』の正体、各国の皇太子連中からも『真実を究明せよ』と裏から圧力がかかっている……」
ツメヨレ公爵も胃を押さえながら青ざめた顔で書類を握りしめた。
「フランチェスカの査定自体は法的に問題ない。だが、感情を害した各国の市場から我が社が締め出されれば、ホールディングスそのものが傾くぞ!」
「ふん……大げさな年寄りがた」
脚を組み、静かに眼鏡の位置を直したのはレインハルトだった。
「法と契約に基づいた適正な役員報酬です。平民や他国の皇族がいくら騒ごうと、我が社の経営方針を脅かす筋合いはありません」
「レインハルト副社長、甘いですわ!」
バンッとドアを開けて駆け込んできたフランチェスカが、息を切らしながら叫んだ。
「もはやこれは単なる人事・給与問題ではありません! 子会社の『お花畑ブランド』に傷がついたどころか、我が社全体の信頼が失墜しかけているのよ! 感情論を冷徹な法論で押さえ込める局面ではありませんわ!」
不気味なほどの静寂が室内を包み込む。四公爵家の重臣たちが顔を見合わせ、重々しく頷き合った。
「……アルベルト陛下」
カネイチ公爵が重厚な声で、上座に座る絶対的経営者を見つめた。
「事態はもはや、一子会社の不祥事では済みません。株主、国民、そして諸外国への説明責任を果たすため――臨時株主総会の招集を具申いたします!」
重臣たちの視線が一斉にアルベルトCEOへと集まる。
アルベルトは静かに葉巻の煙を天へと昇らせ、深く腰掛けた椅子から、冷徹かつ鋭い眼光を鋭く光らせるのだった。




