第二十六回 手取り10万ペルの衝撃
「いつもコツコツ100ペルを投げてくれるみんなに、僕からの感謝の気持ちだよ! 新しく手作りした押し花のしおりをプレゼントするね。これ、材料費はタダなんだ!」
「ふふ、そうねぇ。材料費タダじゃないと、私たち、今月のご飯代がピンチになっちゃうもんねぇ……」
『ん???』
『今なんて言った……?』
『ご飯代ピンチ……?』
『国家予算級の売上出してるのに!?』
『ルピミモって時給いくらなの??』
「あ、ええと、みなさん気にしないでくださいぃ。私達、子会社の役員ですけど、実は親会社から支給される完全固定給制で、手取り10万ペルなんですぅ」
「……あ」
「だから、何億ペル売上があっても私達の10万ペルは変わらなくて……あ、これ言っちゃダメなやつだったぁ!」
『『『て、手取り10万ペルーーーー!?!?!』』』
『待って桁がバグってるwwwww』
『手取り10万ペルで会社を支えてんの!?』
『ブラック企業通り越して搾取構造で草』
『世界一の配信者の手取りが平民以下なんですが……』
――ガルシア帝国、執務室。
「……手取り10万ペルだと?」
ギルバート皇太子は握りしめた端末を思わず取り落とし、蒼白な顔で立ち上がった。
「私が投げたお小遣いは……国民の血税はおろか、私のポケットマネーすら彼らに還元されず、すべて親会社の懐へ消えていたというのか……ッ!?」
――北欧、東方、砂漠の宮廷。
(……あの大企業め、我が国の『推し』を労働搾取しているというのか!?)
各国の太子たちの目が一斉に鋭く光り、端末を叩く指が激しく怒りに震えた。
――仮テント指令室。
「ちょっとミモザぁぁぁ!! 何を余計なこと口走ってるのよーーっ!?」
フランチェスカはモニターの前で頭を抱え、絶叫した。
「企業の役員報酬なんて最高機密事項よ! それを配信で暴露するなんて、どんなコンプライアンス意識してんのよーーっ!」
「フランチェスカ様! 大変です、魔導スクロールのサーバーが炎上どころか爆破級のアクセス負荷でパンク寸前です!」
フィニックが血相を変えて悲鳴を上げる。
「さらに各国の『お忍びアカウント』から、親会社の労働環境に対する厳重抗議のメッセージが殺到しています!」
「ひぃぃぃ……! アルベルト社長になんて報告すればいいのよぉ……ッ!」
フランチェスカは泡を吹いてその場に崩れ落ちるのだった。




