第二回 お花畑はパッションピンク
投稿順番、間違えました。
3話を先に出してしまった……。
先に読んでいただいた方、話が繋がらなくてすみません!
作者の凡ミスです。
「では、これより第一回緊急株主説明会を行わせてもらいます。
進行は、ヴァルデマールが務めさせていただきます」
国王の右腕、宰相ヴァルデマール。
彼は、長年国を支えてきた老臣でアルベルト王からの信頼も厚い。
開始早々に、筆頭株主のゲオルグ・フォン・ツメヨレ公爵がマイクを握り、机を激しく叩いた。
「アルベルト社長! これはどういう経営判断ですか! 我がツメヨレ家が次期経営陣の安定を条件に出資してきた資金を、そこの無能なルピナスがドブに捨てた! 娘のフランチェスカに対する身勝手な婚約破棄は、明白な背任行為だ!」
大株主のギルベルト・フォン・カネイチ公爵も、魔導計算機をパチパチと叩きながら冷酷に追及する。
「この不祥事により、関連企業の株価は軒並みストップ安ですよ。純損失は国家予算の3%程度になります。社長、どう落とし前をつける?」
「王よ、株主の質疑にお答えください」
ヴァルデマールが冷静に回す。
アルベルト王は、静かに目を閉じて聞いていたが、かっと目を見開きマイクを取る。
「株主の皆様、落ち着きなさい。ギルベルト公爵、その損失は『旧プロジェクト』単体の数字ですね? 私はすでに3日前、我が社が独自開発した技術の特許を『王室直轄の新会社』に独占移管させています。損失どころか、来期は200%の増益見込みですが?」
「なっ……!?」と絶句すると、慌ててどこかに魔導通信をするギルベルト公爵。しばらくすると、笑顔で黙り込んだ。
「では、次に……」
進行役の宰相ヴァルデマールが話を進めようとした時に、
「ちょっといいでしょうか?」
空気を読まずルピナスが手を挙げる。
「……」
「……」
「……」
「……」
突然の暴挙に、四大公爵は固まり、困ったヴァルデマールが、アルベルト王を見る。
「好きにさせろ」
「ルピナス殿下……どうぞ……」
「ありがとうございます。では、……」
ルピナスの説明は、恐ろしく場違いであったが、自分の価値を認めてもらう場としては最高のタイミングでもあった。
「では、僕たちの今後の展開……新事業計画を話させて頂きます」
大画面のスライドに映し出されたのは、
『みんなハッピー! お花いっぱい王国計画!』
ピンク色のハートとお花マークだらけの、なかなかファンシーな事業計画書だった。特にフォント色のパッションピンクが……目に優しくなかった。
「お金や利益ばかり追うのは、美しいアイナール王国の精神に反します! 僕は真実の愛を見つけたのです! ミモザこそ、この国に新しい風を吹き込む女神です! 今の我が国の方針は、革新的なイノベーションを阻害しています!」
寄り添うミモザ(男爵令嬢)も、上目遣いでパチパチと瞬きをしながらマイクに声を乗せる。
「そうですよぉ。私が王妃になったら、身分に関係なく、みんなが毎日お花を飾り合って、ピクニックができる優しい会社にしますぅ! 」
これを聞いた大株主のレガナルド・フォン・ヤレヤレ公爵は、目頭を押さえながら、深く、長いため息をついた。
「ヤレヤレ……。ピクニックで我が国の防衛費が賄えるか、この無能め」
しかし、アルベルト王は我が子の愚行を止めようともせず、ただ冷ややかに目頭を押さえながら微笑んでいた。
「続けなさい、ルピナス。株主の前で、君の『市場価値』をすべて曝け出すといい」
その後ろで、
「これは……全体的には馬鹿な計画書と一蹴されるが、部分的に見ると一考の価値があるかもしれない。いや、しかし……この資料では何をどう実現するのか、まったく分からん……」
ヴァルデマールは額と目頭を押さえた。
「まずは、誰かこのパッションピンクをどうにかしてくれ……」
「えー、この計画に対しての意見は……若いフランチェスカ嬢にお聞きしたいと思います」
潤んだ目をしながら、ヴァルデマールがフランチェスカに丸投げした。
フランチェスカが一歩前に出る。
彼女は元婚約者を完全無視し、アルベルト王だけを見つめていた。
「陛下。私は婚約を白紙に戻し、我がツメヨレ家の資本(議決権40%)を株式会社アイナール王国より引き揚げます。同時に、他三家の大株主(計45%)を率いて、新会社を設立、アイナール王国に対して敵対的買収を仕掛けますが、いかがでしょうか?」
「乗ったァ!!」と叫ぶ、風見鶏投資家のヴァルター・フォン・ワケハナ公爵。
「理由があるから花が咲く! そっちの方が確実に儲かる!」
会場がクーデターの熱気に包まれたその瞬間、アルベルト王がパチパチと優雅に拍手を送った。
「素晴らしい、フランチェスカ嬢。完璧なM&A戦略だ。……だが、君たちが買収しようとしている『アイナール王国』の株は、本当に価値があるかな?」
王が指を鳴らすと、大画面に別の財務データが映し出された。
「私は本日未明、ルピナスが王太子として行った契約・債務を、王室の責任として『株式会社アイナール王国』の負債として処理している」
「どういうこと?」
ルピナスが話についていけず、会話の途中で発言してしまう。
「つまりですね、今のこの会社は莫大な不良債権を抱えた泥舟なんです。今この株を買収すれば、株主も連帯保証人になり、一緒に破産してしまうんです」
ヴァルデマールが慌ててフォローに入る。
その横で大株主たちの顔が、一瞬で土気色に変わった。




