第9話 灯火
「ライトシャインクロス!!」
咄嗟とっさに優美が唱えると、みるみる光に包まれ、変身に成功する。
ただ、変身はできてもどう戦えば良いのか全く分からないことには変わりなく、戸惑ってしまう。
「あはは! しっかりしなよ! 世界を闇から守るんじゃなかったの? ほら!」
今度は操られた空奈とユウキの攻撃が相まって、威力を増し優美に襲いかかる。
「きゃああ!」
受け止めきれず、もろに攻撃をくらいその場に倒れた優美は自分の無力さを痛感するしかなかった。
(私、どうしていつも何もできないのでしょうか…)
優美は小さい頃からどこか抜けていて、周りよりボーっとしていて、のんびりした性格だった。
もう少し自分がしっかりしていれば、両親を事故で亡くすことも無かったのかもしれない。
そんな思いまでもじわじわと心を蝕むしばむ。
「ふふ、そろそろ終わりにしようか」
ユウキの不敵な笑みが見える。
とどめの攻撃が襲いかかろうとしている。
頼りになりたい、みんなの力になりたい。
ただそれだけなのに。
やられることを覚悟した優美はキツく目を閉じた。
――その時。
「アビス!!」
真っ黒な光が、ユウキの攻撃を跳ね返す。
「え…?」
目を開けるとそこには温人の姿があった。
「天空、大丈夫か?」
「坂上くん! どうしてここに…」
「教室を飛び出して行ったから何かと思ってな。全く…、無茶をする」
温人は傷だらけになった優美の頬に触れながら困ったように笑った。
「私、なにもできなくて…」
悔しい、でもどうすることもできない自分に不甲斐なさを感じながらこぼれた言葉。
そんな優美をまっすぐ見つめながら温人は優美の手を取った。
「天空は光の能力者。闇を跳ね返す力がある。何も出来ないなんて決めつけるなよ。運命だと決めつけるなって最初に言ったのはお前だろ?」
優しく微笑みながら温人は優美を起き上がらせる。
「天空なら出来る。自分自身を信じるんだ」
「坂上くん……」
温人の言葉に強く頷いた瞬間、優美のクロスが輝き出す。そこから黄金のロッドが現れた。
「これは…?」
優美がそれを手に取ると、更に凄まじい光が周りを包み込む。
不思議と勇気に満ち溢れるほどの暖かな光。
(やるしかない!)
優美が光の勢いに負けずロッドを両手で持ち、相手に向ける。温人もその上から手を重ねた。
「坂上くん…!」
「大丈夫だ、やれる」
優美が目を閉じれば、不思議なことに言葉が思い浮かぶ。
想いを込め、一心にその言葉を叫んだ。
「シャインプレーステール!!」
その瞬間、ロッドから一気に光が集まり、ユウキに向かって放出した。
「な、なに!? 凄まじい光の量…!」
「…はっ! わ、私?」
その光で空奈も目を覚まし、優美への攻撃を止め立ち尽くす。
「空奈! 目が覚めたか…! よし、このままいけ! 天空!」
「はい!」
「くっ!! これは…、受け止めきれない! 引き返すしかない!」
さすがに分が悪く、危険だと判断したユウキは咄嗟に姿を消してしまった。
凄まじいパワーの光が放出し終わると、力を使いこなしたのか優美は変身が解けてしまい、肩で息をするほどだった。
「逃げられてしまいました…」
「危険は回避できた。空奈も目を覚ましたんだ、充分よくやったよ」
「坂上くんのお陰です!」
笑顔で優美に声をかける温人を見て、優美は何故か顔が火照るのを感じた。
そしてすぐ我に返り、その場に立ちすくむ空奈の元へ駆け寄る。
「空奈さん、大丈夫でしたか!?」
空奈の手に触れようとすると、バシンと手を振り払われてしまった。
「…触らないで」
「え? 空奈さ…」
「助けてなんて頼んでないわ!」
突然の出来事に驚きを隠せず、優美は唖然としてしまい何と言葉を続ければ良いか分からなかった。
温人がすかさず間に入る。
「おい、空奈! なんなんだよ。そんな言い方は無いだろ」
しばらくの沈黙後、俯うつむいていた空奈はゆっくり顔を上げ二人を鋭い目付きで見つめながら口を開いた。
「優美はいいわよね。苦労もしないでそうやって特別扱いされて」
「え…?」
何を言われたのか一瞬理解が出来なかった。
心なんてどこにあるのか分からないけれど、胸がズキンズキンと痛むのだけは分かった。
「何も知らないくせにヘラヘラ笑って、そういう所が気に食わない」
「そんな…」
「おい! 空奈!」
温人も耐えきれず大声を上げるが、負けじと空奈も反抗する。
「温人もよく仲間ごっこなんて出来るわね。言っておくけど、能力のことがあるから一緒にいるだけよ! 友達とか仲間だなんて思ったことないから」
空奈は冷たくも、どこか悲しそうな目をしていた。
優美は何といって言いか分からず、その場を去っていく空奈の背中をただただ見つめることしか出来ない。
「…ったく。天空、あんま気にするなよ。あいつ強気なところがあるから」
「でも…」
(何を勘違いしていたのでしょう。こんな出来事がなければ、一緒になんかいなかった。確かにその通りなのかもしれません。勝手に友達、仲間だと思ってしまいました…)
転校して初めての友達が出来たと喜んでいたのは自分だけ。
浮かれてしまっていた。
自分の能天気さが誰かを傷付けてしまった。
無力さと不甲斐なさを痛感する。
優美は悲しみのあまり、ただその場で立ち尽くすしかなかった。




