第7話 雷の能力者
「変身したは良いけど、どうしたらいいの~!?」
仁美はうろたえながらも空奈に助言を求める。
「さっきみたく思い浮かんだ言葉を叫ぶのよ! 見てなさい!」
空奈がヒートとアクアと名乗る二人に対して、右手を向ける体勢で唱えた。
「ファイヤーボルト!!」
その瞬間、空奈の右手からは勢いよく火の渦が生み出され、まるで龍のようにヒート、アクア目掛けて襲いかかった。
「「きゃああ!」」
仁美はその光景に圧倒されつつも、遅れをとらぬ様にすかさず目を閉じ両手を真っ直ぐに構えた。
「アクアイリュージョン!!」
今度は仁美の両手からものすごい量の泡と共に滝のような威力で水流が敵二人を襲う。
「あなた、変身したばかりなのになかなかやるじゃない!」
「えへへ、やればできる子です!」
天然でどこか抜けている性格の仁美だが、順応性は高く、すぐに能力者として開花する。
ヒートとアクアは、ちょうど温人と優美、バッドが戦っている教室まで吹き飛ばされた。
「きゃあ! な、何事ですか!?」
「あんた達、なにやられてるのよ!」
温人と優美が顔を上げると、そこには空奈と仁美の姿が。
「あら? 温人たちも敵に遭遇してたの?」
驚きつつもすぐに現状を把握した温人。
「空奈が危険だとクロスが光って探してたんだが、心配なかったみたいだな。水の能力者も連れてるのは驚きだったが…」
「やっぱり、仁美が水の能力者だったのですね!」
優美が駆け寄り、声をかけると仁美はハッとした。
「その声は、まさか優美!? ど、どゆこと? なにがなんだか…」
「サンダーライトニング!」
合流してホッとしたのもつかの間、今度は4人めがけて雷が襲ってきた。
「「危ない!!」」
温人は優美を、空奈は仁美を引き寄せギリギリで攻撃を交わす。
「次から次へと、なんだ!?」
温人が一目散に雷が襲ってきた方向を見やると、バッドの隣に仲間と思われるアヤノという女性が立っていた。しかし、見た目はどこからどうみても一般生徒である。どうやら彼女が攻撃を仕掛けてきたようだ。
その姿を見て、仁美が動揺する。
「え…? 綾乃?」
「仁美、知ってるんですか?」
「綾乃は私の親友なの。どうして? なんで攻撃してくるの!?」
「ふふ、その調子よ、どんどんやりな!」
綾乃は虚ろな目をしながらもバッドの命令に逆らえないかのように、次々と攻撃してくる。
4人は綾乃の攻撃を交わすので精一杯だった。
「アクアやヒートってヤツと桁違いの強さね! なんなの!?」
「ちっ、ダークネスイリュージョン!」
温人が右手を上げ、指を鳴らすと黒い光が集まった。
次の瞬間、渾身の一撃を綾乃に向ける。
しかし、仁美が綾乃を庇うように身を乗り出した。
「仁美、危ないです!」
「待って! 綾乃に攻撃しないで!」
「くっ…!」
温人は仁美に当たらないよう攻撃の的を外そうとするが想定外の事にコントロールも間に合わない。
このままでは仁美に当たってしまう。
誰もがもう駄目だと思ったその時――
「痛っ…!」
次の瞬間。
仁美と綾乃の前にルキが現れ、代わりに攻撃を受けた。
「ルキ!? お前っ…!」
「ふー、なかなか痛いじゃないの…。へへ」
仁美と綾乃を庇い、温人の攻撃をまともに受けたルキがその場で倒れてしまった。
「はっ…!? 私…」
虚ろな目をしていた綾乃の瞳に、急に光が戻る。
「ちっ…、ここまでか。帰るわよ、ヒート、アクア」
バッドは分が悪いと察し、2人を連れ消え去ってしまった。
倒れたルキに駆け寄る優美、温人、空奈の3人。
そして仁美は呆けている綾乃に駆け寄った。
「綾乃、大丈夫? どうしてこんな…」
「分からない、気付いたらこんなことに…。どうして…」
弱っているルキがそっと口を開く。
「雷鳴綾乃らいめいあやの。雷の能力者だね」
綾乃の手元には雷マークの黄色いストーンが埋め込まれたクロスが光っている。
「敵に操られていたのか?」
「私のせいで、こんなことに…」
混乱し、動揺する綾乃を仁美はぎゅっと抱き締めるしかなかった。
「お前、闘えないくせに…」
温人はバツが悪そうにルキに声をかける。
「温人が言ったんじゃん。なんで優美ちゃんを守らなかったんだって。こんな柄じゃないのになあ、やれやれ」
傷だらけなのにも関わらずおちゃらけた様子を見せるルキ。
その時、優美はそっと自身のクロスをルキにかざした。
「天空…?」
すると、光がみるみるルキを包みこみ、傷だらけだったルキの体はあっという間に完治していく。
「すごい! 優美にこんな力があったのね」
「なんとなくできる気がして、体が勝手に…。でも、良かったです!」
その一方で、綾乃は自分を責め続けている。
ルキは綾乃の肩をポンと撫でた。
「もう大丈夫だから気にしない気にしない! 結果良ければ全て良し! こっちが君を見つけるのが遅かっただけさ。その間に闇に操られていたんだね、こちらこそごめんね」
俯いたまま、綾乃はそっと口を開いた。
「気付いたらこのクロスのネックレスが家にあった。その日から私に変な力が使えるようになっていたんだ。でも怖くて、気持ち悪くて…。ずっと見て見ぬふりをして過ごしてた。そしたらいきなり奴らに襲われて」
仁美が泣きながら、さらに綾乃を強く抱き締めた。
「良かった、良かったよお…。綾乃が敵だったら私耐えられないもん!」
「色々あったが、水の能力者も雷の能力者もこんな早く見つかったんだ、良かった」
「そうよ、温人の言う通りよ! 気にしない気にしない。ルキなんて天使なんだからなんとでもなるわ!」
「空奈、それは酷くない!? 天使だって傷付きまーす! だ、か、らあ〜、綾乃には身体で払ってもらおうかな♪」
「………」
綾乃は無言でニッコリと笑顔を向けた。
「あーあ、怒らせちゃったよ。綾乃怒らせたら怖いんだよ?」
「今のはルキが悪いな」
「えー! ごめんごめん! 冗談だってばー!」
「何はともあれ、皆さん無事で良かったです!」
破天荒な転校初日だったが、こうして無事に能力者が集まっていったのだった。




