第6話 水の能力者
「ふう、スッキリした! 私らしくないわね、これから頑張らないと」
涙を流しスッキリした空奈は、帰る支度をするが忘れ物に気付く。
「あ、明日の宿題おいてきちゃった…」
面倒だならとため息を漏らしながらも自分のクラスに戻ると、なにやらまだ人影がある。
(まだ誰かいるの?)
そっと様子を伺うと、そこにはバッドとよく似た女性が笑いながら立っていた。
その奥には横たわる女子生徒の姿。
(あれは! 闇の仲間に違いない…。一般生徒までも巻き込むなんて許せない!)
空奈は咄嗟にクロスを手にし、変身しようとする。
が、その時――
「うふふ、駄目よジャマしちゃ」
「なっ!?」
気付いた時には既に遅く、背後からまた別の何者かに襲われ空奈までもが意識を失いその場に倒れてしまった。
一方その頃、優美は温人を探すため校内を探し回っていた。ちょうど教室で帰る準備をしていた温人の姿を見つける。
「坂上くん…!」
「天空? お前帰ったんじゃなかったのか?」
「そうだったのですが、実は…」
優美は水村仁美という女子生徒とのやりとりを簡潔に温人に説明する。
冷静に聞き取った温人は、しばらく考えてから口を開いた。
「それは能力者である可能性が高いな…。天空の事例もあったことだし、自覚がないってことはこれから覚醒する者なのかもしれない」
「やっぱり…」
「しかし、今日はもう遅い。水村はもう学校を出たんだろう? 明日、改めて話してみよう。天空も疲れただろ、帰ろうぜ。わざわざ戻って教えてくれてありがとう」
的確で冷静な判断。
優美はどうしていいか分からず焦っていたが、彼と話すと不思議と落ち着き胸を撫で下ろす。
温人と優美は途中まで一緒に帰ることにした。
色々彼には思う節はある。
なぜ自殺したのか、なぜこんな世界になっているのか。
細かい事情まではわからず、聞きずらい事でもある。
最初は無愛想で冷たいように見えた温人だが、先ほどの気遣いや話をしている雰囲気を通して根は優しいことを知った優美はずっと自殺が気がかりだった。
そんな事を考えていると先に温人から口を開く。
「天空は嫌じゃないのか?」
「え?」
「俺は自殺した者だってこと。気味が悪いとか、怖いとか、気持ち悪いとか」
淡々と話す彼を見て、優美は純粋に思っていることが溢れ、つい声が大きくなる。
「そんなこと思うわけありません! だって、それでも今、闘ってるじゃないですか。 嫌だなんて思いません! 私は仲間だと思っています!!」
「酷いことしたのにか?」
「今は酷いことされていません」
まっすぐに自分を見つめながら返事をする彼女に温人は拍子抜けしながらも笑みがこぼれた。
「ふっ…、そっか。ありがとな」
少しずつ分かっていく温人の一面や表情に、優美はなぜか目が離せなくなっていく。
そんな和やかな時間を終わらせるかのように、突然優美のクロスが真っ赤に光り出した。
「これは…!?」
「危険予知信号! 仲間が危険な時に赤く光り出すんだ。空奈が危ないかもしれない!」
2人は急いで空奈を探しに走り出そうとするが、再び現れたバッドに行先を阻まれてしまった。
「そうはさせないわ」
「邪魔しないで下さい!」
「仲間のためにそんなに必死になって、ほんっと人間って面白くて愚かね」
「さっきのようにやられてばかりじゃいられないな。天空、やるぞ。クロスに思いを込めて頭に浮かんだ言葉を叫ぶんだ!
「でも…!」
「大丈夫だ、お前ならできる」
「わかりました! ライトシャインクロス!」
咄嗟とっさに浮かんだ言葉を唱えると、その瞬間優美は強い光に包まれ変身に成功する。
「で、できた…!」
「変身したところで何が出来るのかしら? さあ、楽しませてもらわないとね!」
一方その頃。
気を失っていた仁美だったが、遠くから「起きて」という声が聞こえてくる。
徐々に意識が戻り、ゆっくりと目を開けるとそこには空奈の姿があった。
「うわあ!」
「あ! こら! シーッ!」
驚きに声を出す仁美の口を手で塞ぐ空奈。
「だめよ、敵に見つかるじゃない…、静かにしててね」
襲われた空奈だったが、先に目を覚ましていた。
それでも倒れたフリをしつつ、敵の同行を見ていたのだ。
空奈と仁美を襲った2人の会話を聞いていると、バッドやデッドという名前が出てきたことから闇の仲間だということが判明した。
倒れていた女子生徒は一般の生徒だと思っていたが、空奈は彼女から伝わる不思議なオーラと、クロスに気付き、あることを確信していた。
「あなた、単刀直入に言うけど水の能力者ね」
「へ…?」
「突然ごめんなさいね、でも急を要してるの。思い浮かんだ言葉を唱えて変身してもらえる?見本、見せるから。ファイヤークロス!」
空奈は敵2人の目を盗み、言葉を唱えると目映い炎に包まれ火の能力者へと変身した。
目の前で信じられないことが起きている。
仁美は口をあんぐりと開け目を見開くことしか出来なかった。
「え、えええ!? なにこの状況!」
「いいから早く! 詳しいことは闘い終わってから話すから!」
この状況で混乱するなという方がおかしいが、空奈の圧に負け、仁美は言う通りにするしかなかった。
しかし、こういった場面にも関わらず仁美の頭にはある言葉が浮かぶ。
「アクアクロス!」
その瞬間、仁美は勢いよく淡く美しい水に包まれ変身した。
「う、嘘でしょ!? なにこの少女漫画的展開…」
空奈を襲った小柄なショートヘアの赤髪の女性がびっくりしつつも、楽しそうに二人に近付いてきた。
「あらあら、いつの間に起きてたのー?」
「あんた達、バッドの仲間ね!?」
「バレちゃったー! 私はヒート! よろしくね、火の能力者さん♪」
それに続いて、今度は仁美を襲ったミディアムヘアの女性がヒートという女性に続く。
「私はアクア。未覚醒の水の能力者さんがいたからついつい襲っちゃったのよ。素敵な2人に会えて嬉しいわ」
不適な笑みを浮かべるヒートとアクア。
優美同様、状況についていけない仁美だったが、一大事であること、命の危険を感じざるを得ない状況だということだけは理解し、やるしかないと腹を括くくった。




