第5話 能力者探し
昼休みも終盤にさしかかった頃、敵を追い返した優美達は未だこの状況に対して頭を悩ませていた。
それもそのはず、窮地を脱せたのは空奈の加勢があってこそ。
「なんだか大変なことになっちゃったねえ…」
突如、聞き覚えのあるヘラヘラした声が聞こえてきた。
温人は、心ここにあらずと言わんばかりに返事をする。
「だな…。って、ん?」
3人の目の前には先程姿を消したはずのルキがまた現れた。
「お前…、なんで知ってるんだ?」
「いや〜、天界に戻ろうとしたら大変なことになってて見てたのさ☆」
「へえ? じゃあなんで天空を助けなかったんだよ…、なあ、言ってみろ?」
「あ、あはははは…」
物凄い威圧感で温人はルキに詰め寄る。
「ルキは闘えないから仕方ないわよ。居たところで邪魔よ! じゃ、ま!」
「にしたって庇かばうことくらいできるだろ…」
「僕は戦闘向きじゃないからねえ、勘弁してくれよ〜」
「ったく…」
相変わらずおちゃらけているルキだが、表情は一辺し言葉を続けた。
「しかし、ここまで闇が早く動いてくるとはね。一刻も早く能力者を集めて立ち向かわないと、勝ち目はない」
空奈も真剣な表情で深く頷く。
「そうね。あとは水と雷の能力者よね」
とんとんと話が進む三人のやり取りに必死についてこうと優美はあたふたしながらも介入した。
「あ、あの…! 私、こうなったからには皆さんのお役に立ちたいです。でも、変身すらもできなくて…、なにもできませんでした」
不甲斐なさそうに俯く優美に、ルキは穏やかに頭にポンと手を乗せた。
「優美ちゃんはまだ覚醒したばかりだからねえ。徐々に想いがクロスに伝わって変身できるようになるはずだよ。焦らずいこうっ! とにかく今は能力者探しが先決だね。僕も色々敵について調べてみるからさ」
事の重大さが嘘かのようにルキはその場を和ませ、消えてしまった。
「とにかく、なんとか3人で手分けして能力者、クロスを探すしかないわね。何か分かったらすぐに報告しあいましょ」
「そうだな。それと、天空、転校初日から色々と巻き込んですまなかった。今日はゆっくり休んでくれ」
「は、はい! ありがとうございます」
最初の出会いは不安な印象だったが、温人の気遣いに優美は彼に対しての印象が少しずつ変わっていった。
帰り道、ぐったりしながらも帰路につく優美。
考えることが山積みすぎて、ボーっと歩く。
無意識に両親の形見であるネックレスに触れようとすると、異変に気付いた。
「あ…、あれ?」
胸元にあったはずのクロスのネックレスが無くなっている。
「うそ!?」
カバンや制服のポッケを探すも見つからず、一気に青ざめる優美。
「どうしましょう…、こんなことって!」
「おーい! そこの人ー!」
あまりの絶望にその場で立ち尽くしていると、同じ制服を着た水色ショートヘアの女子生徒が走ってきた。
「落とし物ですよーっ! あなたのでしょ? ちょうどさっき落とすところ見かけて急いで追いかけたの! 良かったあ」
彼女の手には確かに優美のクロスが輝いていた。
「私のです! すみません、大切な物だったので助かりました!」
泣きそうになりながら優美は彼女からクロスを受け取る。
彼女は不思議そうに優美の顔をじっと見つめる。
(まただ)
温人の時も空奈のときも見つめられ、またもや目の前の女子生徒にも見つめられる。
(やっぱり、私、顔に何かついてるのでしょうか!?)
アワアワしていると、彼女から口を開いた。
「見かけない顔だよね? もしかして隣のクラスに入ったっていう転校生さんかな?」
「あ、はい!! 私、天空優美って言います!」
「そうなんだ! 私、水村仁美みずむらひとみです! 仁美でいいよ! よろしくね〜っ!」
良かった。
どうやら今回見つめられていたのは、見かけない顔であるという理由のようだ。
(優しそうな人に拾われて良かったです…!)
「あのね、私も似たようなネックレス持ってるんだ〜! 色違いとかなのかな?」
安堵していたのもつかの間。
優美は次の瞬間、目を見開いた。
仁美が制服のポケットから取り出したのは、優美はもちろん、温人、空奈の所持していたクロスにそっくりな形状のもの。
真ん中に水色のストーンが埋め込まれていた。
「え? これって…」
「気付いたら家にあったんだ。お母さんか妹の物なのかな、と思って聞いたけど違うって。不思議なんだけど、どうしてもこのネックレスから目が離せなくてね! まあ、お気に入りだから持ち歩くようになったんだけど…、おそろいみたいで運命感じるねえ〜!」
ウキウキと話す仁美。
こんなに似たようなクロスなんて、そこらじゅうにあるものだろうか?
それに、気に入った理由も不思議である。
もしや能力者と関係があるのだろうか?
「あ、いけない! これからピアノなんだった! それじゃあ優美、またねーっ!!」
仁美は小走りで優美に手を振りながら去っていった。
(こんな偶然あるなんて、仁美は能力者なのでしょうか? そんな風には見えませんでしたが、あんなにそっくりなクロスは不思議です。坂上くん達に知らせないと)
能力者探し、クロスの持ち主探しは難しいだろうと覚悟していたが、こんなトントン拍子で見つかるとは思ってもおらず、優美は希望を抱きながら温人達を探しに学校へと戻ることにした。
一方、水村仁美はピアノ教室に向かうべく、足早に目的地へと急いでいる。
何故か分からないが、背後から誰かに見られている気がすると同時に身体がゾクゾクと震えた。
(なんだろう、気のせいかな? 寒気がする…)
振りかえるが、そこには誰もいない。
(気のせいだよね)
気を取り直し、再び目的地へ進もうとした瞬間。
目の前に真っ黒な霧の中から水色のミディアムヘアの女性が現れた。
明らかにこの世に生きている者ではない。
その背後に漂うモヤと魔性染みた雰囲気は恐怖心を芽生えさせた。
「今度は水の能力者か、良い獲物みーつけた」
「え…? きゃあっ!」
その謎の女性に突然攻撃され、仁美は気を失い謎の女性にもたれかかった。
「ふふ、こいつを利用すれば愚かな光の能力者達が集まってくるに違いないわ」
不適な笑みを浮かべながら、彼女は仁美と共にその場から消え去った。
一方その頃。
空奈は考えごとをしながら帰る準備をしていた。
(今日は色々あって疲れちゃったわ…。でも、早く能力者を見つけないと)
意気込みを新たに教室から出ようとすると、そこには少し天然パーマの赤茶髪の男子生徒が立っていた。
「空奈…」
「由文よしふみ…!」
「空奈、俺、諦めないから」
空奈の腕を掴み、じっと空奈を見つめる。
「な、何よ…」
「記憶のない空奈でも、俺は空奈が好きなのは変わらない」
「し、知らないわよ!」
空奈は由文の手を払いのけ、その場から一目散に走り去った。
空奈は、温人と同じく自殺した者。
その影響か生前の記憶が一部欠けているのだ。
空奈は由文の事を途切れ途切れでしか覚えていなかった。
無我夢中に走り、空き教室へとたどり着き、息を整える。
(由文…、あなたが大切な人だということだけは分かる。だけど思い出せないの。記憶があったとしても、この闘いの事情に巻き込む訳にはいかない)
「ごめん。ごめんね、由文…」
空奈は静かに、誰にもバレないように涙を流した。




